オープンソースAIはどこに向かう? 新たなガバナンス戦略をOSIとOpen Futureが発表:変革のためのビジョンと行動を発表
Open Source InitiativeとOpen Futureは、ホワイトペーパー「オープンソースAIにおけるデータガバナンス:責任ある体系的なアクセスの実現」を発表した。この文書では、AIの根本的課題を解決するためのビジョンや行動が描かれている。
オープンソースを推進する米国の非営利団体Open Source Initiative(OSI)とOpen Futureは、2025年1月23日(米国時間)、ホワイトペーパー「オープンソースAI(人工知能)におけるデータガバナンス:責任ある体系的なアクセスの実現」を発表した。この文書は2024年10月にパリで開催された2日間のワークショップで得られたグローバルな知見を基にまとめられた。
ホワイトペーパー公開に当たり、OSIはAIの根本的課題を解決するためのビジョンや行動を以下のように紹介している。
オープンソースAIの転換点 オープンソースAIはどこへ向かうのか
オープンソースAIの原動力となるデータを責任を持って管理するには、データについての考え方を大きく変える必要がある。データは単に利用する資源ではなく、権利を尊重し公平性を育みながらイノベーションを花開かせることができる集合的な基盤だ。
オープンソースAIは、共有されたデータセットによって成長するが、現在の状況には課題が多い。
- オープン性と透明性:「オープン」と銘打たれたAIモデルの多くは、データの出どころ、ライセンス、使用制限に関する透明性を欠いており、何が真にオープンソースAIを構成するのか混乱を引き起こしている
- データの不足と不公平:インターネット上には膨大な情報があるにもかかわらず、多くのデータセットは質が低く、世界の多様性を表現できていない
- プライバシーへの懸念:個人情報に関する法律や、プライバシーの権利に関する国際人権基準が法域によって異なるため、合法的に共有できないデータもある
- ステークホルダーの代表:AIのエコシステムは、貢献者や影響を受けるコミュニティー、公益団体よりも開発者や企業を優先することが多い
- 環境の持続可能性:AIは資源を大量に消費するため、環境への影響が懸念となる
変革のためのビジョン
今回提示されたビジョンは、公平性、包括性、持続可能性に根差したデータエコシステムをつくるために大きく2つの変革を提案している。
- オープンデータからデータコモンズへ:無制限のデータという概念を超えて、オープン性と全てのステークホルダーの権利とニーズのバランスをとるモデルへ移行する
- ステークホルダーを広げる:コミュニティー、管理者、クリエイターが一体となり、公平なデータ共有を実践するための協力的な枠組みの構築
これらを具体化するため、重点的に取り組むべき6つの分野は以下の通り。
- データの準備
- プリファレンスシグナリングとライセンシング
- データスチュワード/カストディアン
- 環境持続可能性
- 相互利益と報酬
- 政策介入
各重点分野は、データが搾取するのではなく力を与えるとともに、体系的な不平等を強化するのではなく、人間の経験の多様性を反映するような未来を築くための足掛かりとなる。
行動への呼びかけ
この発表が目指すのは、世界中の人々に対して、オープンソースAIにおけるデータの利用や管理方法を再考してもらうことだ。具体的には、以下の行動を求めている。
- オープンデータ、オープンサイエンスから文化機関まで、セクターを超えたコラボレーション
- コミュニティー、特に十分なサービスを受けていない地域のコミュニティーに権限を与え、自分たちのデータがどのように利用されるか形成する
- 特定の文脈やニーズを反映した、小規模でローカライズされたAIモデルを優先し、モノリシックなシステムへの依存を減らす
今回の発表は、オープンソースAIが今後どのように進化していくかを左右する重要な局面だ。世界中の専門家が集めた知見が、公平性、包括性、持続可能性を軸とする共同のビジョンを形作り、AIの未来に対して具体的かつ責任ある指針を示している。これをきっかけに、オープンソースAIにおけるトレーニングデータを巡る議論がさらに深まることが期待される。
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