IBM、「watsonx」で企業のAI導入、活用を支援する一連の取り組みを発表:オープンソース、製品、エコシステムの革新を推進
IBMは年次イベント「THINK」において、同社のAIおよびデータプラットフォーム「watsonx」によって企業におけるAI導入、活用の支援を推進する一連の取り組みを発表した。
IBMは2024年5月21日(米国時間、以下同)に年次イベント「THINK」において、オープンソース、製品、エコシステムのイノベーションを通じて、同社のAI(人工知能)およびデータプラットフォーム「watsonx」によって企業におけるAI導入、活用の支援を推進する一連の取り組みを発表した。
主な発表内容は以下の通り。
- watsonxに含まれる基盤モデル「IBM Granite」ファミリーをオープンソースとして公開
- Red Hatと共同で世界初のモデルアライメント技術である「InstructLab」を提供開始
- IBM watsonxアシスタントの新クラスを発表
- AIを活用した自動化の新しいビジョンと機能をプレビュー
- Amazon Web Services(AWS)、Adobe、Meta、Microsoft、Mistral、Palo Alto Networks、SAP、Salesforce、SDAIAとの協業を強化
Graniteモデルファミリーをオープンソース化
IBMは、オープンソースのAIエコシステムへのコミットメントをさらに強化するため、先進的でパフォーマンスの高い言語およびコード用Graniteモデルのファミリーをオープンソース化した。
オープンソースのGraniteモデルは、開発プロセス、品質、効率性という点で優れており、Apache 2.0ライセンスの下、HuggingFaceとGitHubで利用可能になった。
Graniteコードモデルは、3B(30億)から34B(340億)までのパラメーターによるバリエーション、基本モデルと命令追従モデルのバリエーションがあり、複雑なアプリケーションのモダナイゼーション、コード生成、バグの修正、コードの説明と文書化、リポジトリ管理などのタスクに適している。116のプログラミング言語でトレーニングされており、IBMによるとさまざまなコード関連タスクにおいて、オープンソースのコードLLM(大規模言語モデル)の中で高い性能を達成しているという。IBMはプレスリリースで幾つかの業界ベンチマーク結果を紹介している。
InstructLabを提供開始
IBMとRed Hatは最近、オープンソースプロジェクトのやり方をLLMの開発に取り込んだプロジェクトであるInstructLabの提供を開始した。これは、オープンソースコミュニティーの貢献をLLMに直接取り入れられるようにすることを目的としている。LLMに関するオープンソースイノベーションを前進させる画期的なアプローチだとしている。
「InstructLabを使用することで、開発者は、自身のビジネス領域や業界に特化したモデルを自分のデータで構築可能となり、モデル提供者だけが価値を得るのではなく、開発者がAIの直接的な価値を確認できる」と、IBMは説明している。
watsonxアシスタントの新クラスを発表
IBMは、企業のAI導入や本番展開を後押しするため、企業がドメイン横断的に独自のAIアシスタントを構築できるようにするwatsonxアシスタントファミリーに関する以下のようなアップデートと機能強化を発表した。
- Javaアプリケーション開発を支援する「watsonx Code Assistant for Enterprise Java Applications」:2024年10月提供開始予定
- 知識や専門性を迅速に伝達できるようにユーザーとシステムとの関わり方を変革する「watsonx Assistant for Z」:2024年6月提供開始予定
- コードの解説を加え、自然言語による解説を通じてユーザーがアプリケーションを理解、文書化できるように支援する「watsonx Code Assistant for Z」サービスの機能拡張:2024年6月提供開始予定
さらにIBMは、AIワークロード向けにますます堅牢(けんろう)化、複雑化するデータを企業が監視、管理、最適化する方法を強化できるようにすることを目指し、生成AIを活用したデータ製品や機能を発表した。その中には、「IBM Data Product Hub」(2024年6月提供開始予定)、「Data Gate for watsonx」(2024年6月提供開始予定)、「watsonx.data」の最新および計画中のアップデートなどが含まれる。
AIを活用した自動化の新しいビジョンと機能をプレビュー
自動化のビジョン
ハイブリッドクラウドやAIの採用が進み、企業は複数のクラウド環境や大量のアプリケーションを管理するようになり、扱うデータも膨大になっている。これらのクラウドやアプリケーションはそれぞれ複数の依存関係を持っている。
こうした中では、「自動化は、企業が時間を節約し、問題を解決し、より迅速に意思決定を行うための必須の手段となる」という認識から、IBMは、企業がIT環境のプロアクティブな管理から、AIを活用した予測的な自動化へと移行できるようにする、AIを活用した一連の自動化機能を提供する。
IBMの自動化、ネットワーキング、データ、アプリケーション、インフラ管理製品のポートフォリオを活用することで、企業は、ますます複雑化するIT環境と、IT支出を管理できる。このポートフォリオの主要製品には、以下のようなものがある。
- Apptio:IT投資からビジネス価値を創造するために必要となるIT財務管理、クラウド財務管理、エンタープライズアジャイルプランニングソフトウェア製品のファミリー
- Instana:従来のAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)ソリューションを超えて、AIを活用した自動オブザーバビリティ(可観測性)と可観測性を普及するための機能を提供する
- Turbonomic:パブリック環境、プライベート環境、ハイブリッドクラウド環境を含むITインフラのパフォーマンスとコストを最適化するのに役立つソフトウェアプラットフォーム
これらの製品を補完するために、IBMは最近、「Terraform」「Vault」などの製品でクラウドインフラの自動化をリードしてきたHashiCorpを買収する意向を発表した。
新しい自動化ツール
IBMは、2024年6月に提供開始予定の生成AIベースのツール「IBM Concert」を紹介した。watsonxのAIを搭載したIBM Concertは、企業の既存システムに統合され、生成AIを使用して、クラウドインフラ、ソースリポジトリ、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デプロイメント)パイプライン、その他の既存のアプリケーション管理ソリューションからのデータに接続し、接続されたアプリケーションの詳細なビューを構築する。企業のアプリケーションポートフォリオ全体にわたって、問題を特定、予測し、修正を提案することが可能だ。
サードパーティーパートナーのモデルを追加
IBMはサードパーティーのモデルをwatsonxに追加し、主要なソフトウェア企業が自社の技術にwatsonxを組み込むことを可能にし、また企業のビジネス変革のためにIBM Consultingの専門ノウハウを提供している。これにより、AIを活用する場所と方法に関する選択肢と柔軟性を提供し、パートナーとのエコシステムを継続的に強化している。
IBMはプレスリリースで、AWS、Adobe、Meta、Microsoft、Mistral、Palo Alto Networks、SAP、Salesforce、SDAIAとの協業の展開を紹介している。
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