「成長するために頑張ること」と「強過ぎるプレッシャーの中で仕事をすること」は違う:Go AbekawaのGo Global!〜Maverick Tayag編(後)(3/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前回に引き続き三通のMaverick Tayag(マーベリック・タヤッグ)氏にお話を伺う。祖母の後押しもあり、日本で働き始めたタヤッグ氏。同氏が日本のエンジニアに対して思うこととは。
「不景気で苦しんでいる人や動物を助けたい」
阿部川 タヤッグさんが5年後10年後に実現したいものはありますか。
タヤッグ氏 幾つもありますよ。まず「ITかビジネスの分野で、修士課程を修了したい」と思っています。もう一度大学に戻って学び直したいんです。次に「フィリピンで小さなビジネスを興し、セカンドインカムを確保したい」と思っています。そして「家族を持って、私が子どものころに学べなかったことを、自分の子どもたちに学ばせてあげたい」。後は、「不況などで苦労を余儀なくされているフィリピンの人々のために基金を作りたい」と思いますし、同時に、「動物を救う活動のための基金を創設したい」と思っています。まあ、最後の2つは15年くらい先になるかもしれませんが(笑)。
阿部川 やりたいことがたくさんですね。ちなみに最後の「動物を救う」については具体的なアイデアをお持ちですか。
タヤッグ氏 フィリピンには野良の犬や猫がたくさんいます。可能であれば、そのような動物のためのシェルター基金を作りたいのです。そういった動物を保護することに賛否はありますが、そもそもそれらの動物は捨てられたために野生化して凶暴になり、人を噛(か)んだり襲ったりするようになったと考えています。その動物たちのためにシェルターを作り、動物たちが健全に生きられるようにしてあげたいと思っています。
阿部川 野良犬や野良猫は、自分から野良になったわけではないですからね。人が捨てるから、彼らには野生化するしか選択肢がない。われわれ人間が作り出した問題でもありますね。この問題の解決にITが役に立つなら、こんなに素晴らしいことはないです。サンクチュアリ(自然保護区)のようなものができればいいのですが。
マーベリックさんなら、きっとできると思いますよ。現在29歳ですから、50歳くらいのときにはどんな大物になっているんだろうとわくわくします。
タヤッグ氏 その歳になるころは家族や親戚だけではなく、他の人々の役に立ちたいですね。さきほどお話ししたように、不景気で苦しんでいる人や動物を助けるための基金を創設したい。そして長く継承されるような団体にしたいと思います。自分の人生の後半は、他の人を助けることに費やしたいと考えています。それができるなら場所はフィリピンでも日本でもどこでも構いません。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
8歳のときに3台のデスクトップコンピュータを中東から送ってくれる父がいた。10歳年上の叔父(父の弟)がエンジニアリングを指導した。家族は幾つかの会社も経営していた。フィリピンにあって、ITを学ぶのにこれほどエリートな環境はあるまい。
犬と猫と牛を飼っていた。将来は非営利の団体を作り、動物だけではなく、困った人を助ける仕事がしたいという。
善き人に囲まれた少年は順調にすくすくと育ち、「人のためになる仕事がしたい」と真っすぐに言ってのける青年になった。それを最短で実現させようとしたら、IT業界以外にどんな分野があるのだろうかと考えるのは、業界に長いロートルにありがちな、不遜な考えだろうか。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。
編集部から
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。
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