宇宙ビジネスをソフトウェア開発で支える「ドメイン駆動でキャリアをつむぐ男」:ソフトウェアにはどのドメインにも適用できる力がある(1/3 ページ)
本が好き。音楽が好き。でも、ドメインにコミットして複雑な仕組みを整理してソフトウェアに落とし込むことはもっと好き。
日本の技術を結集したH3ロケット2号機の打ち上げが成功した。この明るいニュースに心が躍った人も多いのではないだろうか。
H3ロケットは、宇宙へ人工衛星等を輸送する日本の新たな基幹ロケットとして、開発が進められている。今回の打ち上げでも超小型衛星「TIRSAT」が搭載され、無事に軌道への投入が確認されている。衛星の運用に参画しているのが、宇宙ベンチャーとして小型衛星の企画、設計から量産化、運用まで総合的なソリューションを提供しているアークエッジ・スペースだ。
ロケットや人工衛星というとハードウェアの側面がクローズアップされがちだ。だが実は、人工衛星自体の制御や地上とのデータの送受信、人工衛星から得られたデータの利活用といった部分ではソフトウェアが大きな役割を果たしており、同社でもさまざまな経歴を持つソフトウェアエンジニアが活躍している。その一人が、同社でソフトウェア基盤の整備を通して宇宙ビジネスを支える三吉貴大さんだ。
みんなに喜んでもらえる体験を通して知った、開発の楽しさ
宇宙産業を支えるエンジニアというと、幼少のころから星空に憧れ、理系を専攻して宇宙を目指す――という人が多いイメージがある。だが三吉さんの興味関心は、宇宙よりも「情報と社会の関わり」というちょっと違う分野にあった。
小さいころから本が好きだったという三吉さん。「小学生のころ、みんなが自分の好きな本を置ける学級文庫のようなものがありました。そこで、HTMLとCSSを使って読んだ本を紹介するWebサイトを作ったことが、エンジニアとしてのものづくりの原体験です」
得意科目は理数系だが読書も好き、という自身の興味を満たせる進路として、文理融合で学べる総合人間学部に進学。そこで「プログラミング」と「社会学」にハマった。中でも興味を持ったテーマが情報社会だったという。「情報と社会というものがどう関わり合っていくのかというテーマに興味を持っていました」
勉強の合間には軽音サークルに所属し演奏を楽しんでいたが、そこでも原体験から続く取り組みをした。
「ライブ情報や演奏を録音した動画などが全く共有されていませんでした。そうした情報をサークル内で共有しつつ、外部にも活動を発信できるWebサービスのようなものを作ったところ、『活動がすごくやりやすくなった』といったフィードバックをもらえ、Webアプリケーションを作るのは楽しいなと感じました」
大学生になっても読書好きは変わらず、特に情報と社会の関わりというテーマから、ジョージ・オーウェルの『1984年』といった古典に始まり、伊藤計劃の『ハーモニー』などSF小説にハマっていた三吉さん。何となく小説家になりたいという思いがあったが、それだけで食べていくのは狭き門だ。
「まずは何か手に職を持って、小説家になることはその後考えればいいかなと思っていました」
その職として、楽しみつつ仕事としてもできそうだと感じ、選んだのがプログラミングだった。
「小学校でWebサイトを作ったときも、大学でサークルのWebサービスを作っていたときも、コードを書いていると寝食を忘れて熱中できました。ある意味、自分に向いている、天職なのかなと思います」
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