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第一生命が独自AIを3万5000人規模で活用 「“使えない”と思われた社内システムは終わる」問題をどう回避した?:営業支援AI「デジタルバディ」の開発から活用までの歩みを整理

開発した社内システムを現場に定着させるには、何が必要なのか。第一生命は営業支援AI「デジタルバディ」を開発し、3万5000人規模での活用にまで広げた。定着につなげた開発プロセスの工夫とは。

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 第一生命保険(以下、第一生命)は、営業担当者である「生涯設計デザイナー」を約3万5000人抱える。営業活動には、顧客との面談内容の記録や上司への報告準備、手紙・メールの作成など、さまざまな事務処理が伴う。こうした事務処理の負担が大きいことに加えて、人によって事務処理の得意不得意に差があることが課題となっていた。

 事務処理の負担を軽減しつつ、組織全体の生産性を高めるために、第一生命は営業支援システムの開発を決めた。重視したのは、現場で確実に使ってもらえるシステムにすることだった。利用者が一度でも「使えない」と判断すると、その後は使ってもらえなくなる恐れがあると考えていたからだ。数万人規模でも止まらずに使えるスケーラビリティ(拡張性)と、システムのアウトプットの信頼性の確保も欠かせなかった。

「使われない」を避けるために、第一生命は開発をどう工夫した?

 第一生命は課題解消に向けて、営業支援AI「デジタルバディ」を開発し、2026年4月末に約3万5000人規模で本格稼働を始めた。生涯設計デザイナーの事務処理を支援し、業務の効率化につなげているという。現場に受け入れられるシステムを、どのように作り上げたのか。

 デジタルバディは、生涯設計デザイナーの業務を支えるさまざまな機能を備える。顧客の合意の下で会話を録音・文字起こしし、議事録を自動作成する「録音・文字起こし機能」はその一つだ。社内ドキュメントを自然言語で検索し、該当文書と要約を提示する「照会機能」もある。

 過去のやりとりを基に次の面談や提案活動に役立つアドバイスをする「ヒント機能」や、手紙やメールなどの文面案を自動作成する「文書作成機能」も備える。AIによる推論出力を別のAIでチェックし、ハルシネーション(生成AIがもっともらしい誤情報を出力する現象)の発生を防止する仕組みもある。

 第一生命はデジタルバディの開発に、日本マイクロソフトのクラウドサービス群「Microsoft Azure」(以下、Azure)を採用した。Webアプリケーション実行サービス「Azure App Service」のコンテナ機能「Web App for Containers」を使って、フロントエンドのアプリケーションを稼働。クラウドストレージサービス「Azure Storage」をバックエンド処理に用いる。生成AIモデル提供サービス「Azure OpenAI in Foundry Models」や音声テキスト変換サービス「Azure Speech」、データ検索サービス「Azure AI Search」も利用する。

 Azureを採用した背景には、第一生命が既にAzureをベースにした、次世代システム向けITインフラ「ホームクラウド」を構築していたことがある。ホームクラウドは、クラウドサービスとオンプレミスインフラを連携させて運用する仕組みで、2019年から運用している。システム開発を中心に、同社と日本マイクロソフトとの間で20年以上にわたる協力関係があったことも、Azureの採用につながった。

現場で試して、不要な機能は切る 「使える」システムへの磨き方

 デジタルバディの開発では、まず構想が実現できるかどうかを検証する「PoC」(Proof of Concept:概念実証)に取り組んだ。続いて生涯設計デザイナーが参加する「PoB」(Proof of Business:ビジネス実証)を段階的に実施し、現場で実際に利用しながら改善を重ねた。評判が悪かった機能は思い切って切り捨てるなど、現場と試行錯誤を重ねながら、生涯設計デザイナーが「使える」と判断できる機能に絞り込んだ。

 「Human in the Loop」(AIの処理に人間が介在する仕組み)の考え方も取り入れ、デジタルバディと生涯設計デザイナーで役割を分けた。スピードと正確性が求められる自動化の部分はデジタルバディが担う一方、顧客との対話を通じた信頼獲得は生涯設計デザイナーが担うようにした。デジタルバディが作成した文面を、生涯設計デザイナーを介すことなく顧客に直接送ることはしない方針だ。

 第一生命は、現場のフィードバックを基に改善を重ねながら、デジタルバディのパイロットユーザーを段階的に拡大してきた。最初は100人規模だったパイロットユーザーは、2025年には150〜300人規模に増えた。本稼働直前の2026年3月には1400人規模に拡大し、2026年4月末に約3万5000人規模で本格稼働を始めた。

 録音・文字起こしと議事録の自動作成によって、生涯設計デザイナーは面談内容を上司に共有しやすくなり、帰社後の報告準備の負担を軽減できた。文書作成機能によって、顧客への手紙やメールの作成時間も短縮したという。第一生命は今後、生涯設計デザイナーの支援だけではなく、他のさまざまな部門を支援できるようにデジタルバディを改良する考えだ。日本マイクロソフトは2026年8月28日、本事例を公開した。

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