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世界の通信サービス市場、成長率はやや鈍化 AIが通信事業者に与える影響とは? IDC2024年の支出額は1兆5300億ドルと予測

IDCは、世界の通信サービス市場の支出動向と将来予測を発表した。2023年の支出額は対前年比2.1%増の1兆5090億ドル、2024年の支出額は対前年比1.4%増の1兆5300億ドルに達する見込みだ。

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 IDCは2024年5月3日(米国時間)、世界の通信サービスの支出動向と将来予測を発表した。2023年の支出額は対前年比2.1%増の1兆5090億ドル。2024年の支出額は対前年比1.4%増の1兆5300億ドルに達する見通しだ。

地域 2022年の収益 2023年の収益 前年比成長率
米国 $571 $574 0.5%
アジア太平洋 $467 $481 3.0%
ヨーロッパ・中東・アフリカ $439 $454 3.3%
総計 $1478 $1509 2.1%
世界の地域通信サービスの収益と前年比成長率(収益単位:億ドル)

米国で成長鈍化、地域別に見る通信サービス市場動向と将来予測

 2023年後半は通信サービス市場の成長が鈍化し、成長率はIDCの前回予測を1ポイント下回った。IDCによると、米国経済の成長鈍化、高いインフレ率、市場の飽和が重なり、市場開拓に不利な環境だったことが原因として挙げられるという。一方、ヨーロッパ、中東、アフリカ(EMEA)地域では、米国と同様の経済問題に直面しながらも、インフレ率に応じた通信料金の値上げが規制当局から承認されたため、市場の成長は「予想をやや上回った」としている。

 通信サービス市場は2024年以降も厳しい環境が続く見通しだ。欧米の中央銀行は基準金利の引き下げを延期しており、景気回復が遅れる可能性もある。インフレが持続すれば、消費者の購買力が下がる中で、多くの通信事業者が料金を引き上げることも考えられる。一方、インフレ率が徐々に低下するにつれて料金引き上げの効果は時間とともに薄れていくだろうと、IDCは予測している。

 IDCは「不安定な政治情勢は、さらなる不確実性を増大させ、成長率を鈍化させる可能性が高い。アジア太平洋地域の成長鈍化は、中国経済の冷え込みに起因していると考えられる。一方、インドやその他の発展途上市場では、健全な成長が見込まれるため、明るいトレンドが予想される」と述べている。

2023〜2028年の地域別通信サービス支出の推移 (提供:IDC)
2023〜2028年の地域別通信サービス支出の推移 (提供:IDC)

モバイルが成長をけん引、分野別に見る市場動向

 IDCは、サービス分野別の市場動向を次のように解説している。

モバイル

 通信サービス市場において、モバイルが引き続き最大の成長分野となっている。モバイルデータ使用量とM2M(Machine-to-Machine)アプリケーションの成長が同分野の成長をけん引している。これは、モバイル音声およびメッセージングサービス支出の減少を相殺するものとなっている。

固定データサービス

 高帯域幅サービスの需要増加に伴い、固定データサービス分野も成長している。だが、IP音声サービスの増加により、従来の固定音声サービス支出は減少すると予想される。

有料TVサービス

 ビデオオンデマンド(VOD)やオーバーザトップ(OTT)サービスの人気上昇に伴い、有料TVサービス市場支出も減少すると予想される。だが、通信事業者にとって重要なサービスであり、収益源となり続けるだろう。

AIが通信事業者の利益率維持を支援

 IDCでリサーチディレクターのクレシミール・アリック氏は次のように述べている。

 「AI(人工知能)と高度なアナリティクスの出現により、通信事業者は事業運営のモダナイゼーションと効率改善に役立つ強力な味方を獲得した。IDCでは、カスタマーサービスのチャットbot、バーチャルアシスタント、ネットワークの最新化と予測保全、ネットワークトラフィック管理、パーソナライズされたマーケティング、不正行為の検出と防止、解約予測、収益保証のためのAI利用など、膨大な数のユースケースを特定している。AIは、通信事業者が業務を合理化し、顧客体験を向上させ、急速に進化する業界で競争力を維持するのに役立つだろう」

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