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エンジニアの雇用は激変、だが「AIによる人員縮小」は真実の一部に過ぎなかった「技術系人材の現状レポート」で現実を問い直す

AIが技術系人材の雇用減につながるという報道も見られるが、Linux Foundationが公開したレポートで、それは必ずしも技術職全体の状況には当てはまらないことが見えてきた。

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 AI(人工知能)技術の影響を受け、エンジニアの採用は今どう変わっているのか。Linux Foundationは2026年5月18日(米国時間)、IT人材の将来像に関するデータを提供する調査結果「2026 State of Tech Talent Report」(2026年 技術系人材の現状レポート)を公表した。

 同レポートの内容は、AI(人工知能)が雇用や人材に及ぼす影響について、必ずしも前年までの予測が正しくはなかったことを示している。一部ではAIが技術職の人員削減に大きく影響しているという報道も見られるが、それは技術職全体の状況に当てはまるとは言えないことも見えてきている。

 その一方ではAI活用拡大の中で、スキル不足が危機的な状況に陥っていることも指摘されている。雇用や人材はAIの影響を受け、全体としてどのような状況にあるのか。

 レポートでは特に需要が高まっている職種や、スキル不足の中で企業が優先的に向き合わなければならない課題などについてもまとめられている。その主だったポイントを見てみよう。

「AIによる人員縮小」は真実の一部 実際には何が起きている?

 まず、調査対象企業の97%がAI実装に取り組んでいる。

 そうした中でレポートは、AIによるIT業界の人員削減に関する否定的なメディア報道があるとした上で、調査ではAIはむしろIT分野における雇用創出の原動力となっていると分析。一部ではAIが人員削減に影響している状況もあるが、それは従業員数2万人以上の最大規模の企業に集中しているとする。

 2026年の技術職の純雇用効果(増加率−減少率)は、全体で見れば31%増になる見通し。これは当初の予想を8ポイント上回る内容で、AIによる雇用増が加速している。ただし2027年にその成長は鈍化し、純雇用効果は22%増に低下すると予測されている。

 組織規模別に見ると、従業員数2万人以上の企業では純雇用効果が4%減。従業員数が1〜1万9999人の企業では28〜42%増と大きく増加傾向にあることと比べて対照的だ。AIの影響で雇用が減るという見方は一部に当てはまるものであり、全体で見れば技術職の需要はむしろ増えているのだ。

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業種や組織規模別の純雇用効果(「2026 State of Tech Talent Report」より引用)

 特にAI関連は純雇用効果が大きく、2026年に60%増と前年比で6ポイント上昇。AI専門職への需要の高まりを示している。

 その他の技術職の純雇用効果は、ソフトウェア開発(28%増)、技術管理(22%増)、IT運用(17%増)、品質管理およびテスト(16%増)などとなっている。いずれも前年の調査と比較して増加しており、AIが技術系人材全体に広く需要増の効果を生み出しているとレポートは分析。

 自動化の影響を受けやすいと考えられてきたエントリーレベルの技術職も8%増で、前年比で2ポイント上昇している。

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2026年における技術職の純雇用効果(「2026 State of Tech Talent Report」より引用)

 中でも、ソフトウェア開発がAIによる雇用増の影響を強く受けていると言える。ソフトウェア開発の雇用は、2023年から2033年の間に17.9%増加する見込みで、これは全職種の平均4%を大きく上回っている。

深刻になる人材不足と能力不足

 採用活動が拡大している一方で、各技術分野で深刻な人員不足が報告されている。ただし、2026年に47%が人員不足と回答して最も深刻だったAIおよびMLエンジニアリング部門を含め、サイバーセキュリティとコンプライアンス(40%)も、FinOpsとコスト最適化(36%)も、いずれも前年からは人員不足の割合が減少している。緩やかではあるが、進歩を遂げていることが示唆されている。

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技術職の人員不足状況(「2026 State of Tech Talent Report」より引用)

 人材不足を受けて、AIに関する能力不足も課題となっている。最も深刻な能力不足としては、57%が「AIセキュリティとリスク管理」を挙げている。AI運用と監視(57%)、AIワークロードのコスト最適化(54%)、AIインフラに関する専門知識(45%)などで能力不足が顕著だ。

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AIに関する能力ギャップ(「2026 State of Tech Talent Report」より引用)

AI活用で急速に高まるセキュリティ懸念

 AIから価値を得ることを妨げている要因としては、「セキュリティ上の懸念」(43%)が最多だった。コスト管理(36%)、スキル不足(34%)、レガシーシステムの制約(30%)などがそれに続いた。

 決定論的なソフトウェアでは、同じ入力に対して同じ出力が得られるのに対し、生成AIでは同じ入力でも実行ごとに異なる動作が生じる可能性がある。加えてAIエージェントは自律的に動作する。こうしたAIに特有のリスクに対して、組織はまだ十分に対処できていない。

 新しい技術を導入する際の主な課題でも、「セキュリティとプライバシーに関する懸念」(48%)が急速に高まっている。これは2024年には17%にとどまっていた項目だ。

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新しい技術を導入する際の主な課題(「2026 State of Tech Talent Report」より引用)

新規採用より既存スタッフのスキルアップ

 技術系人材の不足を埋める打ち手として、多くの企業が新規採用より既存スタッフのアップスキリング(技術力の底上げ)を選んでいる。「既存スタッフのスキルアップ」が57%で最も多く挙げられており、「新規技術スタッフの採用」(49%)や「経験の浅いスタッフのスキルアップ」(44%)を上回っている。

 AIの取り組みを進める上で重視する活動としては、「既存従業員のAIスキルを向上させる」が50%で最多だった。その他、「オープンソースのフレームワーク、モデル、ツールを活用する」(43%)、「AIaaS(AI as a Service)プラットフォームを利用する」(36%)などとなっている。

 今回の調査は、2026年2月に実施されたオンライン調査に基づいており、世界中の400人の参加者から回答を得ている。


 AIを巡る議論では「AIが仕事を奪う」という懸念に偏りがちだが、今回のレポートでは技術職の採用はむしろ増加基調にあることや、AIを安全かつ組織的に使いこなすための体制づくりが企業にとっての課題になっていることなどが示された。

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