2024年は機械の顧客が増える? Gartnerが発表した2024年のITインフラトレンド6選:ITインフラ&オペレーション管理者が備えるべき課題
Gartnerは、今後12〜18カ月間にインフラストラクチャとオペレーションに大きな影響を与える6つのトレンドを発表した。2024年のトレンドとして、マシンカスタマーや生成AIと並んで拡張接続型ワークフォースなどの新しい動きを挙げた。
Gartnerは2023年12月5日(米国時間)、今後12〜18カ月間にインフラストラクチャとオペレーション(I&O)に大きな影響を与える6つのトレンドを発表した。
Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのジェフリー・ヒューイット氏は次のように語った。「I&Oリーダーは、新たなトレンドとそれがI&Oに与える影響を完全に把握するための時間、スキル、予算がほとんどない。I&OリーダーはGartnerの発表を活用して、組織に最も影響を与えそうなものを特定し、効果的な戦術を実行してほしい」
トレンドその1:マシンカスタマー
マシンカスタマーとは、バーチャルパーソナルアシスタントやスマート家電、コネクテッドカーなどのように、人間が直接介入することなく、自律的に購買決定や取引を行うことができる経済主体のことだ。Gartnerは、マシンカスタマーの数は時間とともに着実に増加し、2027年までに先進国の50%の人々がAI(人工知能)パーソナルアシスタントを毎日使用するようになると予測している。
ヒューイット氏は「マシンカスタマーには大きな利点があり、それがマシンカスタマーに対する関心と採用の原動力となっているが、運用モデルやビジネスモデルの再構築を必要とするなどの課題もある。I&Oリーダーは、適切なマシンカスタマーのユースケース、必要な技術プロセスやスキルを特定し、最適に連携するために、デジタルコマースと生成AIに関する能力を構築する必要がある」と述べた。
トレンドその2:AIの信頼性、リスク、セキュリティ管理(AI TRiSM)
AI TRiSM(AI Trust, Risk and Security Managemen)はAIモデルのガバナンス、信頼性、公平性、信頼性、堅牢(けんろう)性、有効性、データ保護をサポートするフレームワークだ。I&OはAIが必要とする新しい形のリスクとセキュリティ管理を実施し、サポートしなければならない。Gartnerは2026年までにAI TRiSMを運用する組織は、AIモデルの導入、ビジネス目標、ユーザー受容性の点で50%の改善を達成すると予測している。
「AI TRiSMはAIの導入効率を向上させ、AIが潜在的に抱える財務的、規制的、社会的、倫理的な問題を未然に防ぐのに役立つ」とヒューイット氏は述べている。
トレンドその3:拡張接続型ワークフォース
拡張接続型ワークフォースはテクノロジーサービスやアプリケーションを意図的に管理、展開、カスタマイズすることで、ワークフォースの経験、福利厚生、能力開発をサポートするものだ。
「拡張接続型ワークフォースはI&Oにとって比較的新しい考え方であり、新しいスキルやワークフローを必要とする。またIT部門以外とのコラボレーションも必要であり、時には経営幹部の関与が必要となる」(ヒューイット氏)
トレンドその4:継続的な脅威エクスポージャ管理(CTEM)
継続的な脅威エクスポージャ管理(CTEM)プログラムは、潜在的な脅威に優先順位を付け、セキュリティ態勢を継続的に改善するための統合的かつ反復的なアプローチだ。テクノロジーが成長すると、攻撃対象も拡大し、一般的なIT環境以外にも脅威が広がる。CTEMはこうした潜在的な脅威に対処するための新たなアプローチで、全ての脆弱(ぜいじゃく)性を修正することに重点を置くのではなく、暴露に優先順位をつける。
ヒューイット氏は「CTEMは予防のみのアプローチから、戦略を強化し検知と対応能力を備えた予防的コントロールへのシフトを生み出すより成熟したアプローチだ。I&O部門にCTEMチームを設置し、オンプレミスのインフラだけでなく、クラウドやエッジの脆弱性もカバーする」と述べている。
トレンド5:民主化された生成AI
自然言語での会話が可能な生成AIは、知識とスキルの民主化を実現する。2023年9月にGartnerが1400人のエグゼクティブリーダーを対象に行った世論調査によると、55%の組織が生成AIを試験的または本番モードで使用していることが分かった。生成AIにはI&O内での生成AIの利用とI&Oへの生成AIの影響という2つの主要な側面がある。
「民主化された生成AIは新たな作業パラダイムを提供し、I&Oに俊敏性、適応性、コンポーザビリティの向上をもたらすことができる。一方で、生成AIを使い過ぎたり、不必要に使用したりすると、許容できないコストや環境に悪影響を及ぼす可能性がある」とヒューイット氏は警告する。
トレンド6:ナショナリズム対グローバリズム
外国の製品、人材、サービスへの依存を減らすために、各国がナショナリズム対グローバリズムの課題に取り組んでいる。国際的な紛争を考えると、外国への技術依存は大きな問題となる。I&Oチームは解決策として、より多くの技術、リソース、人材を自国内にとどめる必要に迫られるだろう。
ヒューイット氏は次のように指摘している。「現在、ITリソースの焦点をグローバルな視点からよりナショナリズム的なアプローチに移すような取り組みが数多く行われている。I&Oリーダーは、依存関係とそのリスクを特定し、I&Oに影響を与える国の規制や政策に起こり得る、潜在的な影響力のあるシフトに対処するためのアクションプランの作成を主導すべきだ」
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