GitHubは開発者の生産性向上に、どの程度役立っているのか:日本の開発者はどの程度GitHubを利用しているのか
ソフトウェア開発者の活動をまとめた年次レポート「The State of the Octoverse 2021」をGitHubが発表した。さまざまな統計情報が分かる他、レビュー人数がどの程度であれば最も生産性が上がるのかといった疑問にも答えを出している。
ソフトウェアの開発プラットフォームを提供するGitHubは2021年11月16日(米国時間)、ソフトウェア開発者の活動をまとめた年次レポート「The State of the Octoverse 2021」を発表した。
今回のレポートでは開発者の活動の調査方法を拡充し、400万のリポジトリからのテレメトリーと4万人以上の開発者からの調査回答を組み合わせて分析し、仕事の習慣や生産性、キャリア全体の満足度などに関する傾向を明らかにしている。
レポートは「コードの迅速な作成とリリース」「開発者を支援するドキュメントの作成」「持続可能なコミュニティーのサポート」という3つの柱で構成されている。
コードの迅速な作成とリリース
・自動化のメリット
コードの作成やデプロイに自動化を利用しているチームや開発者の方が、そうでない開発者に比べて優位にある。オープンソース活動では27%、仕事では43%、パフォーマンスが高い。これらのグループは充足感も高い。
・CI/CDの威力
GitHubのCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)サービス「GitHub Actions」を使った自動化により、マージされるプルリクエスト数が36%増加し、マージまでの時間が33%短縮され、チームはより効率的に作業できた。
・レビュー担当者は少ないほど良い
レビュー担当者が1人だけのプルリクエストは、1日8時間の勤務時間内にマージされることが多い。それに対して、レビュー担当者が1人増えるごとに、1日以内でマージされる率は17%低下する。GitHubは、品質保証と生産性向上のトレードオフを考慮し、レビュー担当者を最大でも3人にとどめることを勧めている。
・コードの再利用は効果的
コードの再利用により、生産性が最大87%向上する。
・オフィス利用が激減
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)後に、オフィスに勤務する予定である開発者の割合は、11%にとどまる。この割合は、パンデミック前にオフィスに勤務していた開発者の割合(41%)より30ポイントも少ない。ハイブリッドワーク、テレワークについても同様に割合を調べ、まとめたグラフを次に示す。
・プログラミング言語トップ5は変わらず
最も使われているプログラミング言語を調べたところ、トップ5はJavaScript、Python、Java、TypeScript、C#だった。この順位は2020年の調査と全く同じだ。
開発者を支援するドキュメントの作成
・ドキュメントはなぜ重要か
ドキュメントが充実していると、開発者の生産性は55%向上する。
・どのような取り組みが有効か
READMEファイルやイシュー、配慮の行き届いた貢献ガイドラインはいずれも、質の高いドキュメントの作成に役立つ。企業は、堅牢(けんろう)な社内ドキュメントや社内ソースコミュニティーを作ることで、同様のプラクティスを導入できる。
持続可能なコミュニティーのサポート
・コラボレーション文化が大切
高いレベルの信頼を報告しているチームは、企業内では2倍、オープンソースコミュニティーでは3倍、健全なコラボレーション文化を持っている可能性が高い。
・丁寧なやりとりが信頼を醸成する
行動規範や貢献ガイドライン、良い最初のイシュー、コミュニケーションフォーラム「GitHub Discussions」での丁寧なやりとりは、安全な場の形成につながり、信頼を促進する。
GitHubの利用拡大
このように開発生産性の向上に役立つGitHubは、依然として成長を続けている。
ソースコードのバージョン管理システム「Git」のホスティングサービスである「GitHub」の利用が拡大していることを示すデータとして、GitHubは次のようなデータを紹介している(カッコ内は2020年時点)。
・開発者数
GitHubを使用する開発者の総数は7300万人以上(5600万人以上)。
・新規ユーザー数
GitHubの2021年の新規ユーザー数は1600万人以上。
・企業の参加
「GitHub Enterprise」を使用するフォーチュン100企業の割合は84%。
・リポジトリの増加
この1年に新規作成されたリポジトリは6100万以上(6000万以上)。
・プルリクエストの増加
マージされたプルリクエストは1億7000万。
国内ユーザーも増加している
2021年に日本でのGitHubの総ユーザー数は2020年比で30.1%増加し、アクティブな学生の総数は同じく15.1%増加した。
日本はインドネシア、ブラジル、インド、ロシア、ドイツ、カナダ、英国、中国と並んで、ユーザー増加率が米国以外で最も高い国の一つとなった。
さらに日本は、米国以外でオープンソースソフトウェアの普及率が最も高い国、地域の一つでもあり、中国、インド、ドイツ、英国、ブラジル、香港に次いで7位となっている。
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