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竹中工務店、sXGP(プライベート4G)で「タワークレーン作業向け通話システム」を開発――「手作り感」のある工夫されたネットワーク羽ばたけ!ネットワークエンジニア(102)

竹中工務店は2026年5月26日、プライベート4Gの規格である「sXGP」を用いたタワークレーン作業向け通話システムを開発したと発表した。

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 建設現場ではさまざまな無線技術を使った通信システムが使われている。今回取り上げるのは竹中工務店が日本電気通信システムと共同で開発した、プライベート4G(LTE)規格「sXGP」(shared eXtended Global Platform)によるタワークレーン作業向け通話システムだ。既成の製品やサービスを単純に導入したのではなく、基本的な技術要素を組み合せて現場の生産性を向上できる、安定的で使い勝手の良い通話システムを作っているところに特徴がある。その詳細について竹中工務店の松原拡平氏に取材させていただいた。

建設現場で使われている無線システム

 建設現場で使われている無線システムを表1に示す。

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表1 建設現場で使われている無線システム

 「ローカル5G」は出力が高く遠くまで電波を飛ばせることから、ダム工事現場火力発電所などで、少数の基地局で広い空間をカバーする用途で使われている。帯域幅が広いため映像伝送による遠隔地点の監視も可能だ。

 「キャリア5G」は初期投資がごく少なく、ランニングコストもスマートフォン(以下、スマホ)と同じ料金で安価だ。高速かつ低遅延な通信が可能なため、早くから建設機械の遠隔操作で実用化されている。遠隔で操作するため低遅延と広帯域幅による映像伝送が不可欠だ。Wi-Fiは広大なダム工事現場で建設機械の自動運転にメッシュ型が使われている例がある。

 松原氏によると高層ビルの建設現場で使われるタワークレーンの作業では特定小電力無線(特小)が使われることが多いという。タワークレーンで資材を吊り上げる作業では、地上作業員とクレーンオペレーターがリアルタイムに緊密に連絡を取り合う必要がある。

 特小は免許が不要で、小型端末の電源を入れて使用するチャンネル(周波数帯を分割した通信経路)を決めるだけで簡単に利用できるメリットがある。しかし、特小は同じチャンネルに合わせている全ての端末が「早い者勝ち」で電波を出す仕組みであるため、都市部では近隣の工事現場とチャンネルが重複して電波が衝突(混信)し、通話できなくなることが度々起こっていた。混信すると作業を一時中止し、使用するチャンネルの調整をせねばならない。

 この混信問題を解消するため、竹中工務店ではsXGPを使うことにした。sXGPは特小のように1つのチャンネルを複数の端末が奪い合う方式ではなく、端末ごとにリソースブロック(時間軸=1ミリ秒と周波数軸=180kHzで定義された周波数割り振り単位)での割り振りを決定する方式であるため混信が起こらない。また、SIMを使って厳格な認証ができる。

 免許不要で設計や機器などの初期費用がローカル5Gよりかなり安価なため導入しやすい。しかし、特小のように端末だけで使うことはできず、後述するようなネットワークを作る必要がある。

sXGPによるタワークレーン作業向け通話システム

 タワークレーン作業向け通話システムの構成は図1の通りだ。

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図1 sXGPを用いたタワークレーン作業向け通話システム

 中核となるのは、SIMによる端末認証と通信制御を行うEPC(Evolved Packet Core)と基地局が一体化された装置だ。これが高層階に1カ所、1階に2カ所設置されている。1階にあるSIP(Session Initiation Protocol)サーバは通話の呼制御を行うサーバで、1対1の通話だけでなく3者以上のグループ通話もできる。

 SIPはIP電話で広く使われている通信プロトコルだ。音声をデジタル化するCODEC(Coder/Decoder)としては高音質/低遅延で通信環境に応じて最適なビットレートが適用されるOpus(オーパス)を用いている。

 タワークレーン作業ではクレーンオペレーターと地上作業員の間の通話に遅延は許されない。日本電気通信システムはCODECのチューニングとアプリ実装の工夫により、発声から聞き取りまで約200ミリ秒という低遅延を実現した。

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保護ケースに入れられたスマートフォン

 スマートフォンはGoogleの「Pixel 9a」を使っている。建設工事現場で使うため、落下や衝突で壊れないよう写真のようなケースに入れられている。スマホをケースから出さずに透明カバーの上からタッチして操作できる。

 クレーンオペレーターや作業員が使いやすいシンプルな操作画面になっており、スマホの画面をワンタップするだけで瞬時に通話ができる。ワイヤレスヘッドセットを使ってハンズフリーな通話も可能だ。

 この通話システムは2025年12月から2026年2月に大規模建設工事で長期実証が行われた。その結果、従来の特小無線で不可避だった混信による作業中断を解消し、安定的で即時性のあるグループ通話でタワークレーン作業の生産性向上に寄与することが確認された。竹中工務店はこのシステムを自社で利用するだけでなく建機レンタル会社と協業し、外部へのレンタル事業を2026年5月から開始した。

企業ネットワークにおける「手作り」と「工夫」

 企業ネットワークにおいては数年前からSASE(Secure Access Service Edge)やクラウドPBXの導入が進んでいる。ネットワークは「作る」というより「サービスを選択する」時代になったと言える。もちろん、同じサービスを使っても「設計ポリシーをどうするか」でネットワークの在り方は大きく変わる。先月紹介した奈良市のクラウドPBXのように独自性のある効果的なネットワークを実現できる。

 しかし、サービス主体となったことで「手作り感」や「工夫」が少なくなったことは事実だ。筆者が竹中工務店の事例を取材して思ったのは、「現場を支えるネットワークでは手作りや創意工夫を生かすことができる」ということだ。

 SASEというサービスで、タワークレーン作業に求められる要件を満たすネットワークを作ることはできないし、ダム工事現場や工場内のネットワークを作ることもできない。アンダーレイヤーのネットワークの在り方やコミュニケーションの機能が問われるからだ。

 手作りと創意工夫が生きる「現場を支えるネットワーク」にこれからも注目したい。

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