経営幹部の41%が「AIが技術的負債を増加させている」と回答 アクセンチュアが企業成長に関するレポートを発表:事業を再創造するために必要な「デジタルコア」とは
アクセンチュアは、レポート「Reinventing with a Digital Core(デジタルコアによる再創造の推進)」を発表した。企業成長を促進するためには「技術的能力の強化」と「技術的負債の解消」のバランスが重要で、同社は「IT予算の約15%は技術的負債の解消に割り当てるべきだ」としている。
アクセンチュアは2024年7月23日、レポート「Reinventing with a Digital Core(デジタルコアによる再創造の推進)」を発表した。これは、日本を含む世界10カ国、19業種のIT部門の経営幹部1500人を対象に「組織のイノベーションを実現し、強化するための技術的能力」(同社は「デジタルコア」と定義)について調査した結果をまとめたもの。
肝心なのは技術的負債と投資のバランス
レポートによると先進的なデジタルコアを備え、戦略的なイノベーションへの投資と技術的負債に対する適切なアプローチをしている企業は、その他の企業に比べて収益成長率が60%、収益性が40%も高かった。この結果からアクセンチュアは「先進的なデジタルコアは、企業全体の再創造(リイノベーション)を実現するために重要な役割を果たす」と分析している。
アクセンチュアによると、デジタルコアは「デジタルプラットフォーム」「データとAI(人工知能)」「デジタル基盤(クラウドインフラ、統合、セキュリティなど)」の3つの要素があり、企業が競争力を保つためには、こうした要素への投資が欠かせないという。
一方、アクセンチュアは技術的負債の解消にも力を入れるべきだと考えている。従来、技術的負債は主にレガシーコードや古い技術、文書化の不足から生じていた。しかし、レポートによると経営幹部の41%が「AIが技術的負債を増加させている」と回答した。例えば、いち早く導入されたものの、その後、複雑な問い合わせに対応できなくなったAIチャットbotなどがそれに当たる。
こうした背景からアクセンチュアは、企業全体の再創造を支えるデジタルコアの実現に向けて、3つの基本理念を提唱する。
1つ目は「業界ニーズに合致した先進的なデジタルコアの構築」。アクセンチュアは「まず自社のデジタルコアの現状を把握し、必要な領域に優先的に取り組むべきだ」としている。2つ目は、AIオペレーションに向けたシステム再構築を含む「戦略的イノベーションへの投資強化」。同社の調査では、企業全体の再創造に向けて、少なくとも対前年比で6%の予算増加が必要だという。3つ目は、計画的で自律的な手法による「技術的負債と投資のバランスを確保すること」だ。アクセンチュアの分析では、IT予算の約15%は技術的負債の解消に割り当てることで、安定したIT能力を維持できるという。
これらの基本理念を同時に推進することで、収益成長率を60%向上、利益を40%増加させるなど、大きな成果創出が可能になるとアクセンチュアは述べている。
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