2020年代にビジネスの再構築を促す6つのマクロ要因:Gartner Insights Pickup(300)
経営幹部は、2020年代もビジネスと技術の戦略の見直しを迫られている。本稿では、ビジネスの再構築を促す6つのマクロ要因を紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」や、アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」などから、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
経営幹部は2020年代もさまざまな課題に取り組んでいくが、その最初の数年間における大混乱の中から、新たなビジネスチャンスが生まれそうだ。
「2020年代に入ったとき、経済はすでに危うい状況にあった」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのマーク・ラスキーノ(Mark Raskino)氏は指摘する。「安価な金融と低コストのエネルギーに大きく支えられた10年にわたる好景気が、債務の膨張や国際的な同盟の崩壊、バブルのような資産価格といった構造的なゆがみをもたらしていた。その修正がいつ起こってもおかしくなかった」
この10年にビジネスの再構築を促す6つのマクロ要因
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、さまざまな社会変化が表面化し、多くの業種の企業が戦略のリセットを余儀なくされている。経営幹部は以下の6つの変化を認識し、ビジネスのやり方を見直す必要がある。
1.景気後退の脅威
COVID-19は、ここ数年の経済変動の明らかな推進力だったが、実際には、市場はすでに脆弱(ぜいじゃく)で不安定な状態にあった。
だが、これまでに分かっていることは、今の行動が景気低迷期やそれ以降の成功にとって極めて重要だということだ。その最たるものが、リソース配分と成長投資に関する意思決定だ。成功を収めるには支出管理や人材確保、デジタル化の加速に向けて、組織のあらゆる部門がいち早く果断な行動を取ることが必要になる。
2.構造的な不信
2020年にCOVID-19が拡大する前から、世界の消費者や市民の信頼は史上最低の水準にあった。サプライチェーンの混乱や人材不足といったCOVID-19の影響や、全体的なブランド不信から、顧客価値に絶え間なく焦点を当てることが必要となった。
経営幹部は、消費者が旧来のブランドに忠誠心を持ち続けるのか、それとも自分の求めるエクスペリエンス(体験)を提供してくれるブランドや、在庫に限りがある人気のブランドにビジネスを委ねるのかを考え続けなければならない。多くの場合、個人のニーズに合わせてパーソナライズされたつながりを築くことが、消費者の不信や不満を克服するのに役立つ。
3.低い経済生産性
仕事のデジタル化に加え、ハイブリッドワークやリモートワークの導入拡大に伴い、あらためてワークプレース(職場)の生産性のファンダメンタルズ(基礎的条件)に焦点が当てられている。現場から遠ざかっていた経営幹部が部下への委任を通じて、時代遅れの技術や官僚主義的な慣習、プロセスの非効率を見つけるために職場の隅々まで目を光らせ始めている。
だが、実際には、いかに環境が整っていなくても、従業員はより少ないリソースでより多くのことを行うことを求められている。従業員が従来のプロセスやワークフローに縛られているとき、従業員が仕事の生産性や成果について多くの改善を行えるのは、企業が急速な状況変化に対応して改革に取り組む場合に限られる。
経営幹部は、ディスラプション(創造的破壊)や変化への対応を可能にするために、仕事のやり方や担当者を見直す必要がある。こうしたファンダメンタルズを再評価しないと、不利な条件を背負っている従業員は疲弊してしまい、エンゲージメントを維持して生産性を発揮し、現在の、そして次の危機を乗り越える意欲と能力が低下してしまうだろう。
4.サステナビリティ
パンデミックの影が薄くなった今、サステナビリティ(持続可能性)が再びCEO(最高経営責任者)の主要な関心事の1つとなっている。
Gartnerは、最近の調査「2022 Gartner CEO and Senior Business Executive Survey(外部リンク/英語)」で、400人以上の上級経営幹部を対象に、2022〜2023年の優先事項について調べた。この調査では、「環境問題」が優先事項の9位に入った。回答者の9%が、上位3つの優先事項の1つとして挙げたからだ。
これは比較的小さな割合かもしれない。だが、「環境問題」がこの継続調査でトップ10に入ったのは初めてであり、この問題への関心が非常に高まっていることを反映している(3年前は14位、7年前は20位だった)。ビジネスリーダーは、顧客や投資家、規制当局、従業員から、環境のサステナビリティについてもっと努力するよう求められており、サステナブルなビジネスをすることは、効率化と売り上げの拡大を促進する機会になると考えられている。
5.人材不足
企業は、ユニークな課題を抱えている。それは、需要のある在籍中の人材を維持し、競争力のある必要な人材を見つけることだ。人件費予算が減っている、または横ばいである場合は特にそうだ。新規採用は難しいため、企業は創造性を発揮しなければならない。
景気が減速する中で人材市場が逼迫(ひっぱく)するという厄介な状況に対処するため、優れた経営者は創造的な手法を活用し、正社員を新たに雇うことなく、新しいスキルや能力を持った人材を確保する。
6.先進テクノロジー
先進テクノロジーは、今後10年間でさまざまな分野で大きなディスラプションを起こすだろう。適応型AIやメタバース、プラットフォームエンジニアリング、サステナブルテクノロジー、スーパーアプリは、組織や社会の在り方を変えると予想される。一夜にして劇的な変化が起こるわけではないが、一般的に、ディスラプションを初期段階で無視すると後で参入コストが高くなる。ビジネスチャンスを捉えるには、「今後数年間にどの重要テクノロジーが、いつ、どのように自社の戦略目標に影響を与えるか」を理解することが不可欠だ。
要約
- COVID-19のパンデミックは、あらゆるビジネス計画を混乱させた人類の危機だったが、単独の脅威ではなかった
- パンデミックは、構造的な不信や低い経済生産性など、他の多くのマクロ要因が表面化するきっかけとなった
- これらの要因の組み合わせにより、多くの業種の企業が、戦略の見直しを迫られている。その結果として2020年代には、ビジネスの再構築が深いレベルで行われるだろう
出典:6 Macro Factors Reshaping Business This Decade(Smarter with Gartner)
筆者 Jordan Turner
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