Microsoft、NPUを搭載したAI PC「Copilot+ PC」を発表 新たに搭載されるAI機能とは:「最も速く、最もインテリジェントなWindows PC」を提供
Microsoftは、AIのために設計された新たなWindows PC「Copilot+ PC」を発表した。2024年6月18日に同社とOEM各社が第1弾を発売する。
Microsoftは2024年5月20日(米国時間、以下同)、AI(人工知能)のために設計された新たなWindows PCである「Copilot+ PC」(コパイロットプラスピーシー)を発表した。
Copilot+ PCは「最も高速でインテリジェントなWindows PCであり、40TOPS(Trillion Operations Per Second)以上を実現するパワフルで新しいシリコン、1日中使えるバッテリー駆動時間、最先端のAIモデルへのアクセスにより、他のPCではできなかったことを可能にする」と、Microsoftは述べている。
Copilot+ PCでは、Recall(リコール)機能により、PCで見たものを簡単に見つけて記憶したり、Cocreator(コクリエイター)機能を通じて、デバイス上でほぼリアルタイムにAI画像を生成、編集したり、40種以上の言語から英語に音声を翻訳するライブキャプション機能を使用したりできる。
Copilot+ PCの第1弾として2024年6月18日から、OEMパートナーのAcer、ASUS、Dell Technologies、HP、Lenovo、Samsungから薄型軽量デバイスが発売される。Microsoftも「Microsoft Surface」の新製品(Surface Proと同Laptop)を投入する。これらはQualcommのArmベースモバイルSoC(System on Chip)「Snapdragon X」シリーズを搭載する。最低価格は999ドルだという。
さらに、IntelのCPU「Lunar Lake」やAMDのCPU「Strix」を搭載するCopilot+ PCも、後日リリースされる見込みだ。
Microsoftは、直近1年間の目覚ましいAIイノベーションに続いて、Copilot+ PCの提供を皮切りに「デバイスによるAIイノベーションの新たなステージが始まる」と述べ、Copilot+ PCの特徴を次のように説明している。
Copilot+ PCの特徴
最速で最も安全なWindows PC
MicrosoftはCopilot+ PCでCPU、GPU、および新搭載のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)のパワーを結集し、Microsoft Azureで稼働する大規模言語モデル(LLM)と、デバイス上の小規模言語モデル(SLM)を連携させることで、これまでにないレベルのパフォーマンスを実現できると述べている。AIワークロードの実行において、最大20倍の性能と最大100倍の効率性を提供し、業界最先端の高速AI処理を実現するとしている。
またCopilot+ PCは、バッテリー効率も優れており、1回の充電で最大22時間のローカルでのビデオ再生や、15時間のWebブラウジングが可能だ。
さらに、Copilot+ PCの第1弾では、Arm64でネイティブに動作するアプリケーションがこれまで以上に増えている。その中には「Microsoft 365」に加え、「Google Chrome」「Spotify」「Zoom」「WhatsApp」「Blender」「Affinity Suite」「DaVinci Resolve」が含まれる。2024年後半には「Slack」もArm64ネイティブアプリケーションに加わる見通しだ。また、新しいエミュレータ「Prism」を使えば、ネイティブでもエミュレーションでも、アプリケーションは快適に動作するという。
全てのCopilot+ PCは初期状態で安全に設定されており、「Microsoft Pluton」セキュリティプロセッサがデフォルトで有効になっている。「Windows 11」では、ユーザーが簡単に安全な状態を維持できるように、多くの新機能、更新プログラム、設定を導入している。
新しい強力なAI機能
Copilot+ PCでは強力なプロセッサに加え、MicrosoftのSLMを含む最先端のAIモデルを活用し、ローカルのデバイス上で強力なAI機能を直接実行できる。そのため、クラウドAIを利用する場合のレイテンシ、コスト、プライバシーといった制限を気にせず済む。
素早く情報を呼び戻すRecall機能
完璧な記憶を持っているかのような感覚で、PCで過去に見たことや操作したことにアクセスできる。アプリケーション、Webサイト、ドキュメントなどを横断するタイムラインで、時間を超えてスクロールし、必要なコンテンツを見つけることが可能だ。
Windowsに組み込まれたAI画像作成/編集するCocreator機能
手書きと文字によるプロンプトを組み合わせて、ほぼリアルタイムで新しい画像を生成できる。繰り返し指示してアートワークに変更を加えながら、アイデアと品質を簡単に洗練、進化させることができる。
クリエイティブアプリベンダーとの提携
Microsoftは、NPUのパワーを活用して新しい革新的なAI体験を提供するために、世界で広く使われているクリエイティブアプリケーションベンダーと提携している。提携先(製品)はAdobe(Photoshop、Lightroom、Expressなど)、Blackmagic Design(DaVinci Resolve Studio)、Bytedance(CapCut)、Cephable(Cephable)、LiquidText(LiquidText)、Algoriddim(djay Pro)だ。
コミュニケーションを容易にするライブキャプション
ライブキャプションは、PCから出力される全てのオーディオを全てのアプリケーションで、共通する1つの英語字幕体験に変換し、リアルタイムで画面上に表示する。あらゆるアプリケーションやビデオプラットフォームにおいて、40種を超える言語のライブまたは録音済み音声を、瞬時に、自動的に、さらにはオフライン状態でも英語字幕に翻訳できる。
強化された Windows Studio エフェクト
クイック設定から容易にアクセスできるコントロールで、自動的に希望の外観とサウンドを実現できる。Portrait light、クリエイティブフィルターなどが利用できる。
AIアシスタント「Copilot」
全てのCopilot+ PCにユーザー専用の強力なAIエージェントが付属しており、新しいCopilotキーでキーボードをタップするだけで呼び出せる。アプリケーションとして利用可能だ。今後数週間で、パートナーであるOpenAIの「GPT-4o」など最新のLLMにアクセスできる。
責任あるAIの推進
Microsoftは、倫理的で安全なAIの開発に全社を挙げて取り組んでおり、AI機能は全て社内基準に合致している。
Copilot+ PCのハードウェアプラットフォーム
Copilot+ PCの第1弾は、QualcommのモバイルSoCであるSnapdragon X EliteまたはSnapdragon X Plusを搭載する。これらのSnapdragon Xシリーズには、QualcommのカスタムCPU「Oryon」、45TOPSを実現するNPU、Qualcomm Adreno GPUが含まれる。
IntelのLunar LakeやAMDのStrixを搭載して後日リリースされるCopilot+ PCでは、NVIDIAの「GeForce RTX」やAMDの「Radeon」のような強力なGPUの追加も計画されている。
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