税込価格1万円は税抜だといくら? 面倒な逆算を一瞬で終わらせるExcelの便利機能:Tech TIPS
「商品の最終的な税込価格を1万円ぴったりにしたいけど、税抜価格は何円にすればいいんだろう?」と、こんなふうに目標とする結果から元の数値を逆算したいと思ったことはないだろうか。こうした逆算は意外と面倒だが、Excelの「ゴールシーク」機能を使えば簡単に計算できる。その使い方を紹介しよう。
対象:Excel 2016/2019/2021/2024/365

面倒な逆算を一瞬で終わらせるExcelの便利機能
「商品の最終的な税込価格を1万円ぴったりにしたいけど、税抜価格は何円にすればいいんだろう?」と、こんなふうに目標とする結果から元の数値を逆算したいと思ったことはないだろうか。こうした逆算は意外と面倒だが、Excelの「ゴールシーク」機能を使えば簡単に計算できる。その使い方を紹介しよう。
「商品の最終的な税込価格を1万円ぴったりにしたいけど、税抜価格は何円にすればいいんだろう?」と、こんなふうに目標とする結果から元の数値を逆算したいと思ったことはないだろうか。少しずつ値を変えながら、手入力で数値を調整するのはとても面倒だ。そのような場合に活躍するのが、「Microsoft Excel(エクセル)」の「ゴールシーク」機能である。
ゴールシークを使うと、数式の結果が特定の目標値になるように、特定のセルの値を自動で調整してくれる。複雑な計算はExcelに任せて、作業効率を大幅にアップさせよう。本Tech TIPSでは、このゴールシーク機能の使い方を解説する。
Excelの「ゴールシーク」機能とは
ゴールシークは、ExcelのWhat-If分析ツールの一つで、数式の結果(目標値)から、その結果を導き出すために必要な入力値を逆算する機能だ。
この機能は以下のような場面で使うとよい。
- 税込価格から税抜価格を計算する
- 売上目標達成のために必要な販売数量を算出する
- 目標利益を達成するための原価を計算する
- ローンの毎月返済額から借入可能額や金利を逆算する
これらの計算は、ChatGPTなどの生成AI(人工知能)サービスを使って計算してもらう、という人も多いかもしれない。しかし、ゴールシーク機能はExcelの標準機能であり、使い方を覚えると、生成AIを使うよりも手軽に計算できる。
使ってみよう! ゴールシークの基本的な使い方
ここでは「税込価格を1万円にするための税抜価格」を求める手順を例にゴールシーク機能の基本的な使い方を解説しよう。
ステップ1:数式を入力した表を準備する
逆算の元となる数式が入力された表を用意する。ここでは「A2」セルに税抜価格、「B2」セルに消費税(10%)を計算する数式「=A2*0.1」、「C2」セルに税込価格の数式「=A2+B2」をそれぞれ入力する。この時点では、「A2」セルに入力する税抜価格は仮の数値で構わない。
ステップ2:ゴールシークを起動する
[データ]タブを選択し、[予測]グループにある[What-if分析]アイコンをクリックして、プルダウンリストから[ゴールシーク]を選択する。
ステップ3:ゴールシークのダイアログボックスを設定する
[ゴールシーク]ダイアログが表示されるので、各入力ボックスに下表の値を設定する。
入力項目 | 入力する値 | 入力例 |
---|---|---|
数値入力セル | 結果が入力されているセル番号 | C2 |
目標値 | 達成したい目標の数値 | 10,000 |
変化させるセル | 調整したい元の値のセル | A2 |
[ゴールシーク]ダイアログに入力する値 |
設定が完了したら[OK]ボタンをクリックする。
ステップ4:逆算結果を確認する
[OK]ボタンをクリックすると、Excelが自動で「A2」セルに入力すべき値を計算してくれる。計算が完了すると、[ゴールシーク]ダイアログが表示され、「A2」セルの値が「9091」に、「C2」セルの値が目標の「10,000」に変わっていることが確認できる。この結果が正しければ、[OK]ボタンをクリックすると、値が確定される。元の値に戻したい場合は、[キャンセル]ボタンをクリックすればよい。

