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「PCの切り抜き帖」と「3つの願い」、私は13歳だったGo AbekawaのGo Global!〜Lily_Tiong(前)(1/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はLeapMindのLily Tiong(リリィ・ティオング)さんにお話を伺う。大家族で決して裕福ではなかったけれど、多くの愛情と教育の機会を与えられたリリーさん。そんなリリーさんが心に秘めていた3つの願いとは。

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 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回はLeapMindでAI(人工知能)モデル開発に携わるLily Tiong(リリィ・ティオング)さんにお話を伺った。自然豊かなボルネオ島で生まれたリリーさんの幼いころの目標は「両親の注目の的になること」だった。聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。

故郷の素晴らしさを小さいときは分からなかった

阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) マレーシアのボルネオ島(カリマンタン島)のご出身ですね。ボルネオ島は、どんなところなのでしょうか。

Lily Tiong(リリィ・ティオング、以降リリィさん) 自然が豊富です。かなり古い時代の森林もありますし、世界最大級の洞窟もあります。幾つもの国立公園があり、オランウータンなどの希少な野生動物もたくさんいます。自然が好きな人にとっては世界有数のスポットです。ボルネオ島の人々は純粋なので、昔から自然と調和しながら生きてきたと思います。

 でも、小さいころは「なぜここは、こんなに不便なんだろう」と思っていました。近くの町へは車で行けますが、他の町には川(ボート)を使わないと行けません。もちろん、お店はありましたけれど、本屋はありませんでした。同じマレーシア出身なのに、大学に入ってできた友人たちはボルネオのことを知りませんでした。マレーシアは大きくは西と東に分かれていて、多くの人は西マレーシア出身です。ボルネオは東マレーシアですから、彼らにとってボルネオ島は別の世界みたいなものです。

阿部川 西と東でそんなに環境が違うのですね。

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小学校の卒業式で、卒業生の代表としてスピーチをするリリィさん。後ろに座っているのは校長先生や地元の代表者の方だそうです

リリィさん ええ。大学での友人たちが私に聞いてくる質問は、面白いものばかりでしたよ。「木の上で生活しているのですか」とか「学校にはイノシシに乗って通うのですか」とか「故郷にはワニがたくさんいますか」などです(笑)。最初は丁寧に答えていたのですが、あまりにたくさんの人が似たような質問ばかりしてくるので最後はイライラしてきました(笑)。それでそのうち、「はい、木の上で生活していますし、エレベーターで乗り降りしているんです」と答えるようになってしまいました(笑)。


編集中村
編集 中村

 離れると故郷の良さに気付きます。木の上に住んでると言われたことはさすがにありませんが、雪国出身なので「外に置いとけばいいから、冷蔵庫はいらないんでしょう」と聞かれたことはあります(ちなみに外だと冷え過ぎて食材が傷むので冷蔵庫は必須)。雪下ろしは大変だし、近くにコンビニエンスストアもありませんから大変ですけど、故郷は離れがたいものだなと思います。


阿部川 それは面白いですね(笑)。不便さを感じていた幼いころ、例えば5〜6歳のころは何をしていましたか。自然の中で遊んでいたんでしょうか。

リリィさん いえいえ、すごく、とっても内向的でした(笑)。人見知りが激しくて、知らない人と話をするのに苦労しました。とてもおとなしかったですし、兄弟も7人ととても多かったので両親には私が見えていなかったのではないでしょうか(笑)。少なくとも私はそう思っていました。そのころから勉強は好きだったのですが、その理由としては「両親の気を引きたかった」というのが大きかったです。ただ、勉強しても私が思うようには両親が気に掛けてくれず、一生懸命勉強してそのうち村の中で「勉強が一番できる子どもだ」といわれるようになって初めて両親が気付いてくれたと思っています(笑)。

阿部川 ご両親の気を引く目的で一生懸命勉強したのですね。教科では何が好きでしたか。

リリィさん 科学と歴史が好きでした。本を読むのも好きでしたが、私たちの町には書店がなかったのでなかなか大変でした。図書館もあるにはあるのですが、小さくそれほど本がなかったんですよね。

阿部川 では学校での勉強が中心だったのですね。マレーシアの教育システムを教えてもらえますか。

リリィさん 小学校は6年間で、中学校は7年間です。4〜6年の時に、科学(理系)コースか、文学(文系)コースか決めます。理系は、数学、物理学、化学、生物学、応用エンジニア数学などです。「高等学校」(upper secondary school)で勉強する期間が他の国に比べて長いため、20歳で大学に入学します。

阿部川 リリィさんが入学したマレーシアサイエンス大学(University of Science,Malaysia)はどこにあるのですか。

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阿部川 “Go”久広

リリィさん マレーシアサイエンス大学には3つの主要なキャンパスがあって、メインのキャンパスはペナン島、医学部は東側のケランタン州、私が専攻した電子工学部のキャンパスはメインアイランドのペナン州にあります。マレーシアの中でも3本の指に入る大きな大学だと思います。卒業後は大学院に進学し、修士課程を修了しました。

阿部川 一番興味を持った学科や学問領域は何でしたか。

リリィさん マイクロプロセッサと、デジタルエレクトロニクスの研究です。

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