謎めく「言語ランキング」の世界、Python vs. Javaが無意味な訳:トップ10言語の特徴も紹介
モバイル開発やWeb開発を手掛けるCleveroadは、プログラミング言語の主要な人気ランキングとして、「TIOBEインデックス」と「PYPL」の2つを取り上げて比較した。併せてランキング上位の言語の特徴や動向を解説した。
モバイル開発やWeb開発を手掛けるCleveroadは2022年9月15日(米国時間)、プログラミング言語の人気ランキングについて解説した。
主要な人気ランキングとして、「TIOBEプログラミングコミュニティーインデックス」(通称:TIOBEインデックス)と、「PYPL PopularitY of Programming Language Index」(通称:PYPL)の2つを取り上げて比較し、PYPLの2021年のランキングでトップ10となった各言語について、特徴や動向を説明した。TIOBEインデックスはTIOBE Softwareが、PYPLはGitHubが公表している。
TIOBEインデックスとPYPLはいずれも、「インターネット上で言及された回数が多い言語ほど、人気があると考えられる」という前提に基づいている。だが、両者のランキング作成方法は、多少異なっている。
TIOBEインデックスは世界の熟練エンジニアや学習講座、サードパーティーベンダーの数、25の広く普及した検索エンジン(Google、Bing、Yahoo!、Wikipedia、Amazon、YouTube、Baiduなど)でのヒット数から、ランキングを算出している。
TIOBEインデックスで上位の言語はこれだ
これに対してPYPLは、「Google Trends」のデータを使用し、Google検索で各言語のチュートリアルが検索された頻度から、ランキングを算出している。
当然のことながら、TIOBEインデックスとPYPLのランキングは異なっている。
なお、TIOBE SoftwareはTIOBEインデックスについて、「どのプログラミング言語が優れているのか」「どの言語で書かれたコードの行数が多いのか」を示すものではなく、「自分のスキルが時流に合っているかどうか」をチェックしたり、「新しいソフトウェアの構築にどの言語を採用するか」を判断したりするためのものだと説明している。
PYPLの2021年のランキングトップ10
Cleveroadは、「2021年に最も使用されたプログラミング言語」という観点から、PYPLの2021年のランキングトップ10を次のように示し、各言語の特徴や動向を紹介している。
10位:Kotlin
Kotlinの人気はAndroidユーザーの増加、ひいてはAndroidデバイスの増加によって説明できる。
Kotlinを用いる開発者の80%はAndroidアプリケーションの構築に、31%はバックエンドアプリケーションの構築に、30%はSDK(ソフトウェア開発キット)やライブラリの構築にKotlinを選択している。
KotlinはJavaとの相互運用が可能なため、開発者は既存の全てのAndroidライブラリをKotlinアプリケーションで使用できる。
Kotlinの特徴と作成されたアプリケーションの例
・Javaとの相互運用性
・フロントエンドおよびバックエンドの開発に対応
・効率的なインクリメンタルコンパイルをサポート
・Slack、Netflix、Evernote、Basecamp(以下、他のプログラミング言語も利用している場合がある)
9位:Swift
SwiftはiOSアプリケーションを構築するための最も勢いのある言語だ。その理由は幾つかある。
まず、名前の通り高速だからだ。Apple.comによれば、SwiftアプリケーションはObjective-Cアプリケーションの2.6倍、Python 2.7アプリケーションの8.4倍の速さで探索アルゴリズムを処理するという。
Swiftはオープンソース言語であり、シンプルな構文を持つため、コードが書きやすいだけでなく、読みやすく、メンテナンスもしやすい。
Swiftの特徴と作成されたアプリケーションの例
・オープンソースのプログラミング言語
・各種Appleプラットフォームで安定版のABI(Application Binary Interface)が利用可能
・Objective-Cと相互運用可能
・シンプルな構文
・Hubspot、Lyft、Pandora、OpenTable、Airbnb、LinkedIn、Yahoo Weather、Khan Academy
8位:Objective-C
Objective-CはAppleがSwiftを発表した2014年まで、最初で唯一のiOS開発言語だった。そして今、Swiftに取って代わられつつある。macOSやiOSのプログラミング学習リソースは、主にSwiftにフォーカスしている。
それでも、Objective-Cはプログラミング言語ランキングでトップ10入りしている。多くのiOSアプリケーションがこの言語で書かれており、開発者がそれらをメンテナンスし続ける必要があることがその一因だ。
Objective-Cの特徴と作成されたアプリケーションの例
・C言語がベース
・静的ライブラリを使用
・実行時コンパイルを使用
・AppleがiOS、macOS、iPadOSでサポート