ステップ1:数式を入力した表を準備する
逆算の元となる数式が入力された表を用意する。ここでは「A2」セルに税抜価格、「B2」セルに消費税(10%)を計算する数式「=A2*0.1」、「C2」セルに税込価格の数式「=A2+B2」をそれぞれ入力する。この時点では、「A2」セルに入力する税込価格は仮の数値で構わない。

ステップ4:逆算結果を確認する(1)
Excelが自動で「A2」セルに入力すべき値を計算してくれる。計算が完了すると、[ゴールシーク]ダイアログが表示されて計算結果が表に入力された状態となる。計算結果が合っていることを確認して、[OK]ボタンをクリックする。
ゴールシークでローン金利を計算してみよう
新しい事業を展開する、クルマや家を購入するといった場面において、お金を借りなければならないケースもあるだろう。このような場合、借りたいお金、ローンを返済するための期間(月数)、毎月の返済額から、どの程度の金利で借りれば条件を満たせるのかを計算しておくと、銀行などが提示した金利で返済可能なのかどうかの判断が可能になる。
この場合、返済額の計算にはローンの支払額を算出するPMT関数を使用する。
=PMT(利率, 期間, 現在価値, [将来価値], [支払期日])
「将来価値」は、最後の支払いを行った後に残る現金の収支を指定する。「支払期日」は「0」または省略で期末、「1」で期初、というように支払いが実施される時期を指定する。どちらも省略可能だ。
ステップ1:数式を入力した表を準備する
税抜価格を計算したのと同様、逆算の元となる数式が入力された表を用意する。ここでは「A2」セルにローン額、「B2」セルに期間(月数)、「C2」セルに金利、「D2」セルに返済額の数式「=PMT(C2/12,B2,A2)」を入力する。この時点では、「C2」セルの金利は入力しなくてよい(「0」でよい)。
ステップ2:ゴールシークを起動する
[データ]タブを選択し、[予測]グループにある[What-if分析]アイコンをクリックして、プルダウンリストから[ゴールシーク]を選択する。
ステップ3:ゴールシークのダイアログボックスを設定する
[ゴールシーク]ダイアログが表示されるので、各入力ボックスに下表の値を設定する。
入力項目 | 入力する値 | 入力例 |
---|---|---|
数値入力セル | 結果が入力されているセル番号 | D2 |
目標値 | 達成したい目標の数値 | -60,000 |
変化させるセル | 調整したい元の値のセル | C2 |
目標値の返済額は、返済を表すため負の数値とする。
設定が完了したら[OK]ボタンをクリックする。
ステップ4:逆算結果を確認する
[OK]ボタンをクリックすると、Excelが自動で「C2」セルに入力すべき金利の値を計算してくれる。計算が完了すると、[ゴールシーク]ダイアログが表示され、「C2」セルの値が「0.050648(約5%)」に、「D2」セルの値が目標の「-60,000」に変わっていることが確認できる。この結果が正しければ、[OK]ボタンをクリックすると、値が確定される。元の値に戻したい場合は、[キャンセル]ボタンをクリックすればよい。

ゴールシークでローン金利を計算する(1)
逆算の元となる数式が入力された表を用意する。ここでは「A2」セルにローン額、「B2」セルに期間(月数)、「C2」セルに金利、「D2」セルに毎月の返済額の数式「=PMT(C2/12,B2,A2)」を入力する。この時点では、「C2」セルに入力する金利は仮の数値で構わない。

ゴールシークでローン金利を計算する(3)
Excelが自動で返済額が「-60,000」となる金利を計算してくれる。計算が完了すると、[ゴールシーク]ダイアログが表示されて計算結果が表に入力された状態となる。計算結果が合っていることを確認して、[OK]ボタンをクリックする。
この結果から金利が5%以下であれば、十分に支払いが可能であることが分かる。銀行などの金融機関とは、金利が5%以下になるよう交渉すればよい。
このようにExcelのゴールシーク機能を使えば、手作業で何度も調整していた逆算作業を一瞬で完了させられる。操作も簡単で、一度覚えてしまえばさまざまな場面で応用が可能だろう。
データ分析やシミュレーションの際に強力なツールとなるので、この機会にマスターしておくとよい。
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