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海外との違いを意識すること自体がドメスティックジャパン思考Go AbekawaのGo Global!〜Wernich Baumgarten(後)(2/2 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回も前回に引き続き、八楽でAIプロダクトを開発しているWernich Baumgarten(バーニック・バウムガートン)さんにご登場いただく。多様な国籍のエンジニアと一緒に働く同氏が、仕事で大切にしていることとは。

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議論とは戦いではなく、1つの結論に至るための方法

阿部川 日本のエンジニアとバーニックさんのように海外から日本に来て仕事をしているエンジニアとの違いを感じますか。

バーニックさん 八楽のエンジニアはさまざまな国の出身者で構成されており、ほぼ全て日本人ではありません。国籍が違うと当然違う部分があります。考え方そのもの、問題解決に対するアプローチなどが異なります。GUI(Graphical User Interface)などは顕著ですね。あるエンジニアは「このボタンはこうすべきだ」ととても熱心に主張しますし、他のエンジニアが「テキストは必ず左側にあるべきだ」と固執することもあります。

 議論が白熱することはありますが、大抵はポジティブな結果になります。皆がそれぞれの視点を出し合うことで、ある1つの物事に対してさまざまな考え方ができることを共有できます。単に「南アフリカではこう」「日本ではこう」と切り捨てないので皆が納得できるデザインや解決策を見つけることができます。これは私たち開発チームの強みでもあると思います。

阿部川 1人が「テキストは左」、もう1人が「いや右だ」となったときはどのようにして解決するのですか。誰かの意見に集約していくのですか。もしくは、違いは違いとして主張し合って、そのうち合意が形成され、最終的にどちらかに決まるといった感じでしょうか。

バーニックさん 良い質問ですね(笑)。私たちはラッキーなのかもしれませんが、皆がとてもオープンに物事を議論できます。私が何かを主張したとき、「いや違う」とダイレクトに言う人もいれば、「いや、どちらのケースもありだよね」と考えを述べるものもいます。また、「今のところ自分はどちらでもいいので、決めてくれればどちらにも従う」といった意見も出ます。このレベルまで深く議論できていればお互いの主張のポイントが理解できるので、大抵1つの解決策にたどり着けます。

阿部川 そうやって国籍の違う専門家の意見を日本のクライアントに提案して、うまくいっている。それは日本が国際化したのでしょうか、提案する解決策がユニバーサル(普遍的な、一般的な)なものだからでしょうか。

バーニックさん その点は考えてみる価値はありますね。もちろんクライアントから「このやり方よりもこうやった方がいいのではないか」、あるいは「自分たちにはよく分からない」といったフィードバックを受けることはあります。そのことから私たちが、日本的な考え方を学ぶことができます。フィードバックそのものが、今後のより良い解決策やお互いの理解のためのバロメーターとなります。もちろん私たちの解決策がユニバーサルであればいいなとは思っています。


編集中村
編集 中村

 「フィードバックこそが学びのチャンス」ということですよね。素晴らしいと思います。相手が「これが欲しい」と言っていることをそのまま提供することはもちろん正しいのですが、それが本当に相手の求めているものかどうかを疑うことは重要です。相手が言っているから、私の国ではそれが当たり前だから、と思考停止をせずにユニバーサル視点で考えることがお互いを良い方向に進める方法なのかもしれません。


阿部川 八楽の進め方は、日本の企業にとってユニバーサルを学ぶ機会にもなっているのではないでしょうか。日本のエンジニアと仕事をしてみて、自分たちとの違いは感じますか。

バーニックさん 日本のエンジニアと仕事をして問題があったことは全くありません。日本だろうが米国だろうがスウェーデンだろうが、同じスキルを使ってコミュニケーションしますし、最終的には同じことです。日本のエンジニアはたくさんの知識がありますし、一生懸命に仕事をします。それはとても素晴らしいことだと思います。

ずっと楽しいエンジニアを続けていきたい

阿部川 現在25歳ですが、今後10年先ぐらいまでの間で実現したい夢のようなものはありますか。

バーニックさん 基本的には自分のスキルをどんどん伸ばし続けたいと思っています。具体的に決めているわけではありませんが、常に新しいプロジェクトや新製品を手掛けていきたいと思っています。一から何かを始めてみたり、既存の問題を何か新しい方法で解決したりできればいいと思っています。

阿部川 将来の仕事の内容やスキル、地位、報酬などを考えるとマネジメントのスキルも磨く必要があるかと思います。

バーニックさん そうですね、そのことについてはよく考えます。確実なことは言えませんが、今のところはエンジニアとしてやっていきたいと思っています。今は幸運なことにとてもやりがいのある仕事やプログラミングをさせてもらっていますから、夢がある程度かなっていると思います。

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最近のバーニックさん

 どうも多くの人は毎日の仕事をおっくうに感じることが多いようですが、私は全くそのようなことがありません。それだけでも大きなベネフィットだと思っています。ただそれは必ずしも「これ以上やらない」ということではありません。より能力を向上させたり、昇進したりもしたいですから。しかし現在のエンジニアとしての仕事にしばらくは集中したいと思っています。

 報酬という観点から考えることも、結局は「楽しんで仕事ができるか」ということと関連してくると思います。報酬が高くても仕事そのものが面白くなければ本末転倒だと思います。ですから今は、より高次のレベルのエンジニアを目指していくことに集中したいと思っています。

阿部川 最近、日本の漫画やアニメ映画はご覧になりましたか。

バーニックさん 最近は「進撃の巨人」ですね。

阿部川 おおお、そうですか! 私も大ファンなので、ここから3時間くらいお話ししましょうか(笑)。

バーニックさん 良いですねえ(笑)。

インタビューを終えて Go’s thinking aloud

 Go Globalを銘打つからには、多くの国籍の人が一緒に働くという話を聞けるとうれしい。そしていつも「では日本とどう違うか」と質問してしまう。違いが分かれば、そのギャップを埋めることでより日本がグローバルになれるだろうという思考からのものだが、その考え方自体がドメスティックだった。

 マーケットを世界と捉えれば、デジタル企業の開発現場は、既にグローバルが当たり前で、国籍や性別、年齢は二の次だ。数字やプログラミングが共通の言語になる南アフリカには13万人以上のエンジニアがいても、就職する機会に困らない。

 若いエンジニアが日本で物足りないと感じるとき、何かを変えないといけないとチャレンジするなら、一番手っ取り早いのは日本を飛び出す勇気だ。そしてそれを無謀といわずに手助けし、失敗しても再帰できるセーフティネットを用意することが、ベテランと呼ばれるわれわれの使命だ。

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