トラブル解決ツールがさらなるトラブルを招く?――Windows 11 バージョン22H2の「システムの復元」に異常あり!:企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(5)
Microsoftは2023年1月18日(米国時間)、Windowsの最新バージョン「Windows 11 バージョン22H2(2022 Update)」の「システムの復元」機能に、MSIXパッケージ形式のインストール済みアプリに影響する問題が存在することを公表しました。
「システムの復元」がストアアプリを壊す?
「システムの復元」は、コンピュータのソフトウェアを保護し、修復するための、Windowsが標準で備える修復ツールです。コンピュータでC:ドライブの「システムの復元」が有効になっていれば(「システムのプロパティ」(sysdm.cpl)の「システムの保護」で構成および作成可能)、Windows Updateやソフトウェア、ドライバのインストール前に「復元ポイント」が自動作成され、保存されます。
復元ポイントには、一部のシステムファイルとレジストリのスナップショットが含まれます。システムやアプリが不安定になったりした場合、「システムのプロパティ」の「システムの保護」タブまたは、モダンブートメニューの「トラブルシューティングオプション」から「システムの復元」を実行し、保存されている復元ポイントを選択して修復を試みることができます(画面1)。
- システムの復元とは(Microsoft サポート)
Microsoftが最近公表した問題は、以下のサポート情報「5023152」で説明されています。
具体的には、「システムの復元」で以前の復元ポイントに戻すと、MSIXパッケージ形式でインストールされた一部のストアアプリが、起動しようとしても「このアプリを開けません」とエラーが表示され、起動できなくなるというものです(画面2)。
サポート情報には「スタートメニューに複数のアプリのエントリが表示される」「アプリが応答しない」「I/Oエラー」など、他の症状が発生する可能性についても言及されています。
この問題は、現状、以下の既知の問題一覧には記載されていません。
- Windows 11, version 22H2 known issues and notifications[英語](Microsoft Learn)
MSIXパッケージは、Win32デスクトップアプリケーションを「ストアアプリ」とも呼ばれるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリに変換した「Centennialアプリ」です(以前は「Desktop Bridge」とも呼ばれていました)。サポート情報「5023152」では、影響を受けるアプリとして以下のプリインストールアプリが例示されています。
- メモ帳(Windows Notepad)
- ペイント(Paint)
- Office
- Cortana
- ターミナル(Windows Terminal)
なお、ここでの「Office」アプリは、「Windows 11」にプリインストールされている“無料のストア版Officeアプリ”のことであり、クイック実行(C2R)形式でインストールされた「Microsoft 365」サブスクリプションのOfficeアプリ(Microsoft 365 Apps)や、Office Professional、Office Personalといった永続ライセンス製品のことではありません(これらのアプリに影響はありません)。
Microsoft Storeでは、MSIXパッケージ形式のアプリが数多く利用可能になっています。例えば、「Firefox Browser」もその一つです。試しに、「Firefox Browser」アプリをインストール後に「システムの復元」を実行してみたところ、同じ問題が発生しました(画面3)。
問題解決は超簡単、ほとんどは「再実行」でOK
この問題が発生しても、簡単な方法で回復することができます。サポート情報には以下の4つの方法が記されていますが、筆者の環境の場合、影響を受けたプリインストールアプリは、全てもう一度アプリを実行することで起動できました。Firefoxについては、何度起動しようとしても同じエラーが発生して回復せず、アプリをMicrosoft Storeから再インストールすることで解消されました。
問題の解決方法
(1)アプリをもう一度実行する
(2)Microsoft Storeからアプリを再インストールする
(3)最初にインストールされたオリジナルのソースからアプリを再インストールする(企業内でのサイドローディング展開など)
(4)Windows Updateを実行する
「システムの復元」は、コンピュータで何か問題があったときに、回復する可能性のあるトラブルシューティングオプションの一つです。今回の問題は、「システムの復元」で以前の復元ポイントに戻さない限り、影響を受けることはありませんが、「システムの復元」を実行したということは、何か別の問題の解消を期待してのことのはずです。
それにもかかわらず、別の問題が加わって状況が悪化したように見えるのでは混乱してしまうでしょう。Windows 11 バージョン22H2を導入した企業は、既知の問題としてこのことを事前に承知しておくべきだと思い、今回取り上げることにしました。
最後に念のため指摘しておきますが、「システムの復元(System Restore)」とシステムイメージバックアップのリストア機能である「イメージでシステムを回復(System Image Recovery)」を混同しないようにしてください。今回の問題は、前者の影響で発生するWindows 11 バージョン22H2固有の問題であり、現状、未修正のままです。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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