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「MEGURI2040」に見る、船舶自動化「認知・判断・制御・監視」のアーキテクチャ設計「AI船長」の誤解を解く(2/3 ページ)

船員の高齢化と人手不足に直面する内航海運。日本財団の「MEGURI2040」は、この課題に船舶の自動運航技術で挑む。単なる無人化ではなく、認知・判断・制御・監視を統合したシステム構築の本質とは。ミッションクリティカルな社会インフラを自律化する、究極のシステムアーキテクチャに迫る。

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自動運航船は「AI船長」ではない

 では、自動運航船はどのような仕組みで船を動かすのか。

 自動運航船という言葉からは、AIが船長の代わりをして、船を自動で走らせる姿を想像するかもしれない。しかし実際の自動運航技術は、単体のAIや1つの装置で成り立つものではない。周囲を認知するセンサー、航路や避航動作を判断するシステム、舵や推進器を制御する操船系、さらに陸上から運航を見守る支援機能を組み合わせた統合システムだ。


離島航路船「おりんぴあどりーむせと」に搭載した自動運航システムの技術要素。センサーで周囲を監視し、プランナーが避航ルートを計画、APU(行動計画ユニット)がプランナーが導きだした避航ルートの安全性を評価し、DTCが操船、CIMが自動航行の可否を判断する

 まず必要になるのが、船の周囲で何が起きているかを把握する機能である。船舶では、レーダー、AIS、カメラ、GNSS(衛星測位システム)、電子海図など、複数の情報源を使って周辺状況を認識する。これは、ITシステムでいえば、さまざまなログやメトリクス、外部データを集めて状態を把握する監視基盤に近い。単一の情報だけでは判断できないため、複数のデータを組み合わせて、他船、障害物、航路、気象海象などを読み取る必要がある。


新造内航コンテナ船「げんぶ」の船上に搭載されたEIZO製カメラユニット。周辺状況を視覚情報として取得し、レーダーやAISなどの航海情報と組み合わせて自動運航システムの認知機能を支える

 次に、その情報を基に「どのように航行するか」を決める。ここでは、プランナーと呼ばれる機能が重要になる。プランナーは、目的地までの航路や、他船を避けるための避航ルートを計画する。単に最短経路を選べばよいわけではない。海上交通のルール、船の大きさや旋回性能、周囲の船舶の動き、風や潮流などを考慮し、安全な航路を導き出す必要がある。

 ただし、計画された航路をそのまま実行すればよいわけでもない。その航路が本当に安全かどうかを評価する機能も必要になる。MEGURI2040の実証船では、APUと呼ばれる安全性評価の仕組みや、自動航行の可否を判断するCIMのような機能が組み込まれている。IT運用に置き換えるなら、自動復旧スクリプトを実行する前に、影響範囲やシステム状態を確認し、本当に実行してよいかを判断するレイヤーに近い。

 判断された航路は、操船系に渡される。ここで舵、主機、スラスターなどを制御し、実際に船体を動かす。前述のように、船は即座に止まることも、瞬時に向きを変えることもできない。大きな慣性を持つ船体を、風や潮流の影響を受けながら動かすため、制御には高い精度が求められる。


「おりんぴあどりーむせと」の船内に並ぶ自動運航システムの構成モジュール。左から操船制御を担うDTC、避航ルートを計画するプランナー、航路の安全性を評価するAPUなどを確認できる

「げんぶ」に搭載した自動避航プログラム「ARS」の表示画面。周囲の船舶や障害物の動きを踏まえて避航ルートを計画し、自動運航船の判断機能を支える。自動運航では、システムが立案した航路計画の安全性を評価した上で操船制御を実行する

 さらに、自動運航船は船上だけで完結しない。陸上支援センターでは、航行状況、機関状態、気象、システム異常などを監視し、必要に応じて船を支援する。これは、遠隔操船室というより、船舶版の運用監視基盤に近い。複数の船舶を見守り、異常時には人間が状況を確認し、適切な介入を行うための仕組みだ。


MEGURI2040で整備した陸上支援センターの構成。常設型に加え、災害時などに移動して運用できる移動型も用意し、衛星通信などを介して複数の自動運航船を遠隔から監視・支援する

 つまり、自動運航船の本質は「AI船長」ではない。認知、判断、制御、監視、そして人間の介入点をどう設計するかにある。船を自動で動かす技術であると同時に、止められない社会インフラを安全に運用し続けるためのアーキテクチャでもある。

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