「35歳で定年」など絶対にない エンジニアは「長く活躍できる時代」へ:仕事が「つまんない」ままでいいの?(102)(3/3 ページ)
エンジニアの間で長く語り続けられた35歳定年説。でもこれからは、全エンジニアが長く活躍する時代です。
年齢は関係ない。全エンジニアが活躍する時代へ
冒頭の「プログラマー35歳定年説」に戻ります。ここまでお話してきたように、日本の労働環境は課題が山積しています。35歳で定年どころか、エンジニアが活躍する場がたくさんあります。
だからといって「待っていればいい」というわけではありません。長く活躍するためには、準備が必要です。
では、どんな準備が必要なのでしょうか。
できることを言語化しておく
以前、地方の企業と「複業したい」という人材とをマッチングしたことがあります。そのとき、希望者に職務経歴書や志望動機を送っていただいたのですが、多くの人が「何ができるのか」「なぜ複業したいのか」を言語化できていないことに驚きました。5行ぐらいしか書いていないものもあり、正直、「働きたいなら、もうちょっと書いてよ」と思いました。
企業で働いていると、自分をPRする必要がないため、「できること」や「どんな人や企業とつながりたいのか」といったことを言語化する機会がほとんどありません。普段からポートフォリオをまとめ、アップデートしておくことをお勧めします。自分を振り返る機会にもなりますよ。
いろいろな人と会う、話す
これまでいろいろな仕事をしてきてつくづく思うのは、「結局は、人のご縁だな」ということ。会社の人間関係だけではなく、社会との接点を持っておくことも大切だと思います。
若いときだったら「学生時代の同期と会う」でもいいかもしれませんし、技術的な勉強会や交流会に参加するのもいいでしょう。パートナーや子どもがいたら「地域や学校の行事に参加する」でもいいかもしれません。NPOなどのプロボノに参加してもいいかもしれませんし、知人が住んでいる少し離れた地域に出向いてもいいでしょう。小さなことでいいのです。
会社以外の接点を作り、いろいろな人と会話をすると、その業界や地域の課題に触れることができます。「自分なら、どんな役に立てそうか」を考えてもいいでしょう。また、さまざまな場に参加し、一緒に活動することで周囲からの信頼を得られます。
小さな企業の困りごとを解決できそうなツールに触れておく
エンジニアの皆さんの中には、サーバの構築やプログラミング言語など、高度な技術を生かす仕事にやりがいを感じている人もいるでしょう。
一方、その領域が専門的であればあるほど、一般の人からするとちょっととっつきにくいもの。それならば「その問題なら、○○で解決できますよ」と気軽に提案できるものを幾つか知っていることの方が、重宝がられます。
今後、人材不足がおき始めるのは、リソースが少ない企業からです。小さな企業ではいまだにFAXでやりとりしている例もあり、驚くほどにデジタル化が進んでいません。このような状況では、高度な技術よりも「このクラウド会計システムを入れると楽になりますよ」「このメールシステムを使うと、みんなで情報を共有できますよ」「このファイル共有システムを使うと、一元管理できますよ」ぐらい、小さなステップで改善できることの方が、相手の困りごとを解決できるケースが多いです。
ノーコード/ローコードツールを使って、画面を見ながら一緒に問題を解決していくのもいいかもしれませんね。
「でも、それって結局、プログラマーではいられないってことなんじゃないの?」と思うかもしれません。でもツールを使っていれば、「ここは○○にしたい」といった細かなニーズが生まれます。そのときは、プログラムを書きましょう。
できれば、商習慣は知っておく
最後に、できれば簡単な商習慣を知っておくことも大切かなと思います。
「簡単な商習慣」とは、請求書や領収書などの簡単な会計のやりとりや、クラウド会計の使い方などです。
企業で働いていると、旅費や経費の立て替え分を経理に報告するぐらいはあるでしょう。でも、それ以外は知らないことも多いもの。
先に触れたワーキッシュアクトのように、複業のような形で仕事をする場合、経理まわりを個人で行うことも多くあります。企業で働くにせよ、他の形で働くにせよ、簡単な商習慣を知っていて、得はあっても損は絶対にありません。
35歳で定年など、絶対にない
これからのエンジニアは「長く活躍できる時代」になる、というお話をしてきました。
ここまでのお話で、人口減少はかなり深刻であることが伝わったでしょうか。また、この危機を救うのは、エンジニアの皆さんであることも。
だからといって、「日本のために仕事をしているわけではない」ですよね。そう、みんな自分のために仕事をしているのです。
でも、その「自分のため」が「社会のため」になることを知っていただきたかったのです。仕事とは「誰かの困りごとを、自分が得意なことで解決すること」だから。
少なくとも、35歳で定年などということは、絶対にありません。長く活躍しようと思えば、活躍できるのがエンジニアです。皆さんには長く活躍してほしいと思います。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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