「AIトークンコスト増を44%抑制」できる可能性も 高性能モデルの“使い過ぎ”、どう減らす?:AI利用とコストの実態、アクセンチュアが調査
生成AIやAIエージェントの活用が広がる中、企業のAI利用コストも膨らんでいる。AI活用を減らすことなく、増加するコストを抑えるには何を見直せばいいのか。アクセンチュアの調査から、その実態が見えてきた。
生成AIやAIエージェントを業務に組み込む動きが広がる中、企業にとってAIの利用コストをどう管理するかが新たな課題になりつつある。
アクセンチュアは2026年9月17日、AIトークンの利用とコストに関する調査「The CIO’s Guide to AI Tokenomics」の結果を発表した。
調査は2026年7月、日本を含む世界17カ国を対象に実施した。対象者は年間売上高10億ドルを超える企業のCIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、CFO(最高財務責任者)、CEOなど、AI関連支出の意思決定に直接関与する経営層750人。併せて、米国労働省の職業情報データベース「O*NET」に含まれる9368件の職務タスクを分析した。
3社に1社が「AIトークン予算」を超過、コスト増をどう抑える?
調査によると、企業はAI関連予算の平均25%をトークンに充てている。回答企業の50%は、トークン消費量を「AIコストを押し上げる要因」の上位3項目の一つに挙げた。
調査対象企業の3社に1社で、年間のトークン支出が予算を超過していた。経営層は今後2年間でトークン消費量が78%増加すると予測している。
AIの利用が拡大する中で、必要以上にコストを押し上げている要因は何なのか。AI活用を減らすことなく、コストを適正に抑制するには何を見直せばいいのか。
トークン単価が下がればAI利用コストを抑えられるようにも思えるが、必ずしもそうとは限らない。トークン価格が25%以上低下した場合の対応について尋ねると、経営層の95%が、それを契機としてAI関連支出全体を増やすと回答した。単価の低下をコスト削減につなげるのではなく、AIの利用拡大に振り向けようとしている企業が多いということだ。
コストに見合った成果が得られているのかを把握する仕組みにも課題がある。トークン支出のうち、定量的な財務成果との関連を証明できている割合は2割未満だった。自社にとって最も重要なAI活用事例でさえ、成果に対するコストを算出できている企業は35%にとどまった。
AIリクエストの54%が「必要以上に高性能なモデル」を利用
AIコストの膨張につながる要因の一つとしてアクセンチュアが指摘するのが、タスクとAIモデルの組み合わせだ。
同社がO*NETに含まれる9368件の職務タスクを分析したところ、フロンティアモデル(最先端の高性能AIモデル)の能力を必要とするタスクは全体の約1割と推計された。
一方、企業における実際のAI利用を見ると、AIリクエストの54%が、タスクに必要な水準を上回る高性能なモデルに振り分けられていた。つまり、全ての仕事に同じ高性能なAIモデルを使うのではなく、タスクの難易度や用途に応じてモデルを使い分ける余地があるということだ。
そこで選択肢となるのが「モデルルーティング」だ。これは、処理するタスクなどに応じて適切なAIモデルへリクエストを振り分ける仕組みを指す。複雑な推論が必要な処理には高性能なモデルを使い、それほど高度な能力を必要としない処理には、より低コストなモデルを割り当てるといった使い分けが可能になる。
経営層はモデルルーティングをAIコスト効率化における最も重要な施策と見ているものの、実際に導入している企業は30%にとどまった。
「誰が、何に、どれだけAIを使ったか」を把握できているか
モデル選択だけが問題ではない。AIを「誰が、何に、どれだけ使っているのか」を管理する仕組みも十分には整っていない。
例えば、AIの利用量に応じてコストを各部門に配分する「チャージバック(社内課金)」を導入している企業は7%だった。トークン支出の管理に特化した専門チームを設置している企業も37%にとどまり、48%では管理責任がIT部門と財務部門に分散していた。
アクセンチュアは、AIトークンを経営資源として捉え、コストと価値を管理する考え方を「トークノミクス」と呼ぶ。その実践策として、AI導入前に案件ごとの責任者や使用モデル、コスト、想定成果を可視化することや、各部門が利用したAIコストをそれぞれにひも付けて管理することなどを挙げている。
さらに、タスクに応じてモデルの割り当てを最適化し、フロンティアモデルは複雑なタスクに限定すること、AI導入前に期待する事業成果やコスト、成功指標を定めること、従業員にモデルの選定基準を示すことも重要だとしている。
アクセンチュアの試算では、こうした使用責任の明確化やモデル割り当ての最適化、AI活用案件の可視化を徹底することで、今後2年間で予想されるトークンコストの増加を最大44%抑制できる可能性があるという。
企業で利用できるAIモデルが増えるほど、「最も高性能なモデルを使う」という選択が常に最適とは限らなくなる。AI活用を広げるだけではなく、どの仕事に、どのモデルを、どれだけのコストで使うのか。企業のAI活用は、こうした運用とコスト管理まで含めて設計する段階に入りつつある。
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