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女性エンジニアって、特別な人がなるんでしょう?教えて、キラキラお姉さん(3/3 ページ)

エンジニアは普通の人でもなれるし、男女の区別はないし、私みたいに創作活動に熱中し過ぎて大学受験に失敗した人でも活躍できるんですよ。

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女子中高生に「エンジニア」という選択を身近に感じてもらいたい

 有馬さんはいま、新たな活動にも取り組み始めている。それが、女子中高生に技術と触れ合う機会を提供し、IT業界におけるジェンダーギャップの解消を目指してプログラミング研修などを実施している一般社団法人「Waffle」でのボランティア活動だ。

 有馬さんには海外にも多くの友人がいる。東アジア、東南アジア各国の状況を聞くと、「女性がエンジニアになる」ことが日本ほど特異ではなく、ごく一般的なことだと常々感じてきたそうだ。だが日本では、いまだ女性エンジニアの比率は低い。このままでは、女性個々の将来のキャリアが狭まる恐れがあるし、エンジニアリング業界全体にとっても優秀な女性が入ってこないことが損失になる。ひいては国としても価値を生み出せなくなってしまうのではないか――という強い危機感を抱いてきた。

 たまたま、COO(最高執行責任者)とのコーチングの中で「理系、IT系の女性が極端に少ないこの状況を変えたい」と相談したところ、Waffleのボランティア活動に参加していた社員を紹介され、草の根的な活動に加わることになった。

 コミュニティーでは、女子中高生にコーディングを教えるだけでなく、ロールモデルを紹介する活動も行っている。「私はエンジニアとしてまだまだという部分もありますが、だからこそ、私のように特別ではない若手の存在を知ってもらうことで、まずエンジニアを身近に感じてほしい」との思いがあるという。

 今の環境に満足しているという有馬さん。それには、社員の問題意識を共有し、ボランティア活動への参加をバックアップしてくれる雰囲気があることも大きいと述べる。レノボ・ジャパンはWaffleのスポンサーになっており、「こうした活動への参加がしやすい環境があると思います」という。

 外資系ならではの良さも感じている。日本企業では、20代のうちは研修など下積みの時代が長い。女性の場合はそうこうするうちに出産や育休に入り、それだけで30代の時間が費やされ、キャリアを伸ばす機会になかなか恵まれない。結果、経験を積めず、独り立ちできていない状態で職場に復帰しても、仕事もつまらなければ待遇も悪い……という負のスパイラルが生じてしまう。

 これに対し「若いうちからチームリーダーを任されたり、いろいろな仕事に挑戦させたりしてくれるのが外資の良いところだと思います。そうなると、産休などで一時仕事を外れても、同じ職場に戻りたいと思えるんですよ。単に産休や育休の制度が整っているだけではなく、若いうちにやりがいを教えてくれ、実力を伸ばしてくれる環境が、女性には向いているように思います」と有馬さんは述べている。

問題意識は女性エンジニアの支援だけでなく、IT教育格差の解消にも

 レノボ・ジャパンでは「学ぶところばかり」という有馬さん。精神的にもバランスが取れ、趣味の創作でも、小説にイラストに自作のゲーム開発にと旺盛に活動している。もちろん本業にしっかり取り組むと同時に、Waffleでのボランティア活動を通して、引き続き女性エンジニアを支援していきたいという。

 「せっかくいい環境があるのに、女性が少ないのはもったいないことだと思います。そもそも学問に男性向け、女性向けの区別はありません。ですから、エンジニアリング業界のレベルアップのためにも、女性の進路選択の足かせになっているステレオタイプを壊していければと思っています」

 いつか年を経て振り返ったときに、「社会のためになったな」と思えるようになりたいという。そして有馬さんには、他にも取り組みたいことがある。ITリテラシーに関する教育格差の解消だ。

 「日本には、特にPCやITに関して大きな教育格差があると思っています。いま私がボランティアで触れている子どもたちは、ご両親が教育熱心だったり、ITを学ぶ環境が家庭で整っていたりする。そうした環境にない子どもたちにも、ワークショップの機会を提供できないかと考えています」

 職場の協力を得ながら中古PCを安く貸し出すNPOを設立するなどのアイデアを温めつつ、少しずつ格差解消に向けた取り組みを進めていきたいという。

 「自分は特別ではない、普通の人間だ」と話す有馬さん。だが、その生き方はたとえようもなく特別だ。彼女の存在や活動は次世代の女性たちの可能性となり、さらに未来へとつながるだろう。

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