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2023年に「実現しない」5つの技術――産業用メタバース、プライベート5Gなど ABI Researchが発表「仮想世界への投資は、現下の経済情勢にそぐわない」

ABI Researchは、期待が高いものの2023年には実現しないと予想される技術トレンドを5つ取り上げて解説した。

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 市場調査会社のABI Researchは2023年1月10日(米国時間)、非常に期待されているものの、2023年には実現しないと予想される技術トレンドを5つ取り上げて解説した。

 この5つの技術トレンドは、産業用メタバース、5Gウェアラブルデバイス、プライベート5G、プリンテッドエレクトロニクス、衛星携帯通信サービスだ。

 ABI Researchは、同日公開した新しいホワイトペーパー「74 Technology Trends That Will - and Will Not - Shape 2023」の中で、2023年に実現する41の技術トレンドと、実現しない33のトレンドを特定している。上に挙げた5つのトレンドは、後者の33のトレンドの中から取り上げられた。

 ABI Researchが2023年に実現しないとみる5つの技術トレンドは、以下の通り。

産業用メタバース

 2023年は、産業や製造業(I&M)の企業がメタバースに多額の投資を行う年にはならない。スタッフが仮想世界でアバターを作成し、課題を解決することもないだろう。仮想世界への投資など、価値の実現への道筋が明確でない投資は、現下の経済情勢にそぐわないからだ。

 I&M企業は、デザイナー、エンジニア、製造チーム間のフィードバックループを提供するデジタルスレッドの構築ツールに投資するだろう。また、企業が業務の最適化を目指す中で、機械、生産ライン、設備を再現するデジタルツインへの投資も継続される見通しだ。

消費者向け5Gウェアラブルデバイス

 ウェアラブルデバイスは携帯通信の恩恵を受け、スマートフォンとのテザリングから解放されるようになる。だが、5Gウェアラブルデバイスは、2023年には登場しない見通しだ。ただし、この分野では、5Gが徐々に進化しているため、何も期待できないわけではない。

 無線技術の標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)は、「Release 17」「Release 18」およびそれ以降の標準仕様で、Reduced Capability(RedCap)New Radio(NR)を導入する予定だ。RedCapは、コストやエネルギーに制約のあるユースケースを持つデバイスに対応する。現在の5G NR製品と比べて、はるかに複雑さが軽減され、安価でバッテリー駆動時間が長く、必要な帯域幅が少ない製品の実現を目的としている。

プライベート5G

 企業向けの重要な5G機能である「URLLC」(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)と「TSN」(Time-Sensitive Networking)は、2023年末から市販のチップセットに搭載され始める。そのため、「Release 16」対応の産業グレードのデバイスは、2024年第1四半期までに大規模に提供されるようになる。

 これに伴い、少なくとも2027年までは、4G LTE(Long Term Evolution)が携帯通信技術の主流であり続けることになる。ABI Researchは5G通信が2027年を転機として、企業の収益に大きく貢献するようになると予想している。

プリンテッドエレクトロニクス

 IoTの最もエキサイティングな成長分野の一つが、プリンテッドエレクトロニクス設計だ。現在、多くの企業が技術やプロトタイプの開発に取り組んでおり、OEM/ODM(Original Design Manufacturer)と印刷会社の提携が発表され始めている。

 プリンテッドIoTでは、従来の印刷会社(NFCやRFIDのラベル/タグプリンタやタグを販売するベンダーなど)は、既存のポートフォリオを超えてビジョンを広げ、生産ラインや設備レベルで、顧客との市場展開の方法を見直す必要がある。だが、市場はまだ初期の段階にあり、2023年には、業界変革は起こらない見通しだ。それでも、2022年には、新しい印刷技術がIoTに何をもたらすかが少し見え始めてきた。

衛星携帯通信サービス

 新興の衛星携帯通信サービス分野では、Apple、Huawei、SpaceX、Globalstar、AST Space Mobile、Lynk Globalなどの企業がサービス展開を加速させている。現段階では、衛星携帯通信サービスは特殊な用途で利用されているが、今後数年で普及が進む可能性がある。2023年とおそらく2024年は、消費者の興味を喚起する取り組みが行われるだろう。

 ABI Researchは、衛星携帯通信を含むNTNモバイル(Non-Terrestrial Network-Mobile:非地上系ネットワークモバイル)分野が、2027年までに680万接続に達すると予想している。

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