Cloudera、オンプレミスでAIエージェント構築を支援する2つのサービスを提供開始:「Cloudera Data Services」の新リリースはプライベートAIに主眼
Clouderaは、これまでクラウド環境でのみ提供していた2つのAIサービスをオンプレミス向けに提供開始した。データを自社の管理下に置きながら、安全にAIを活用できる「プライベートAI」の取り組みを支援するという。
複雑な目標を達成するために自律的に行動する「AI(人工知能)エージェント」が業務の自動化やビジネス付加価値創出の手段として注目されている。だが、AIエージェントを実装し、ビジネスで活用する上では、社内のドメイン知識をAIに学習させる「ファインチューニング」や、社内のデータベースを「外部情報」としてAIに参照させる「RAG」(検索拡張生成)など、生成AI技術に関連する取り組みが欠かせない。
こうした背景の下、ファインチューニングやRAGの取り組みを支援するクラウドサービスが複数登場している。だが、機密データを扱う企業や規制業界の場合、セキュリティやデータ主権の課題からその導入に二の足を踏むケースも少なくないだろう。
こうした課題に対し、Clouderaは「あらゆる場所のデータにAIを持ち込む」戦略を鮮明にしている。
プライベートAIの実現をどう支援するのか
2025年8月6日(米国時間)に発表した「Cloudera Data Services」の新リリースでは、企業の「プライペートAI」の構築、活用を支援するため、クラウドのみで提供していた次の2つのサービスをオンプレミス向けに提供開始した。
Cloudera AI Inference Services
NVIDIAの「NIM」マイクロサービスを組み込み、データセンター内で大規模なAIモデルの展開や推論を安全かつ効率的に実現できるという。
Cloudera AI Studios
ローコードのテンプレートを通じて、生成AIアプリケーションやAIエージェントを構築、展開できる。Clouderaによると、AI Studiosでは以下の4つの機能を提供するという。
- RAG Studio:RAGアプリケーションの構築と展開を支援
- Fine Tuning Studio:モデルのファインチューニングを支援
- Synthetic Data Studio:ファインチューニングに使用するための合成データ生成を支援
- Agent Studio:AIエージェント作成を支援
Clouderaの日本リージョナル・バイスプレジデント(RVP)兼カントリーマネジャー(社長執行役員)の山賀裕二氏は「多くの日本企業がAI導入に際し、セキュリティ、データ主権、ガバナンスといった課題に直面している」とした上で「特に、金融、製造、公共分野において、機密性の高いデータを社外に出すことなくAIを活用したいという根強いニーズに応え、企業が自社のファイアウォール内でも、クラウドネイティブの柔軟性とAIのパフォーマンスを実現することが可能になる」と述べている。
クラウドかオンプレミスかという二者択一ではなく、同一サービスを両環境で利用できるハイブリッドなアプローチは、セキュリティやデータ主権の懸念を持つ企業にとって、選択肢の幅を広げる重要な動きだといえるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
生成AI活用は「データの壁」に阻まれる 経営層が知るべき、デジタル庁の「データガバナンスガイドライン」とは
多くの企業が生成AI活用に意欲を示す一方、「データの品質」が成果を妨げる最大の要因となっている。では、生成AIに注目する企業の経営層は何に取り組むべきなのか。そこで役立つのが、デジタル庁が2024年6月に公開した「データガバナンスガイドライン」だ。AIエージェント元年に考える、これからのITインフラやシステム戦略とは――調査から読み解く3つのAIエージェント活用フェーズと、欠かせない「仕組み」
Clouderaが実施した調査によるとグローバルで57%、日本でも43%の企業が過去2年以内にAIエージェントの導入を開始しており、2025年はまさに「AIエージェント元年」と呼べる年になります。ユーザーの意図を理解し自律的に推論、行動するAIエージェントは、既存のワークフローを再定義し、ITインフラやシステム戦略の抜本的な見直しを迫るものとなるでしょう。本稿では、AIエージェント導入のステップを3つのフェーズに分けて解説するとともに、導入を成功に導くためのインフラ、セキュリティ、データガバナンスの在り方を考えます。「Geminiアプリ」「Gemini CLI」「Google AI Studio」――Googleが示す、AIツールの選び方
Stack Overflowの調査によると、プロの開発者の半数は日常的にAIツールを利用しているという。多様なAIツールが各社から登場する中、開発者向けAIツールをどう選ぶべきなのか。Googleは公式ブログで同社のAIツールの選び方を「チートシート」と題して解説した。