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若手よりベテラン開発者がAIを使いこなせる理由 これから求められる3つのスキルとはCursor利用者8万6665人のデータから明らかに

AIコードエディタ「Cursor」を開発するAnysphereは、コーディングエージェントが開発者の生産性やコードの品質に与える影響を調査した結果を明らかにした。

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 AI(人工知能)コードエディタ「Cursor」を開発するAnysphereは2025年11月11日(米国時間)、公式ブログでコーディングエージェントが生産性に与える影響を調査した結果を発表した。

 同調査は、シカゴ大学の助教であるスプロティーム・サルカー氏が、1000の組織におけるCursorユーザー8万6665人のデータを対象に、CursorのAgent機能が、開発者の生産性や行動にどのような影響を与えているのか分析したものだ。

若手よりベテラン開発者がAIを使いこなせる理由

 ユーザーがエージェントにリクエストを送る頻度と、エージェントが生成したコード変更を採用する頻度を分析した結果、ジュニア開発者は従来型のコード補完機能「Tab」(Cursor Tab)を受け入れやすく、シニア開発者はエージェントによる自律的なコード変更を受け入れやすい傾向にあった。開発経験の年数が一定(約7年弱)増えるにつれて、平均と比べてエージェントの受け入れ率が約6%ずつ増加したという。

 Anysphereは「『経験の浅い開発者ほどエージェントを多用するだろう』と予想していたが、分析では逆の結果となった。経験豊富な開発者はコンテキスト管理やカスタムルールの活用がうまく、生成コードを評価できる自信もあるため、エージェントによるコード変更を受け入れる姿勢が強まっている」と分析している。

経験豊富な開発者ほどエージェント生成コードを採用しやすい(提供:Cursor)
経験豊富な開発者ほどエージェント生成コードを採用しやすい(提供:Cursor)

プルリクエストのマージ数が39%増、差し戻し率に有意差はない

 調査では、生産性と品質を測るため、エージェント機能がデフォルトモードになる前からCursorを導入していた企業と、Cursorを利用していない企業を比較した。

 その結果、Cursor利用企業ではマージされたプルリクエストの総数が39%増加していた。品質面などの他の指標についてはプルリクエストのリバート(差し戻し)率に有意な変化はなく、バグ修正率はわずかに低下した。マージされたプルリクエスト当たりの平均編集行数や変更ファイル数にも、有意な違いはなかったという。

エージェント機能のリリース後、プルリクエストのマージ数が39%増加した(提供:Cursor)
エージェント機能のリリース後、プルリクエストのマージ数が39%増加した(提供:Cursor)

61%が実装依頼、経験豊富な開発者は「計画」から開始

 1000人のユーザーを対象としたリクエスト内容の分析からは、開発者がエージェントに期待するアクションが明らかになった。

 開発者がエージェントに期待するアクションは主に「コード実装」「コードやエラーの説明」「計画」の3つだ。全体の約61%はコード生成を目的とした実装依頼で、経験豊富な開発者ほど、いきなりコードを書かせず、事前に行動を計画する傾向が強かったという。

エージェントとの会話開始リクエストの内容内訳を示した円グラフ。実装依頼が全体の約61%を占めた(提供:Cursor)
エージェントとの会話開始リクエストの内容内訳を示した円グラフ。実装依頼が全体の約61%を占めた(提供:Cursor)

 サルカー氏は論文の中で「開発者は今後、AIに対して自然言語で明確な指示を出す『明確さ』、複雑な事象を構造化する『抽象化』、生成されたコードが正しいかどうかを見極める『評価』の3つのスキルが重要になる」と指摘した上で、「経験豊富な開発者がエージェントを効果的に活用できているのは、これまでのキャリアで培ったコンテキスト理解やレビュー経験により、3つのスキルに長けているためだ」と考察している。

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