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AIを生かし、変革を支えるデータプラットフォームの在り方とはトラディショナルな日本企業がデータドリブン経営をできた理由

DX推進の成否を分かつのは、データ活用とそれを支えるプラットフォームだ。スピーディーな変革が困難とされる大企業の中でも、コーポレート・トランスフォーメーションを強力に進め時価総額を10倍にしたNEC。「クライアントゼロ」戦略の下、データドリブン経営を実現する変革へのかじ切りに成功した同社と、データストリーミングのパイオニアのConfluentに、DXの鍵となるデータプラットフォームの在り方を探るため話を聞いた。

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 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増加している。しかし多くの場合、変革を支えるデータ活用が「思うように進まない」と経営やリーダー層が悩んでいるのが現状だ。

 こうした中、改革やそのスピードアップが困難とされる大企業において、DXへのかじ切りに成功した例がある。自社をゼロ番目のクライアントと位置付け、新しいテクノロジーを実践することで変革を推進し、そこで得た生きた経験や価値を顧客に提供する「クライアントゼロ」戦略を進めるNECだ。

 変革に成功する企業、失敗する企業は何が違うのか――。本稿はNECの中田俊彦氏とConfluent Japanの石井晃一氏の対談から、DX推進の課題としてほぼ必ず挙がるデータ活用と、それを支えるデータプラットフォームの在り方を探る。

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(左から)Confluent Japanの石井晃一氏(カントリーマネージャー)、NECの中田俊彦氏(コーポレート IT システム部門長 兼 経営システム統括部長)

データドリブン経営への転換、全員が同じリアルタイムデータを基に行動

 2000年以降、日本市場は厳しい環境に置かれ、NECも例外ではなく苦しい時代を乗り越えてきた。同社は2012年ごろから本格的なコーポレート・トランスフォーメーションに着手。変革の鍵となったのは、IT基盤、プロセスやデータ、組織を三位一体で変えるアプローチだ。

 「当時の経営幹部が何を目指し、どのような会社になるべきかと考えた際、企業文化から変えていかなければならないと気付き、強い危機感を持って変革を推進しました」と中田氏は振り返る。

 具体的には、IT全体の最適化とデータ価値の最大化を目的に、NECグループ全体のITシステムを「One NEC System」へと仮想的に統合することを目指した。

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高品質なデータの収集を実現する経営基盤へ進化(提供:NEC)《クリックで拡大》

 変革の中核は、Confluentの「データストリーミングプラットフォーム」(DSP)も活用したデータプラットフォームによる「データドリブン経営」だ。企業運営に関わる情報を可視化し、事実に基づいて未来志向で行動するマネジメントへの転換を図り、データをリアルタイムに収集したダッシュボード「経営コックピット」で可視化した。

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経営層から現場スタッフまで同じデータを共有し、可視化する「経営コックピット」(提供:NEC)《クリックで拡大》

 各CxO(最高責任者レベルの経営幹部)が必要とするデータを可視化した90種類以上のダッシュボードには、誰もが自由にアクセスできる。全員が同じデータにリアルタイムで触れられることで、分析や経営判断、意思決定、注力商材、エンゲージメント、プライスマネジメントなどを理解し、アクションに移せる。

 「データで見えていることを、業務としてアクションにつなげていく、という文化が組織全体に組み込まれることが重要です。これは大変な取り組みで、トライアンドエラーを積み重ねて、ようやく今の形になりました」(中田氏)

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 石井氏は、NECの例はConfluentのコンセプトにマッチしていると補足する。「DSPの中核技術『Apache Kafka』は、単にリアルタイムにデータを処理する技術ではなく、“リアルタイムにアクションを起こす”ことを目的に開発されました。まさに経営コックピットのように、データに基づいた迅速な意思決定と行動を組織全体で促す活用法こそ、真価を発揮するものです」

トライアンドエラーで学んだデータプラットフォーム構築

 NECは現在、データドリブン経営を支える基盤として「One NEC Data プラットフォーム」を構築・運用している。そして、ビジネスプロセスをエンドツーエンドで統制し、データでつなぐ経営ファイナンスプロセス刷新プロジェクト(KFP)を推進。価格適正化、勝ちパターンの展開、アカウント戦略、商品戦略、サービスの価値向上など、商談開始からオペレーションまで全てのプロセスを可視化している。案件ごとの利益管理を徹底した結果、GP(粗利)率が大幅に上昇し、NECの時価総額も2017年から約10倍に向上した。

 だが、この成功に至るまで順風満帆だったわけではない。

 2018年、オンプレミスでデータプラットフォームを構築しようとしたが失敗に終わった。オンプレミスシステムにデータを集めるだけでも困難な上に、各部門との調整もうまくいかないことが多かった。現場の要望を聞いて反映したつもりでも、「思ったものと違う」と言われることの繰り返し。最初から大きなデータ基盤を作っていくアプローチでは構築が難しいと考え、「小さな成功モデルを積み重ねる方針」に転換した。

 きっかけは2020年、クラウドネイティブな技術が一般化したことだ。クラウドであれば、必要な領域から取り組みを始めて、効果があったら段階的に拡大できる。小さな成功を重ねるというアプローチにマッチしていた。

