最初の15時間は無料 PCや開発の環境をクラウドで提供する「Microsoft Dev Box」とは?:プレビュー版公開
Microsoftは開発チーム向けの仮想デスクトップサービス「Microsoft Dev Box」のプレビュー版を公開した。生産性とセキュリティのバランスを取りやすく、プロジェクトごとの開発環境を用意しておけば、開発者がどこにいても利用できる。
Microsoftは2022年8月15日(米国時間)、開発チーム向けの仮想デスクトップサービス「Microsoft Dev Box」のプレビュー版を公開した。2022年5月に「Microsoft Build 2022」で発表されたサービスのプレビュー版だ。
Microsoft Dev Boxは、開発者が高性能かつ安全で、すぐにコーディングを始められる、特定プロジェクト向けのワークステーションをクラウド上にオンデマンドで作成できるマネージドサービスだ。
メリットは3つある。第一に生産性を高めるために必要な柔軟性と、セキュリティの維持を両立できる。第二にハードウェアの調達のために時間をかける必要がない。第三に開発者がどこにいても同じ開発環境を維持できる。
利用するには「Microsoft Azure」のポータルにサインインし、「dev box」を検索して、チーム用の「Dev Box」(開発マシン)を作成すればよい。
以下では、「Microsoft Dev Box」はAzureサービスを指し、「Dev Box」は、Microsoft Dev Boxで作成された開発マシンを指す。
インフラを気にせずコードに集中できる
Microsoft Dev Boxを使うことでコードを書くことに集中できる。コードをビルドし、実行する作業環境の確保に労力をかける必要はない。開発者がプロジェクトやタスクのために必要とする全てのツールや設定を、チームがあらかじめ用意でき、すぐにコードを記述できる。
いつでも必要なときに自分のDev Boxを作成し、素早くプロジェクトを切り替えたり、概念実証(PoC)を試したり、次のタスクに移るときにバックグラウンドでのフルビルドを開始したりできる。
Microsoft Dev Boxは、Windowsで動作するあらゆるIDE(統合開発環境)やSDK(ソフトウェア開発キット)、ツールをサポートする。開発者はMicrosoft Dev Boxを利用して、デスクトップやモバイル、IoT、Webアプリケーションなど、Windowsで構築できるあらゆる開発ワークロードをターゲットにできる。
「Windows Subsystem for Linux」や「Windows Subsystem for Android」と組み合わせて利用すれば、クロスプラットフォーム対応のアプリケーションを構築できる。WindowsやmacOS、Android、iOSなどあらゆるデバイスやWebブラウザからリモートアクセス経由で、Dev Boxを柔軟かつ安全に利用可能だ。
チームのニーズに合わせたDev Boxの作成、利用が可能
IT/開発インフラチームと開発チームがあらかじめDev Boxの利用環境を設定しておくことで、開発者は容易に利用開始できるようになる。
まず、IT/開発インフラチームがネットワークやセキュリティ、組織のポリシーなどを設定する。続いて開発チームは開発者がアプリケーションを開発、実行するために必要な全てのツールと依存関係を備えたDev Boxイメージを作成し、維持管理する。開発者の役割に適したサイズのDev Boxを設定でき、「4vCPU/16GBメモリ」から「32vCPU/128GBメモリ」までの構成イメージを選択可能だ。開発チームは開発者に最も近いAzureリージョンにDev Boxをデプロイし、Azureグローバルネットワークを介して接続することで、高速で応答性の高い操作感を全世界の開発者に保証できる。
なお、開発リーダーはロールベースの権限とカスタムネットワーク構成により、プロジェクトリソースへの限定的なアクセスを提供できる。
ガバナンスと管理の一元化
Microsoft Dev Boxは「Windows 365」を基盤としており、IT管理者は「Microsoft Intune」と「Microsoft Endpoint Manager」を通じて、Dev Boxを物理デバイスやクラウドPCとともに簡単に管理できる。Windows 365は、クラウド上でWindowsが動くクラウドPCを利用できるサブスクリプションサービスだ。
IT管理者は「Azure Active Directoryグループ」を使用して、機密性の高いソースコードや顧客データへのアクセスを、プロジェクトごとに許可できる。条件付きアクセスポリシーを設定して、ユーザーが所定のデバイスからのみDev Boxにアクセスできるようにすることも可能だ。さらに緊急の品質更新プログラムでゼロデイパッチを組織全体に展開し、Dev Boxを最新の状態に保ったり、侵害されたデバイスを迅速に隔離したりできる。
Endpoint Managerの詳細なデバイス分析機能を用いて、アプリケーションの健全性やデバイスの使用率、その他の重要指標を簡単に監査できるため、開発者は組織を不要なリスクにさらす心配をせずに、安心してコードに集中できる。
課金モデルは?
Microsoft Dev Boxは、コンピュートとストレージの使用量に応じた課金モデルを採用しており、使用した分だけ料金を支払う。自動スケジュールにより、始業時にDev Boxを起動し、終業時にアイドル状態の場合に停止するよう設定できる。数週間後に利用可能になるハイバネーション機能を使うと、開発者は停止したDev Boxを、作業を中断したところから再開できる。
Microsoft Dev Boxは現在のパブリックプレビュー段階では、8vCPUと32GBメモリの「Dev Box Compute」を毎月最初の15時間、さらに512GB SSDの「Dev Box Storage」を毎月最初の365時間、無料で利用できる。それ以降は、使用時間に応じて料金がかかる(1時間単位)。
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