ヤングKagglerは、いかにしてグランドマスターになったのか:Kaggle グランドマスター インタビュー(前)(1/3 ページ)
24歳&26歳。世界でわずか230人前後しかいない「Kaggle グランドマスター」の称号を持つ2人の青年は、子どものころからプログラミングに親しんできた……わけではなかった。
Google社が所有するKaggle社が運営する「Kaggle」(カグル)という機械学習プラットフォーム上で開催されるコンペティションで、最高の称号「グランドマスター」を持つ人は日本国内で20人前後、世界でも230人前後。その希少な人材のうちの2人が、2021年に社会人デビューした。2人のグランドマスターは、どのようないきさつでKaggleに参加し、どのようにして最高位の称号を獲得し、どのような就職活動をしたのだろうか。
Kaggleのグランドマスターとは
ラッパーがMCバトルで技を競い合うように、機械学習エンジニアやデータサイエンティストたちが熱いバトルを展開させているのが機械学習コンペティション(コンペ)だ。
課題に対して与えられたデータを基に機械学習による予測モデルを作成し、いかに精度の高い分析や予測を行うかを競い合う機械学習コンペなどを運営して、世界中から注目を浴びているのが、Kaggleだ。
Kaggle上ではさまざまな企業や団体がコンペを開催しており、日本では、リクルートやメルカリといった企業が開催社として名を連ねている。
コンペのテーマは、機械学習の入門として広く知られているMNISTデータベースの手書き数字を認識するという基本的なものや、NFL(米ナショナル・フットボールリーグ)の選手データから選手がボールを受け取ってから何ヤードゲインするかを予測するという一風変わったもの、クジラの尾の形状から種類を正確に特定する学術的なもの、不動産物件のデータから物件の価格を予測するビジネスと直結したものなど、分野もデータの種類も多様だ。
コンペでは順位に応じて「金」「銀」「銅」のメダルが授与され、通算のメダル授与歴などに応じて称号が授与される。称号は低い方から順に、「ノービス(Novice)」「コントリビューター(Contributor)」「エキスパート(Expert)」「マスター(Master)」「グランドマスター(Grandmaster)」である。
グランドマスターは、2021年8月時点で世界に230人ほどしかいないといわれている。そんなまれな人材のうちの2人である荒居秀尚さんと中間康文さんは、2021年に社会人デビューしたばかりの若者だ。
プログラミングに触れたのは大学入学後、機械学習に出会ったのは3年時
グランドマスターの称号を獲得するエンジニアともなれば、小中学生のころからプログラミングに触れてきた生粋のプログラマーなのではないかと思うかもしれないが、実は2人ともそうではない。
荒居さんは、大学で航空宇宙工学を専攻してドローンの制御に関する研究をしており、学部の3年生になるまでプログラミングをしたことはなかったという。
「コンピュータは使っていましたがシミュレーションソフトウェアの利用が主な目的で、本格的なプログラミングに触れたのは、学部3年生のときの授業が初めてでした」(荒居さん)
荒居さんが触れたのはPythonによるプログラミングで、そのとき「とても楽しい」と感じたという。そこでPythonの解説書を買って読んだことが機械学習との出会いだった。その後、異常検知という機械学習分野の研究などを行う航空宇宙工学の研究室に入り、「表現学習」と「ドメイン適応」という機械学習の分野の掛け合わせのような研究に取り組んだ。そこでいろいろと機械学習を勉強していくうちに、Kaggleの存在を知ったという。
中間さんも本格的なプログラミングに触れたのは大学に入学してからだった。学部1年生のときに講義でRubyを学んだのが最初だという。
「機械学習に触れたのは3年生になってからでした。こちらも大学の講義でしたが、座学なので実践に乏しい感じでした」(中間さん)
機械学習には線形代数や偏微分、統計・確率といった高等数学が必要とされるので、大学生になってから取り組んでいく人が多いのは想像に難くない。しかし、プログラミングに触れたのも大学に入学してからだったという事実には驚くほかない。「将来はデータサイエンティストに」と考えている学生は今からでも遅くないかもしれない。
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