Dockerイメージのビルド時間を最大39倍高速化する「Docker Build Cloud」提供開始:マルチアーキテクチャのビルドも容易に
Dockerは、Dockerイメージのビルド時間を短縮するソリューション「Docker Build Cloud」を顧客向けに提供開始した。
Dockerは2024年1月23日(米国時間)、Dockerイメージのビルド時間を短縮するソリューション「Docker Build Cloud」を顧客向けに提供開始したと発表した。
Docker Build Cloudでは、開発者がローカルでビルドするか、継続的インテグレーション(CI)を通じてビルドするかにかかわらず、ワークロードをクラウドにオフロードすることで、Dockerイメージのビルドを最大39倍高速化できる。
ビルド時間の短縮とイノベーションの加速
Docker Build Cloudを利用すれば、開発者はコード編集やデバッグなどの作業では、使い慣れた便利なローカル開発ツールを使い、リソース集約的なワークロードやコラボレーション、デプロイ(展開)などの作業では、必要に応じてクラウドのリソースにシームレスにスケーリングできる。
クラウドでビルドすることで、ローカルマシンよりも高速なコンピュートリソースにアクセスできるため、ビルド時間が短縮される。
クラウドのキャッシュの活用も、開発チーム全体でのビルド時間短縮につながる。あるチームメンバーがビルドを開始すると、キャッシュされた結果に他のメンバーが即座にアクセスできるようになり、不要なビルドがなくなる。
Dockerの最高製品責任者、ギリ・スリーニヴァス氏は、Docker Build Cloudのメリットについて次のように説明している「Dockerの最優先事項は常に、開発者のエクスペリエンスと生産性の向上だ。Docker Build Cloudにより、ビルドの完了待ちで時間を取られていたエンジニアリングチームは、イノベーションに集中できるようになる。チームの規模の拡大とともにこのソリューションはスケールアップし、生産性の大幅な向上をもたらす」
既存のツールやワークフローとのシームレスな統合
Docker Build Cloudは、ビルドを実行する場所がどこでも、大規模なリフト&シフトを行うことなく、簡単にセットアップできるように設計されている。「Docker Compose」「GitHub Actions」、その他のCIソリューションともうまく連携する。このため、既存の開発ツールやサービスとシームレスに統合でき、スピードと効率の向上というメリットをすぐに享受できる。
マルチアーキテクチャのビルドが容易に
現在、Intel(AMD64)チップセットとApple Silicon/AWS Graviton(Arm64)チップセットの両方に対応したアプリケーションを作成する必要がある開発者は、複数のネイティブビルダーを使用するか、デプロイターゲット向けに正常にビルドするために低速エミュレータを構成する必要がある。Docker Build Cloudはマルチアーキテクチャビルドをネイティブにサポートするので、複数のネイティブビルダーのセットアップと維持が不要になる他、エミュレーションに関連する課題が解消され、ビルド効率が向上する。
利用料金
Dockerを利用中の顧客は、すぐにDocker Build Cloudを利用できる。Docker Personal、Pro、Team、Businessのサブスクリプションプランごとに、組織全体で共有される毎月のビルド時間(分)が設定されている。
Docker Build Cloud Teamプランを購入すると、ビルド時間が1ユーザーにつき毎月200分追加される。このプランの料金は、年間契約でユーザー当たり月額5ドル、月間契約では同6ドル。ビルド時間をさらに追加する場合の料金は、500分で25ドル、1000分で50ドル、5000分で250ドル、1万分で500ドル、2万分で1000ドルとなっている。
Dockerが引用しているIncredibuildの調査によると、2020年から2021年にかけてビルド時間は平均15.9%増加し、開発者は平均して毎日約1時間を失っており、この遅延は年々着実に増加している。生産性と開発者エクスペリエンスへの影響は、小規模な組織でも年間42万ドルの費用に相当する可能性があるという(平均年俸14万ドル、開発者25人のチームの場合)。
Docker Build CloudのWebページでは、開発チームの人数と開発者の平均給与を入力して、Docker Build Cloudによって節約できる時間と費用の推計を確認できる。
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