「効率化よりも太陽光発電と風力発電への投資を優先すべき」なデータセンターの総電力消費量急増、その要因は? IDC予測:電力料金も上昇が続き、運用コストがかなり膨らむ
IDCは、データセンターの電力コストとテクノロジープロバイダーやデータセンター事業者への影響などについて考察したレポートを発表した。
調査会社IDCは2024年9月24日(米国時間)、データセンターの電力コストとテクノロジープロバイダーやデータセンター事業者への影響などについて考察したレポートを発表した。
データセンターはデジタル経済の中心を成し、需要の大幅増が予想されており、成長と投資の主要な焦点として位置付けられている。だが、電力料金の上昇やデータセンターの電力消費の増加に伴い、データセンターの運用コストも大幅に上昇している。
データセンターの電力消費、増加要因は?
電力コストは、データセンター事業者の継続的な費用の中で比重が圧倒的に大きく、エンタープライズデータセンターでは支出全体の46%、サービスプロバイダーデータセンターでは60%を占めている。また、データセンターが処理するワークロードが増加し、中でもAI(人工知能)のような電力集約型ワークロードが増加していることから、データセンターの電力消費は急増している。
IDCは、AIワークロード需要の急拡大により、データセンターの容量、電力消費、二酸化炭素排出量が大幅に増加すると予測している。
AIデータセンターの電力消費量予測
AIデータセンターの容量は、2027年までの年平均成長率(CAGR)が40.5%となる見通しだ。AIデータセンターの電力消費も44.7%のCAGRで増加し、2027年には146.2テラワット時(TWh)に達すると予測されている。AIワークロードの電力使用量がデータセンターの総電力使用量に占める割合は、増加の一途をたどることになる。
IDCは、世界のデータセンターの総電力消費量が2028年には857TWhに達し、2023年比で2倍以上に増え、2023〜2028年のCAGRが19.5%となると予測している
同時に、電力料金も上昇しており、その背景としては需給力学、環境規制、地政学的事象、気候変動を一因とする異常気象の影響が挙げられる。
電力料金の増加がデータセンター運用コスト増の要因に
IDCは、過去5年間に電力料金の上昇をもたらす動向が今後も続くと考えている。電力消費の増加と電力コストの上昇により、データセンターの運用コストはかなり膨らむだろうが、その程度は不明だ。いずれにしても、データセンターでは今後、電力効率の向上などによって電力消費およびコストの上昇を抑制することが、重要な課題となる。
「データセンターの効率を高めるための選択肢は、チップ効率の改善や液体冷却などの技術的ソリューションから、データセンターの設計や配電方法の見直しまで、たくさんある」と、IDCのクラウドおよびエッジデータセンタートレンド担当リサーチディレクターを務めるショーン・グラハム氏は語る。
「ただし、電力効率の高いソリューションの提供は、顧客ニーズを満たすための方程式の一部にすぎない。クラウドやコロケーションサービスなどを提供するデータセンタープロバイダーは、再生可能エネルギーへの投資を引き続き優先すべきだ。再生可能エネルギー投資は、全体的な電力調達の拡大や、顧客における持続可能性目標の達成に役立つ」(グラハム氏)
特に、太陽光発電と風力発電は、環境に大きなメリットをもたらすとともに、LCOE(Levelized Cost Of Electricity:均等化発電原価)も最も低いと、IDCは述べている。LCOEは、発電所の運転期間全体にわたる総発電電力量の平均正味現在コストを反映している。
また、再生可能エネルギーの発電場所またはその近くにデータセンター施設を設置することで、プロバイダーは建設コストと送電に伴う電力ロスの両方を削減できる。これにより、全体的な効率と持続可能性を高める一方、電力網の信頼性問題の解消を通じてレジリエンス(強靭〈きょうじん〉性、回復力)を向上させることができる。
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