 「データマネジメントオフィス」という組織をCIO(最高情報責任者)配下に設置し、データ活用を全社的なCoE(Center of Excellence)でドライブする体制を整えた。経営陣がオーナーシップを持ったKFPのような旗艦プロジェクトを進め、成功事例を横展開する。テクノロジーと枠組みがそろったことで、データ活用が進んでいった。

リアルタイムデータ連携がもたらした価値

 NECは、国内外のクラウドやオンプレミスに散在するデータを迅速に一元管理する方法として、ETL(Extract、Transform、Load)など仮想的に集める方式とリアルタイムにつなぐ方式を採った。このリアルタイムにつなげる部分で、ConfluentのDSPを採用した。

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「One NEC Data プラットフォーム」のアーキテクチャ(提供:NEC)《クリックで拡大》

 「数多くのサービスと疎結合でつながるというデータパイプラインの特性は重要です。特にConfluentは、データストリーミング領域のフロントランナーとして強力な製品を提供しています。この優れた仕組みをさまざまなものと組み合わせることで、エコシステムを構築できると考えました」(中田氏)

 中田氏は、Confluentの活用事例として2つを挙げる。1つ目は基幹系システム。NECにはオンプレミス、クラウドサービスなど複数のITインフラが存在し、データ連携には個々のシステムでアドオン開発が必要となるため、開発期間の長期化が課題となっていた。Confluent採用後は、従来2カ月かかっていたデータをつなぐ開発リードタイムが、わずか2週間へと大幅に短縮された。

 2つ目は運用の領域。特に重要な数百システムの運用を改革し、属人性を廃してデジタルで可視化する“運用DX”をNECは推進しており、Confluentの活用を進めている。「Confluentはクラウドだけでなく、オンプレミスシステムなどをつなぐための多様なコネクターを提供しています。Confluentで必要なデータをリアルタイムに処理して運用監視基盤に取り込むことで、障害対応の効率化や初動の迅速化に効果を発揮します」(中田氏)

 石井氏はDSPのより汎用(はんよう)的な活用例を紹介する。「基幹系システムなどがどんどんクラウド化されて、日次バッチでつないでいたものがリアルタイムにデータパイプラインでつながるようになってきています。そうしたさらに汎用的なニーズへの解としても、DSPを活用していただいています」

AI時代を支える正しいデータのための基盤

 リアルタイムデータの利点を生かしているNECだが、石井氏は「活用領域はまだ残されているのではないか」と分析している。その一つがAI(人工知能)だ。

 NECはAIを新たな産業革命と捉え、NEC自身を「AIネイティブカンパニー」とする取り組みを進めている。AIが労働力となり、人にとってのパートナーや分身にもなっていく大きな変革の中で、NECはAIエージェント活用を社長直轄のプロジェクトとして推進。経営マネジメント、営業、HR(ヒューマンリソース)、セキュリティ、リスク、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、ITといった7つの領域で取り組みを積極的に進めている。そうした中で、DSPはどのような役割を果たすのか。

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AIネイティブカンパニーを実現するAI Native Platformの概要(提供:NEC)《クリックで拡大》

 「プロセスや組織を横断的にAIでつなげられるようになれば、個人作業の効率化にとどまらず業務や一連のプロセス全体を自動化できるようになります。自動化されたプラットフォームの中で、データ同士、システム同士をつなぐDSPのような仕組みは、より重要な要素になるでしょう」(中田氏)

 石井氏は、AI活用におけるデータの重要性を強調する。「AIは、前提として“正しいデータがある”ことで成り立っており、データの正しさには鮮度、すなわちリアルタイム性も大きく関わります。正しいデータを届けられるという点においてDSPは大きく貢献し、AI活用の最大化ができます」

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“やってみる”ことから始まる変革

 中田氏はデータ活用に悩む企業について「まずは試してほしい」とアドバイスする。「当社のような組織で『データを全てきれいにしてからやりましょう』と言っていたら、永遠に何もできませんでした。『今あるもので何ができるのか、まずはやってみる』というクイックウィンの考え方が重要です。成功したら、次は何に取り組むか、誰を巻き込むか、どうすれば継続できるかを考えていくのが、データ活用の肝だと思います」

 経営コックピットも、あらゆるデータがリアルタイムにつながっているわけではない。バッチ処理で投入されていたり、手作業の入力が残っていたり、毎月1回のみ更新されるデータもある。しかし、ある時点における最新の状態を示すことこそが、次のアクションにつながる一歩だ。

 最後に両氏は、日本企業のDX推進にエールを送った。

 「Confluentはクラウドネイティブだからこそ、クイックスタート、クイックアクション、クイックウィンが可能なソリューションです。小さく始めて、行動を促し、効果を確認しながら拡大する。NECさまのように、技術と体制の整備を両輪で進めて、変革を加速することが重要です」(石井氏)

 「NECはモノを製造してサービスも提供する多様な面を持つ会社であり、そこには日本企業の課題が凝縮していると言っても過言ではありません。課題をどの順番でどのように解決し、どんな目標に向かっていくべきかと考える中で、データがリアルタイムかつ手軽につながる仕組みは大きな武器になりました。他社の変革の参考にしていただければ幸いです」(中田氏)

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提供:Confluent Japan合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2026年1月25日

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