AWSが発表したローコードサービス「AppFabric」は、既存のiPaaSとどこが違うのか:生成AI機能も実装予定
Amazon Web Services(AWS)は2023年6月、異なるSaaS(Software as a Service)アプリケーションや生産性スイートをノーコードでつなげられるサービス「AWS AppFabric」(以後、AppFabric)の一般提供を開始した。複数のSaaSをつなぐサービスはさまざまあるが、AppFabricは何が違うのか。
Amazon Web Services(AWS)は2023年6月、異なるSaaS(Software as a Service)アプリケーションや生産性スイートをノーコードでつなげられるサービス「AWS AppFabric」(以後、AppFabric)の一般提供を開始した。複数のSaaSをつなぐサービスはさまざまあるが、AppFabricは何が違うのか。
SaaSからデータを集約 生成AIから洞察が得られるように
AppFabricは、「Asana」「Slack」「Zoom」のようなタスク管理やコラボレーションアプリと「Microsoft 365」「Google Workspace」のような生産性スイートからのデータを集約したり、記録したりする。AWSによると、「Amazon Bedrock」に基づく生成AI機能も利用可能になる予定だという。
Amazon Bedrockは、AI21 Labs、Anthropic、Stability AIなどのAIスタートアップやAmazonの基盤モデルにAPIを通じてアクセスできるマネージドサービスだ。生成AI機能を用いることで、異なるアプリケーションからToDoリストを作成したり、話題を提案したり、プロジェクトを要約したりするなど特定のタスクを完了させるのに役立てられる。
アドバイザリーサービスを提供するAVOAのCIO戦略アドバイザーであるティム・クロフォード氏は、既存のインタフェースやアプリケーションにコンテキストを追加する、これまでとは違う新しい概念だと指摘する。
「多くのサービスでは、特定のアプリケーションの一部からインタフェースにコンテキストを提供する形式だが、AppFabricは、複数のアプリケーション全体から単一のインタフェースにコンテキストを提供するものだ」
AppFabricを利用すると、Zoomで設定された通話、会議があった場合、他のアプリケーションからコンテキストを引き出し、通話や会議が設定された理由を特定し、インタフェースに表示する。これにより、会話のトピックを利用者に提案できる。
「顧客にとって『AppFabric』は導入しづらい」
またAppFabricは、AWSがセキュリティパートナー企業とのオープンソースな取り組みである「Open Cybersecurity Schema Framework(OCSF)」を使用しており、Logz.io、Netskope、NetWithness、Rapid7、Splunkなどのサードパーティーセキュリティ製品にアプリを接続することで、企業のセキュリティ態勢(Security Posture)の強化を目指すこともできるという。
ティム・クロフォード氏は、サイバーセキュリティ市場に対してサービスの価値をクラウドベンダーが示すべきだとも提言する。
「AppFabricを企業が利用する場合、AppFabricのようなサービスに対してデータを接続することに大きなためらいがあるだろう。AWSをはじめクラウドベンダーは、顧客の信頼を得るためにも、データを保護するための取り組みをもっと公開すべきだ」
クロフォード氏は、AWSの場合、自社のシステムが顧客データとデータ転送をどのように保護するか公表しており、AWSの従業員でさえ顧客データにアクセスすることはないとも付け加えている。
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