日本の社会保障は神:Go AbekawaのGo Global!〜Hsu Myat Thida(後)(3/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もエアリテックのシステムエンジニアであるHsu Myat Thida(ス・ミャッ・ティダ)さんにお話を伺う。将来の夢は起業、だが「IT企業にはしない」という。それはなぜか。
日本の社会保障は神
スさん 日本は本当にいい国です。私、日本が好きです。日本に戻らないのも、日本が嫌いなわけではなくて、チャレンジしたいことがあるから戻ってないだけなんです。年に何回かは日本に行きたいし、日本のやってることをミャンマーで実現できないだろうかといつも考えています。
阿部川 スさんが日本で特に良いと思ったところはなんですか。
スさん いっぱいありますが、重要なのは「制度」です。
私は社会保障関連のシステムにずっと携わっていたので、日本の制度もある程度分かっています。毎月、社会保障費を支払っている人は多いと思いますが、ミャンマーにはこういう制度はないんです。
しっかりした健康保険もないのでもし私が今、病気になったら、受診したり入院したりするためにたくさんのお金が必要になります。でも日本の制度は皆のために、今現在お金があるかないかに関係なく、70%払ってくれる(3割負担でよい)。
阿部川 社会保障制度のこと、私たちは当たり前のように思っていますけど、本当はすごいことですよね。お金がなくても病院に入れますから。
スさん はい。(100万円の治療だとしたら)日本は自分では30万円しか払う必要はない。でもミャンマーでは100万円は100万円。
日本はさらに、さまざまな支援があります。介護のための制度もあるし、老後は1人でも(子どもがいなくても)生きていける。ミャンマーでは子どもがいないと老後は大変です。でも私は、そういう考え方は好きじゃない。
子どもが親のためにずっと世話をする必要はないと思います。確かにミャンマーには、年を取っているけど子どもがいなくて、仕事もできないし、お金もないといった家庭もある。でもそれは子どもが悪いわけでもないし、親が悪いわけでもない。制度がないから困ってるわけです。だから、日本の1番素晴らしいところは制度だと思います。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
好きなことを仕事にできても、いつも楽しいわけでない。必ずといっていいほど、つらいときはある。それを乗り越えさせてくれる力、「何、くそっ」(失礼!)と踏ん張る力。その力の源は「何のためにこれをやっているのか」という本質的な問いがあるからだ。個人の場合は、それを“夢”といい、企業の場合は、それを“ビジョン”という。スさんは、理由が分かっていないことはやってこなかった。生まれついての実践向きだったことを、母はしっかりと見抜いていた。悪い状況になっても他人のせいにしない。自分の運命は、自分で決めてきた。
スさんの話す日本語は丁寧だった。話していてとても心地よい。正しい日本語、正しいビジネスマナー、そして人としての正しい人生への向き合い方。これは私たち日本人が世界で一番得意なはずだ。「情けは人のためならず」自らを磨くことは、必ず自身のスキルや人生に跳ね返ってくる。心ある人は必ず周りにいて、そして必ず見ていてくれている。スさんのこれまでの生き方がそれを証明している。
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