「RPAやローコード/ノーコード開発をいかに進めるかが重要」 ベンダーや販社、SIerに向けてノークリサーチが提言:中堅中小企業のIT活用のポイントを解説
ノークリサーチは、中堅中小企業に向けてIT活用を提案するに当たって、IT企業が留意すべきポイントを発表した。直近の課題解決とDXの観点から既存業務システムの改善を提案する必要があるとしている。
ノークリサーチは2023年1月10日、中堅中小企業にIT活用の提案をするIT企業が留意すべきポイントを発表した。中堅中小企業はIT活用の規模や人材が限られているため、クラウドファーストや内製化などに向けた急激な転換が負担になっており、「オンプレミス、外注などへの回帰が起きている」とノークリサーチは指摘する。
「発展的な回帰」とは
「クラウドファーストと内製化」からの回帰を裏付けるデータとして、同社は年商500億円未満の企業を対象に実施した「DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む際の基本方針」に関する調査結果を挙げる。
それによると「クラウドサービスを組み合わせて(業務システムを)構築する」よりも「既存システムを徐々に改善していく」と考えるユーザー企業の方が多かった。一方、「内製を増やして外注企業への依存度を下げる」という企業の割合は1割未満となっており、ノークリサーチは「多くの企業は、業種や業務を理解した販社やSIer(システムインテグレーター)を選ぼうとする傾向にある」と分析している。
だが、従来のオンプレミスや外注といった体制に回帰するだけではDXの流れに逆行することになる。そこで同社はクラウドや内製に偏った状態から回帰しつつ、適材適所でクラウドを採用し、伴走型のSIerやサービスを利用するといった「発展的レパトリエーション(発展的な回帰)」が重要になるとみている。
EUCの再来ではないローコード/ノーコード
業務アプリケーションの領域についてノークリサーチは「RPA(Robotic Process Automation)やローコード/ノーコード開発をいかに進めるかが重要なテーマになる」としている。同社の「ローコード/ノーコード開発ツールの利点」に関する調査結果を見ると、企業は「アプリケーションを自ら作成できること」よりも「自社の要件を反映しやすい」という点をツールの利点と捉えていることが分かる。
また、セキュリティ強化や不具合削減も利点として認識されていることから、ノークリサーチは「『エンドユーザーコンピューティング(EUC)の再来』として啓発するのではなく、伴走型のSIerなどの新たな取り組みも交えながら、企業の要件を迅速で安全に反映したシステム開発を提供することが、発展的な回帰に沿った企業との望ましい関係構築につながる」と述べている。
オンプレミスに回帰するだけでは成長が阻害される
インフラに関する調査「サーバの管理/運用に関する課題」の結果を見ると、データや処理の増加に起因する課題よりも、「クラウド移行を進めたいが方法が分からない」「オンプレミスとクラウドの使い分けが難しい」といったクラウドに関連した課題が多く挙がった。この点についてノークリサーチは「『クラウドの利点を享受すること』と『クラウドに移行すること』が混同されたことによってさまざまな課題が生じている」と分析している。
ノークリサーチは、こうした課題を単にオンプレミスへの回帰を訴求する形で解決しようとするとインフラの柔軟性や拡張性を阻害することになりかねないと警告している。
「企業は既に適材適所のクラウド活用が有効であることを認識し始めている。そのため、ベンダーや販社、SIerはその企業の現状やニーズに応じて提案することが重要だ」(ノークリサーチ)
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