Azure ADからMicrosoft Entra IDへの名称変更、大きく前進:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(205)
「Azure Active Directory」(Azure AD)は、2023年7月から「Microsoft Entra ID」に名称変更されましたが、AzureポータルのUIやMicrosoft Learnドキュメントには、旧称のAzure ADが多く残っていました。2023年9月末までにその多くがMicrosoft Entra IDに変更されました。
AzureポータルのUIとドキュメントリソースの多くが新名称に対応
Microsoftは2022年5月、マルチクラウドIDとネットワークアクセスに関する一連のソリューションとして「Microsoft Entra」ファミリーを発表し、「Azure Active Directory」(Azure AD)をそのファミリーに組み込みました。そして、2023年7月に、Azure ADの名称を「Microsoft Entra ID」に変更することを発表しました。
- Azure Active DirectoryはMicrosoft Entra IDになりました。(Microsoft Security)
例えば、Azure ADのサービス名、サブスクリプション名、機能名は、「Microsoft Entra ID」(旧称:Azure AD)で以下の表1のように変更されました。
旧称 | 新名称 | |
---|---|---|
Azure AD | Microsoft Entra ID | |
Azure AD Free/P1/P2 | Microsoft Entra ID Free/P1/P2 | |
Azure ADテナント | Microsoft Entraテナント | |
Azure ADアカウント | Microsoft Entraアカウント | |
Azure AD Connect | Microsoft Entra Connect | |
Azure AD参加(Azure AD Join) | Microsoft Entra Join(Microsoft Entra参加) | |
Azure AD条件付きアクセス(Azure AD Conditional Access) | Microsoft Entra条件付きアクセス | |
Azure ADシングルサインオン(Azure AD SSO) | Microsoft Entra SSO | |
Azure AD Application Proxy | Microsoft Entra Application Proxy | |
表1 Azure ADとMicrosoft Entra IDの名称 |
名称変更への対応は、Microsoft Entra専用の新しいポータルである「Microsoft Entra管理センター」(https://entra.microsoft.com/)ではいち早く行われましたが(画面1)、「Azureポータル」(https://portal.azure.com/)の「Azure Active Directory」管理ブレードや、Microsoft Learnドキュメントのリソースには、旧称のAzure ADが多く残っていました。
旧称が多く残る状況は、2023年9月後半までに大きく改善され、Azureポータルでの管理ブレードの名称やアイコンは、Microsoft Entra IDに切り替わりました(画面2)。また、Microsoft Learnドキュメントの多くに新名称が反映されています。
ただし、日本語ドキュメントはまだ旧称が多く残っています(2023年9月22日時点)。近日中に新名称が反映されたドキュメントに更新されるでしょう(画面3)。
- Azure AD Rename Rollout and Resources[英語](Microsoft Tech Community)
Microsoftによると、Azureポータルやドキュメントの主要なテキストの更新は、2023年11月中旬までに完了する予定とのことです。また、オンプレミスのソフトウェアについては、2024年中に名称変更への対応が完了する予定です。
例えば、「Windows 11」の「設定|アカウント|職場または学校にアクセスする」のUIや、Windows Serverの「役割と機能の追加ウィザード」には、「Azure Active Directory」という表現が出ていますが、こうしたテキストも2024年までにMicrosoft Entra IDに置き換えられるはずです(画面4、画面5)。
旧称Azure ADのままで残るものもある
Azure ADからMicrosoft Entra IDへの名称変更は、開発者向けのエクスペリエンスには影響しません。既存のログインURL、API、PowerShellコマンドレット、「Microsoft Authentication Libraries」(MSAL)は同じ名称のまま引き続き利用できます。「Azure AD PowerShell」モジュールについては、2023年6月30日で非推奨になり、2024年3月にサポートされなくなることが発表されています。それまでに、新しい「Microsoft Graph PowerShell」に移行することをお勧めします。
- Important: Azure AD Graph Retirement and Powershell Module Deprecation[英語](Microsoft Tech Community)
Microsoftは、企業−消費者間(B2C)のIDを提供する「Azure AD B2C」を提供していますが、Azure AD B2CとAzure ADは別のサービスであり、Microsoft Entra IDへの名称変更に影響されません。今後も、Azure AD B2Cとしてサービスが提供されます。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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