・Appleサービス(Apple Music、iTunesなど)
7位:R
統計言語であるRはPythonと並んで、データアナリストやデータサイエンティストに最適なプログラミング言語の一つだ。
アドホックな分析やデータセットの探索に加え、統計を多用するプロジェクトに有効だ。
Rの特徴と作成されたアプリケーションの例
・対話的な統計環境
・統計的推論、データ解析、機械学習(ML)アルゴリズムに使用される
・Windows、Mac OS X、Linuxで動作
・バンキング分析(スコアリングや予測、クラスタリング)、医療データ分析、行政、コンサルティング
6位:C/C++
PYPLはC++がGoogle TrendsでCと同じ人気であることを指摘している。そのため、C++はPYPLには、独立して含まれていない。
C言語は1973年に開発されたが、今に至るまで、最も一般的なプログラミング言語の一つだ。
C言語で作成されたシステムの例
OS
・Microsoft Windows
・macOS
・iOS、Android、Windows Phoneカーネル
データベース管理システム
・Oracle Database、MySQL、Microsoft SQL Server(CとC++)、PostgreSQL(C言語を利用)
C++はC言語に非常に近い言語だ。C言語の構文とパワーをオブジェクト指向プログラミングの概念と組み合わせたものだ。
CとC++の類似点は次の通りだ。
・基本的な構文が同じ
・ハードウェアに近い基本的なメモリモデル
・コンパイルは別々だが、インタフェースをエクスポートする仕組みは同じ
C++で作成された アプリケーションの例
・Adobe製品、Mozilla Firefox、Microsoft製品
5位:PHP
PHPは主にWeb開発サービスで使用される。サーバサイドスクリプト言語として、あらゆる種類のWebサイトやWebアプリケーションを支えている。
PHPコードは通常、動的Webページの作成に使用される。これは最も適切な用途といえる。
PHPの特徴と作成されたアプリケーションの例
・オープンソースのサーバサイドスクリプト言語
・学習しやすい
・クロスプラットフォーム
・MySQLとの連携機能が組み込まれている
・Wikipedia、Yahoo!、WordPress、MailChimp、Flickr
4位:C#
C#もC言語のバリエーションであり、Javaの機能を一部備えている。
C#は多機能な言語であり、サーバアプリケーションからモバイルゲームまで、開発者はこの言語でほとんど何でも作成できる。
C#の特徴と作成されたアプリケーションの例
・Windowsと深く統合されている
・動的変数がある
・ネイティブのリソース管理イディオムをサポート
・列挙をサポート
・C#はMicrosoftの.NET Frameworkとともに、デスクトップWindowsアプリケーションの開発に広く使われている
3位:JavaScript
JavaScriptは、基本的なフロントエンド開発言語だ。表現力豊かでインタラクティブなWebページの作成によく使われている。Webアプリケーションにポップアップや視覚効果、さらには小さなゲームなどを追加できる。
さらに、ECMAScript 6標準やAngular、Node、Express、Reactといったフレームワークのリリースにより、開発者はクライアントサイドとサーバサイドの両方のプログラミングにJavaScriptを使うようになった。
JavaScriptの特徴と作成されたアプリケーションの例
・幾つかのフレームワークへのアクセス
・データ検証機能
・幾つかのプログラミング言語との互換性
・Yahoo!、eBay、Amazon、Wikipedia
2位:Java
Javaは長年にわたって開発者に人気のある言語だ。TwitterやLinkedIn、Amazon.com、eBayなど、世界のビッグブランドがJavaを使ってWebアプリケーションやバックエンドWebシステムを構築してきた。
さらにJavaは、Androidアプリケーションを構築するための公式言語でもある。ほとんどのGoogle PlayアプリケーションはJavaで書かれている。
Javaの特徴
・OS間で移植可能
・安定した環境
・高品質のコードコンパイル
・高い安定性
1位:Python
Pythonは自動化スクリプトを書いたり、アプリケーションのプロトタイプを迅速に作成したりするための言語から、Webやモバイル開発のための第一級の言語へと進化した。
一貫した構文はもちろん、統一された標準ライブラリ、良質なドキュメント、軽量フレームワーク(非常に人気の高いDjangoなど)といった強みがある。
Pythonの特徴と作成されたアプリケーションの例
・オープンソースのオブジェクト指向言語
・クロスプラットフォームソリューション
・非同期コーディング設計
・AIやML、デスクトップ、Webアプリケーションの作成に使用される
・幾つかのモジュールへのアクセス
・YouTube、Instagram、Dropbox、Reddit、Quora、Spotify
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