Arm64サポートでは初の正式版「Visual Studio 2022 17.4」がリリース:.NET 7対応など、多くの新機能を搭載
Microsoftは、統合開発環境(IDE)の最新版「Visual Studio 2022バージョン17.4」を公開した。Arm64をサポートする初の正式版のVisual Studioであり、「.NET 7」対応や、更新プログラムのロールバック機能を含むエンタープライズサポートなど、多くの重要な新機能を搭載する。
Microsoftは2022年11月8日(米国時間)、統合開発環境(IDE)の最新版「Visual Studio 2022バージョン17.4」を公開した。
Visual Studio 2022 17.4は、Arm64をサポートする初の正式版のVisual Studioである他、同日リリースされた「.NET 7」への対応や、更新プログラムのロールバック機能を含むエンタープライズサポートなど、多くの重要な新機能を搭載する。
Visual Studio 2022の3つ目のLTSC(長期サービスチャネル)リリースであり、「Enterprise」および「Professional」サブスクリプションに加入したユーザーは、LTSCで更新プログラムを受信する構成で使用することで、2024年7月までの期間、セキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性の修正プログラムを受け取ることができる。
Visual Studio 2022 17.4の主な新機能や機能強化点は次の通り。
Arm64サポート
Visual Studio 2022 17.4は、Armベースのプロセッサで動作するArm64アプリケーションによるビルドとデバッグをネイティブにサポートするVisual Studio初の正式版だ。次のワークロードを有効にして起動する。
- .NETデスクトップ開発(WinFormsとWPF《Windows Presentation Foundation》)
- .NETおよびWeb開発
- C++によるデスクトップ開発(MSBuildベースのプロジェクト)
- ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)開発
- Visual Studio拡張機能の開発
- C++によるゲーム開発
- js開発
Visual Studio 2022 17.4のArm64サポートは、Windows SDK(Win UI 2およびUWP)ではネイティブパフォーマンスを、Win App SDK(Win UI 3)ではネイティブサポートを実現している。
.NET 7サポート
クロスプラットフォームのアプリケーション開発オープンソースソフトウェアとして最新版である.NET 7は、Visual Studio 2022 17.4の一部となっている。.NET 7では、C# 11/F# 7、.NET MAUI、ASP.NET Core/Blazor、Web API、WinForms、WPFなどの改善されたパフォーマンスや新機能を利用して、アプリケーションを開発できる。.NET 7プロジェクトを簡単にコンテナ化し、GitHubアクションでCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ワークフローを設定し、クラウドネイティブの監視を実現することもできる。
C++開発者向けの機能
CMakeプロジェクトでのvcpkgアーティファクト(成果物)のサポートや、Named Return Value Optimisation(NRVO)の改善など、C++開発者向けの多数の機能が強化されている。
ロールバック機能
更新プログラムのロールバック機能が導入された。この機能を使うと、Visual Studioは、最後に適用された更新プログラムの前にインストールされたバージョンに戻すことができる。最後の更新プログラム以降に選択されたコンポーネントに対する変更は、全て保持される。ユーザー設定やプロファイルのようなローカルのカスタマイズは削除される。ただし、テーマ、フォント、キーバインド、ウィンドウレイアウトなどの一般的な同期設定は復元される。
エンタープライズサポート
次の機能が追加された。
- Windows Update for Business(WUfB)に登録されたクラウド接続デバイスへのセキュリティ更新プログラムの提供
- Visual Studio管理用テンプレートを使用したポリシー管理
- サポートが終了したコンポーネントの一括削除
コラボレーションとチーム
Gitツールの強化
ソリューションエクスプローラと「Git変更」ウィンドウの両方から、追跡対象Gitファイルの追跡を解除したり、無視したりできるようになった。
Gitの最近のセキュリティ更新に伴い、リポジトリステータスの改善と、新しい信頼ダイアログにより、単一および複数のGitリポジトリを信頼する際のユーザーエクスペリエンスが向上した。
マルチリポジトリのサポート
一度に最大10個のアクティブなGitリポジトリを持つことができるようになった。複数のリポジトリにまたがるソリューションを操作し、複数リポジトリのコミット、プル、プッシュなどのGit操作を同時に実行できる。
Microsoft Teams Toolkit
「Teams Toolkit for Visual Studio」を使用すると、.NETを使用して「Microsoft Teams」用アプリケーションを簡単に作成、実行、デバッグできる。このバージョンでは、Azure Active Directoryテンプレートファイルなどを更新する必要があるが、この更新は、Teams Toolkitのメニューコマンドを実行した後に自動的に実行される。
エコシステム
Arm64 Visual Studio用に拡張機能を作成および移行できるようになった。
より信頼性が高く、より使いやすい拡張機能を作成できる新しい拡張機能モデル「VisualStudio.Extensibility」のフェーズ2が登場し、より機能豊富で非言語ベースの、生産性を高める拡張機能を作成できるようになった。カスタムツールウィンドウ、ユーザー通知、追加のコマンドタイプを拡張機能に追加できる新しいAPIが導入されている。
生産性向上機能
選択テキストに一致する文字列の強調表示
エディタでテキストを選択すると、それに一致する文字列が自動的に強調表示されるようになった。200文字以下の1行のテキストを選択するたびに、一致箇所がすぐに強調表示される。
オーディオキュー
一般的なアクティビティーにサウンドを関連付けるオーディオキューが使用できるようになった。
データテーブルのビジュアライザ
データテーブルのビジュアライザがアップグレードされ、フィルター処理、並べ替え、エクスポート、テーマ設定などの機能が強化された。
コールスタックウィンドウの例外スタックフレーム
コールスタックウィンドウ内に例外スタックフレームが追加され、実際のコールスタックにおける全ての機能(自動ナビゲーション、フレーム間の迅速な切り替え、例外が発生したソースコードに戻るためのシンボルロード/デコンパイルオプションなど)を提供するようになった。
テストエクスプローラでのテスト結果とフィルターのクリア
テストエクスプローラで、1つまたは複数のテストの結果をクリアする方法が追加された。また、テストエクスプローラがフィルタリングされていることが明確に示されるようになり、適用されている全てのテストフィルターをシングルクリックでクリアできるようになった。
パフォーマンス
次のような機能や操作のパフォーマンスが向上した。
- Gitのブランチ切り替え
- レスポンシブなファイル保存
- C++インデックス作成
- ファイル内の検索と置換
- 言語サービス構成スイッチの最適化
- 並列テストの発見
- テスト実行の効率的な並列化
- Visual Studioとテストランナープロセス間の通信の最適化
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