企業はどんな生成AIエージェントを作れる? 日本マイクロソフトが解説
「AIエージェント」は曖昧な言葉だ。「自律的」「自動化」と言われても、企業で何ができるのかがイメージしにくい。本記事では、日本マイクロソフトの事例と解説をまとめた。
企業の間で、「RAG(検索拡張生成)」に続き「生成AI(人工知能)エージェント」という言葉がバズワード化している。だが、個人ならまだしも、企業が使うという文脈では、AIエージェントが「どのようなものを指すのか」「何ができるのか」について、具体的なイメージが湧きにくい。日本マイクロソフトは、次のような事例を紹介している。
ソフトバンク
コールセンターでAIエージェントが顧客対応を支援する仕組みを、日本マイクロソフトと共同で開発中。「LLM(大規模言語モデル)自律思考型のシステム」だという。
従来はLLMを使って顧客の意図を理解した後は、固定的なフローが割り当てられてスクリプトが決まり、融通が利かない。これに対し、新システムでは音声認識により、オペレーターと顧客とのやり取りをリアルタイムで取り込む。そして、会話内容に応じてLLMが随時、必要な機能やデータソースを自律的に参照し、回答につなげる。これにより、柔軟で高精度な対応が可能になるという。
トヨタ自動車パワートレーンカンパニー
トヨタ自動車パワートレーンカンパニーでは、開発エンジニアがいつでもAIの専門家に相談できるシステムを開発している。「エンジン」「燃費」「規制」など、9種の“専門家”(「AIエージェント」と呼んでいる)がそれぞれの観点から回答し、これをさらに生成AIがまとめ上げて答える形にしている。これにより、精度が高く、的確なアドバイスが提供できるという。
現在、同システムではユーザーが質問内容に応じ、複数のエージェントを自分で選択している。将来は、質問内容からLLMが適したエージェントを判断し、自動的に選択するようになるという。また、今後「消費者の声エージェント」など、エージェントの種類を増やしていくとしている。
富士通
富士通は、「AIが難易度の高い業務を自律的かつ人と協調して推進できる」AIサービスを発表した。第1弾として「会議エージェント」を発売した。
このエージェントは会議に参加し、他の会議参加者の「売り上げが落ちている」などといった抽象的な発言を受けて、生成AIにデータ分析を指示。グラフを示しながら分析結果を文章で提示する、といったことができる。全てのプロセスは人による命令が不要。自律的に課題解決策を考え、適切なタイミングで人々に明示し、提案するという。
富士通は、生産管理や物流、マーケティングなどの分野にもAIエージェントの活用を広げていくとしている。
ベルシステム24
ベルシステム24は、新たな考え方に基づく生成AI活用コンタクトセンターシステムの開発を始めた。これは人と生成AIがループを作るものという。オペレーターによる応対の通話データから、生成AIがナレッジベースを自動生成(マニュアルやFAQなど、他の関連資料と統合する)。これを活用して生成AIチャットbotが問い合わせに対応する。
結局、企業におけるAIエージェントとは何?
企業における生成AIエージェントについては、さまざまな説明がある。日本マイクロソフトの岡嵜禎氏(執行役員常務クラウド& AI ソリューション事業本部長)は、2024年12月18日に実施した説明会で、「自律性」「目標志向」「高度な推論」を3つの特徴として挙げた。
自律性はユーザーの介入を最小限に抑え、独立して行動すること、目標志向は特定の目標達成に向けて行動すること、高度な推論は複雑な状況を分析し、最適な行動を選択することだという。
また、今後の技術革新で、より高度なAIエージェントを作れるようになってくると岡嵜氏は話した。
第1に、LLMがさらにマルチモーダル化していく。テキストだけでなく、音声、画像、動画といった多様な情報形式を理解して処理できるようになる。これにより、自然で直感的なやり取りができるようになっていく。
第2に、「推論・プランニング能力の向上」がある。 AIエージェントが複雑な問題を解き、最適な行動計画を立案する能力が、今後大幅に向上する。
第3に、「コンテキスト理解の深化」が進む。過去の会話履歴やユーザーの属性、置かれている状況などをよりよく理解できるようになり、対応のパーソナライズ化が進展する。
マイクロソフトのAIエージェント対応は
日本マイクロソフトでは、企業におけるAIエージェント活用を、さまざまなツールで包括的に支援していくという。
まず、Microsoft 365などに組み込まれたAIエージェントとして、「Microsoft SharePoint」のカスタム生成AIエージェント作成機能や通訳エージェントを挙げている。
また、外部サービスと容易に連携できるようにしている。
さらに、カスタムAIエージェントの開発では、「Copilot Studio」と「Azure AI Foundry」を提供している。Copilot Studioは一般ユーザー向けの、ノーコード/ローコードでエージェントを開発できるツール。「Azure AI Foundry」は、プロの開発者が高度なエージェントを開発できる基盤だ。
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