「特定メンバーへの依存」からどう脱却? JR西日本「JRおでかけネット」を支えるインフラ監視標準化のアプローチ:統合監視プラットフォームによる可視化で、運用の属人化解消とコスト適正化を両立
セルフホスト型監視ソフトウェアの保守終了やスクリプトの属人化に悩まされていたJR西日本ITソリューションズは、重要サービスの監視体制を刷新した。「特定メンバーしか触れない」状況をどう変えたのか。
JR西日本ITソリューションズ(以下、J-WITS)は、JR西日本が運営する鉄道・観光情報の総合ポータルサイト「JRおでかけネット」をはじめとする重要なサービスを支えるインフラ基盤の運用監視体制を刷新した。この取り組みは、これまで現場の重荷となっていた監視業務の属人化を解消するとともに、オンプレミスからパブリッククラウドへの移行に伴うサーバレス環境の可視化とインフラコストの適正化を両立させることを目指したものだ。
JR西日本グループのIT専門集団として、J-WITSは鉄道の安全・安定輸送を支えるシステムやグループ各社の事業を支援するシステムの設計・開発、それらをサポートする情報インフラの整備までを幅広く担い、インフラ基盤の整備やシステムのモダナイズを推進してきた。
一方で、10年以上利用してきたセルフホスト型監視ソフトウェアの保守サービス終了を迎え、監視スクリプト作成の属人化や誤検知、監視結果共有のしづらさといった課題への対応や、クラウド移行におけるインフラ運用体制の強化やコスト管理最適化が求められていたという。
「特定メンバーへの依存」を解消 インフラ監視標準化をどう実現?
これらの課題解決のためにJ-WITSは、新たにSaaS(Software as a Service)型の統合監視プラットフォームを導入し、監視体制を一新した。どのような監視体制に移行し、属人化やクラウド移行にどう対応したのか。
J-WITSが選定したプラットフォームは、統合オブザーバビリティプラットフォーム「Datadog」だ。2024年2月より、同プラットフォームを用いたシステムの外形監視を開始。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)ベースで操作できる特徴を生かし、スクリプトを書き慣れていないメンバーでも容易に監視フローの作成や共有ができる環境を整えた。
その結果、これまで2、3人にとどまっていた監視設定の対応可能者が15人に拡大するなど、属人化が解消された。アラート誤検知の調査やトラブルシュートが容易になり、迅速な障害対応が可能になるなど、システム運用の安定化と高度化を実現した。
また多くのユーザーによる利用が想定される中で、ユーザー数ではなく処理件数に基づき課金されるDatadogのコスト特性が大きなアドバンテージになったという。
クラウドに移行したシステムの監視もDatadogで実現
同時期には、JR西日本が運営する「JRおでかけネット」の一部システムをオンプレミスから「Amazon Web Services」(AWS)に段階的に移行する計画が進んでいた。計画ではサーバレスを主体にモダナイズし、システムのアジリティ(俊敏性)を高める方針が示されていたことから、AWS環境の監視もDatadogに統合することを決定。2025年9月の新システム稼働開始とともに、クラウド監視を開始した。
監視の稼働後は、Application Performance Monitoring(APM)を用いてログやメトリクスといった各種運用データを横断的に可視化し、システム全体の稼働状況を迅速に把握できる体制を構築した。アクセス集中時であっても遅延や障害を抑え、鉄道や観光といった重要情報を途切れなく利用者に提供するなど、安定したサービス運用を支えている。
障害発生時のサービス停止時間や生じた影響を経営層に的確に報告できるようになり、サービスの改善が精確かつ早急に実行できるようになった。これにより、部門間の連携強化を含む組織全体の運用体制強化にもつながっているという。
クラウドストレージの想定外のコスト高騰を検知、約20%の削減に成功
Datadogによる可視化は、開発フェーズにおける「AWS Lambda」のパフォーマンス最適化に貢献しただけでなく、移行後のコスト適正化においても成果をもたらした。
システム移行後、大量のLISTリクエストの発生により、「Amazon S3」の利用費が一時高騰する事態が発生。その際、APMを用いてリクエスト内容を詳細に分析したことで、高騰の原因を迅速に特定することに成功した。APIの取得方法を修正する対策を実行した結果、Amazon S3の利用費を約20%削減できたという。
今後は、DatadogのAIエージェント「Bits AI SRE」を活用した障害対応の高速化と運用工数の削減を進める予定だ。オンコール機能やWorkflow Automationを導入した監視業務の自動化にも取り組み、より高度なシステム管理や迅速なトラブルシュートを実現していく。定期的な情報交換会の開催などを通じて、Datadogを採用したJR西日本との連携も強化する方針だ。J-WITSの取り組みは、Datadog Japanが2026年6月3日に発表した。
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