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ローコードで「自分たちに必要なものを自分たちで作る組織」へ 神戸市が“業務継続性”にこだわった理由「作って終わり」ではなく「ずっと続けられること」が重要(1/3 ページ)

2023年2月9日に開催された「@IT ローコード/ノーコード開発セミナー」の基調講演で神戸市役所の小阪真吾氏が「ローコードツールを手にした神戸市が目指すものとは」と題して講演した。ローコード開発ツールの効果を最大限に発揮するための神戸市役所の取り組みについて解説する。

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組織の閉塞(へいそく)感を脱するために抜本的な業務改革に着手

 神戸市はITを使った業務改革を積極的に進めている。きっかけは1995年の「阪神淡路大震災」だ。復興のため市の財政は常に厳しく、20年間で約30%の職員を削減しなければならなかった。業務の負担も大きく、職員を対象に実施した調査によると「低い効率性で多くの業務を回さなければならない」「組織に閉塞(へいそく)感が漂っている」などの課題が挙がった。

 こうした背景から「神戸市は抜本的な業務、意識改革に舵(かじ)を切った」という。こう語るのは神戸市役所の小阪真吾氏(企画調整局 デジタル戦略部)だ。

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神戸市役所の小阪真吾氏

 ペーパーレス化、RPA(Robotic Process Automation)やグループウェアの導入など、さまざまな取り組みを進めた同市役所。コロナ禍において特に目立ったのが、Microsoftの「Power Platform」、サイボウズの「kintone」、Salesforceの「Tableau」といったローコード開発ツールを使った取り組みだ。

 2022年5月に神戸市役所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種を電子化する「こうべE-mail 接種券」に取り組んだ。Webフォームで接種申し込みを受け付け、その情報を基に接種券に相当する電子メールを自動配信するという仕組みだ。小阪氏によると「ワクチンを接種した人の8割が利用した」そうで、紙の接種券が不要となったおかげで郵送コストや郵送によるタイムロスを大幅に削減できたという。

 この仕組みはkintoneとそのプラグインである「FormBridge」を利用している。構築したのはワクチン対策室の職員だが、実は2022年4月に赴任したばかりでkintoneに触ったのはそのときが初めてだったという。

 「担当の職員はデザインスキルがあったが、kintoneに触れたことはなかった。しかし、上司に使い方を教わるとkintoneアプリの基本部分を1日で構築できた」(小阪氏)

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kintoneアプリの基本部分は1日で構築

 素早く開発できたことで生まれた余裕は、デザインスキルを生かしサービスの使い勝手の向上のために使った。幅広い人に話を聞きながら使い勝手を改善し、「トータル1週間でkintoneアプリが完成した。これによってエンジニアではない職員も、ローコード開発ツールを使えば短時間でアプリケーションを構築できるという実感が得られた」と小阪氏は話す。

各拠点に散らばった情報を集約

 こうべE-mail 接種券の他にも、神戸市役所はさまざまなサービスを開発。COVID-19関連でいえば「健康相談チャットbot」「発生状況の可視化サービス」「特別定額給付金申請状況検索サービス」などがある。これらサービスの開発にはPower Platformを利用している。

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