「Amazon S3がこれほどメジャーになる」なんて――20年前、AWS自身でさえ想像できなかった?:クラウドサービス開始からの軌跡を振り返り
Amazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon S3」は、リリースから20年が経過した。AWSは20年の歩みと今後の展望をまとめたブログ記事を公開した。
Amazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)は、リリースから20年が経った。同社は2026年3月13日(米国時間、以下同じ)、リリースから20年を契機として、これまでの歩みと今後の展望をまとめたブログ記事を公開した。
2006年3月14日、Amazon S3のサービス開始はひっそりとしたものだったが、同サービスはその後、クラウドストレージ業界全体の方向性を決定付ける存在となった。リリース時の告知は、わずか1段落の控えめな説明を添えたもので、以下のような点が強調されていた。
- インターネット向けのストレージサービス
- WebサービスのシンプルなUI(ユーザーインタフェース)
- 拡張性が高く低コストなストレージインフラ
この発表が業界全体に大きな影響を与えることになるとは、誰も予想していなかったとAWSはブログで振り返っている。
「Amazon S3」は20年でどう変わったのか
Amazon S3はリリース当初、3つのデータセンターにまたがる15ラック、約400台のストレージノードで構成されており、合計で約1P(ペタ)Bの容量と15Gbpsのネットワーク帯域を提供していた。最大オブジェクトサイズは5GBで、当初の料金は1GB当たり15セントだった。
2026年現在、Amazon S3は39のリージョン(地理的に分離されたデータセンター群)にまたがる123のアベイラビリティーゾーン(独立した障害分離単位)で、数百E(エクサ)B規模のデータを扱っている。保存されているオブジェクト数は500兆個を超え、世界中で毎秒2億件超のリクエストを処理している。最大オブジェクトサイズは5GBから50TBへと拡大し、約1万倍に増加した。
数千万台に及ぶストレージドライブを全て積み重ねると、国際宇宙ステーションまで届き、ほぼ往復できるほどの高さになるという。
料金に関しては、2026年現在では1GB当たり約2セントと、2006年のサービス開始時と比較して約85%の値下がりしている他、ストレージ階層を自動最適化する機能「Amazon S3 Intelligent-Tiering」の活用により、顧客全体で累計60億ドル超のストレージコスト削減が達成されていると同社は強調している。
Amazon S3の5つの基本原則と、大規模運用を支えるエンジニアリング
Amazon S3の基本原則は、リリース当初から2026年現在まで変わっていないという。Amazon S3の中核として導入されたのは、データをオブジェクトとして保存する「PUT」(アップロード処理)と、後からそれを取り出すための「GET」(ダウンロード処理)という2つのシンプルな基本操作だ。
サービス開始当初から、Amazon S3は以下の5つの基本原則を掲げた。
- セキュリティ
- 顧客のデータはデフォルトで保護されている
- 耐久性
- イレブンナイン(99.999999999%)を実現するように設計され、データ損失が発生しない(ロスレス)運用を目指している
- 可用性
- 障害は常に発生し得るという前提の下、あらゆるレイヤー(システムの階層)に可用性が組み込まれている
- パフォーマンス
- 事実上あらゆる規模のデータを、性能を損なうことなく保存・取得できるよう最適化されている
- 弾力性
- データ量の増減に応じてシステムが自動的に拡張・縮小し、手動での運用介入を不要にする
エンジニアリングの技術革新
AWSは2026年現在のAmazon S3のサービス規模を支える土台として、エンジニアリングにおける幾つかの技術革新を紹介している。
- 耐久性の確保
- サーバ群全体で全てのデータを継続的に検査するマイクロサービス群が稼働しており、劣化の兆候を検出した時点で自動的に修復処理をトリガー(起動)する
- 形式手法の活用
- 本番環境において、自動推論を用いてコードの正確性を数学的に検証している。インデックスサブシステムにコードをチェックインする際に自動証明が実行され、データの一貫性が確認される
- Rustへの移行
- 過去8年間にわたり、Amazon S3のリクエストパス(リクエスト処理経路)の中でも特に性能が重要なコードを、プログラミング言語「Rust」で段階的に書き換えてきた。Rustの型システムとメモリ安全性の保証により、コンパイル時に特定の種類のバグをまとめて排除できる
- スケールメリットを実現する設計
- Amazon S3は規模が拡大するほどワークロード(処理負荷)間の相関が低下し、その結果として全てのユーザーにとって信頼性が向上するよう設計されている
近年の注目すべき進化
近年の注目すべきリリースとして、同社は以下を挙げている。
- Amazon S3 Tables
- 「Apache Iceberg」テーブルのフルマネージドサービス。自動メンテナンスによってクエリ効率を最適化し、ストレージコストを継続的に削減
- Amazon S3 Vectors
- セマンティック検索や「RAG」(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)のためのネイティブベクトルストレージ。1インデックス当たり最大20億ベクトルをサポートし、クエリレイテンシは100ミリ秒未満
- Amazon S3 Metadata
- データの即時検出を可能にする一元化されたメタデータ機能。大規模バケットを再帰的にリストアップする必要がなくなり、大規模データレイクにおけるインサイト取得時間を大幅に短縮
「1PBから数百EBへ」「1GB当たり15セントから2セントへ」「シンプルなオブジェクトストレージからAIと分析の基盤へ」――このような変革の中にあっても、セキュリティ、耐久性、可用性、パフォーマンス、伸縮性という5つの基本原則は変わっていないと同社はブログで強調した。
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