異業種からのキャリアチェンジ成功者が語る「AIエンジニアになるための条件」とは:資格取得は有効? 学生時代にやっておくべきことは?(1/2 ページ)
生成AIをはじめ、AIの業務利用が進んでいる。開発環境も簡単に用意できるようになり、AI開発のハードルは下がっているが、いざ取り組もうとすると具体的にどのように進めればいいのか、どこから手を付ければいいか迷う人もいるだろう。現役のAIエンジニアにそういった気になるポイントを聞いた。
近年、AI(人工知能)関連の技術領域が社会的に大きな注目を集めている。機械学習や深層学習(ディープラーニング)に基づく予測や分析だけでなく、従来は難しいとされてきたテキストや画像などのコンテンツを認識、作成する機能が著しく向上したことが、AIの可能性を飛躍的に広げている。
ビジネスとしてAIに期待を寄せる企業は多く、AI関連のスキルを持つエンジニアの市場価値も高まっている。今後のキャリアとして「将来的にAI開発に関わりたい」と思っている人も多いだろう。
こうした背景の下、ITフリーランス専門のエージェント会社geechs job(ギークスジョブ)は、2023年12月7日に「『AIエンジニアに俺はなる!』〜異業種からキャリアチェンジを実現した3人の先輩AIエンジニアが登壇」と題したウェビナーを「Laboro.AI」(ラボロ エーアイ)と共同開催した。Laboro.AIは企業のニーズに合わせてオーダーメイドのAI「カスタムAI」を開発する事業を展開している。
本稿は「AI開発に仕事として携わるためにできること」や「AIエンジニアに求められること」といったキャリアチェンジにおいて気になるポイントについて、セミナーレポート形式で解説する。
課題の発見からAIによる解決までを支援する「カスタムAI」開発事業
このウェビナーは、Laboro.AIのAI事業の紹介と、同社で働く3人のAIエンジニアのトークセッションという2部構成となっている。
前半は、Laboro.AIの吉岡 琢氏(エンジニアリング部 部長)が、同社の“カスタムAI”開発事業を紹介した。
吉岡氏は、大学院在籍時から機械学習の研究に携わっており、その後も研究所や企業などで活躍を続けている。その分野も多様で、これまで機械学習による脳活動計測や人流データ分析、ディープラーニング、強化学習によるロボット制御などを手掛けてきた。Laboro.AIへの入社は2019年で、同社では機械学習や自然言語処理を使った幾つかのプロジェクトに携わった後、現在はエンジニアリング部の運営を統括する立場に就いている。
Laboro.AIは2016年に設立され、カスタムAIの開発と、その導入のためのコンサルティングを主な事業としている。現在65人の従業員(ウェビナー開催時点)がおり、その約4割強がエンジニアだという。企業ミッションには「すべての産業の新たな姿をつくる」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ」を掲げており、これを実現するためのツールが“カスタムAI”というわけだ。
同社はカスタムAIの事業を「クライアント企業が展開するビジネスの戦略や課題に合わせたAIソリューションデザインとコンサルティングをした上で、AIをオーダーメイドで開発して提供する事業」と定義している。
「ビジネス成果を上げるために解決すべき問いと、それに最適なAI技術の双方をトータルで考えるため、価値を持ってAIを提供できると考えている」(吉岡氏)
そのため、クライアント企業の業種や課題となるテーマに応じて、画像認識や音声認識、自然言語処理など、さまざまな技術を取り扱っている。成果物の形式も多様で、技術検証が目的であればレポートや実験用のコードを作成するし、クライアントが利用するアプリケーションや機械学習モデルを活用したシステムを開発することもあるという。
エンジニアリングの観点で見る「カスタムAI」の提供プロセス
カスタムAIプロジェクトの流れとしては、ビジネスサイドでの「企画構想、要件定義」から始まり、「開発、PoC(概念実証)」「導入、実装」「再学習、チューニング」となる。この流れの中で、エンジニアリングが大きく関わる部分としては「AI設計」「AI実装/改善」「AIと周辺システムとのつなぎ込み」がある。
“AI設計”は、ビジネス課題の発見と、それをAI技術で解決するためのアプローチを描く領域だ。必要とされるスキルとしては「適切な仮説を立てる能力」「基本的な機械学習や統計の知識」「既存の機械学習モデルやデータセットに対する調査能力」などがある。
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