「情シス兼任」は仕方がない、でいいのか? 11.8%は「対策できていない」現実と対策:「情シスは専任担当いない」12.5%
企業規模によって変わる専任不在対策。中小は兼務継続、大手は外部活用、生成AI活用。
副業人材マッチングサービスを運営する、パーソルイノベーション lotsful Companyは2025年10月29日、20〜40代の会社員660人を対象に「専任不在ポジションにおける副業活用実態調査」を実施したと発表した。調査では、営業・情報システム・デザインといった企業の基盤領域で専任担当が不在のケースが多く、副業人材の活用が成果につながっている実態が明らかになった。
専任担当がいないポジションは営業、情シス、デザイン その背景は?
専任担当がいないポジションとして最も多かったのは「営業」(14.8%)で、次いで「情報システム」(12.5%)、「UI/UX・デザイン」(12.5%)が続いた。特に従業員規模500人以上の企業でも経理やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などに専任不在が見られ、業務量の変動や専門人材の採用難から、フルタイム配置が難しい構造的な課題が浮き彫りとなった。
専任不在の背景には「採用が難しい」(23.9%)、「業務量が少ない」(21.8%)、「採用優先度が低い」(21.8%)といった要因が挙げられた。これにより、重要業務の「後回し」や「判断遅れ」「属人化」といった“静かな機会損失”が生じていると分析している。
企業規模によって変わる専任不在対策 中小は兼務継続、大手は外部活用
専任不在への対策を尋ねたところ、全体では「社員の兼務を継続」(30.3%)が最多で、次いで「正社員採用を検討している/した」(27.9%)、「内部で引き継ぎやマニュアル整備を進めている」(27.5%)が挙がる一方で、11.8%は「特に対策できていない」と回答した。
企業規模別に見ると、従業員10人以下の企業では「社員の兼務を継続」(83.3%)が突出して最多となり、社内のリソースで人材不足をカバーしている。対照的に1001人以上の大企業では「外部コンサル/業務委託を活用している」(35.4%)が最多で、「正社員採用の検討」(32.9%)や「生成AIの活用」(32.9%)、「副業・兼業人材の活用」(31.6%)が続いた。
中小企業は社内の限られた予算・人員で対応を続け、大企業は外部リソースや新しい手法を取り入れて補完するなど、企業規模によって対策が二極化している実態が明らかになった。
副業・兼業人材の活用割合1位は情シス、8割が実感した「成果」の中身は?
一方で、副業・兼業人材の活用割合は、「情報システム」(25.3%)、「UI/UX・デザイン」(24.7%)、「マーケティング」(23.0%)が多く、専門スキルの補完だけでなく、外部知見を取り入れる戦略的リソースとして副業が機能している。大企業では外部コンサルや副業人材を活用する傾向が強く、特に「採用広報」職種で専任不在を補う動きが目立った。
副業人材を活用した企業では82.7%が「成果を実感した」と回答した。具体的には「業務推進のスピードアップ」(38.5%)、「停滞業務の前進」(32.2%)、「業務の可視化・仕組み化」(31.0%)が上位に挙がり、副業人材の参画が業務効率化やプロセス標準化に寄与していることが分かった。
lotsful Company代表の田中みどり氏は、「副業人材は単なる人員補完ではなく、事業を加速させる戦略的パートナーになりつつある」とコメント。経営者が兼務しがちな広報・営業戦略・DX推進領域でも、副業人材が成果を上げている事例が多いとし、「知見を組織に残す仕組みづくりが成功の鍵」と強調した。
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