本番コードのAI生成率99% ソニー銀行は「勘定系開発にClaude Code適用」をどう実現?:基本設計〜結合テスト期間を30%短縮
ソニー銀行は、勘定系システムの開発に生成AI、AIエージェントを採用し、基本設計から結合テストまでの期間を従来比30%短縮した。本番稼働中のシステムの開発に適用しているという。
日本の金融業界は、システム開発の構造的な課題に直面している。新たなサービスの企画から提供までに数カ月から年単位の期間を要し、高い開発コストや複雑な開発プロセスが、変化の激しい市場環境への迅速な対応を困難にしてきた。一方で、生成AIをはじめとする技術の進化が進み、変化に即応できる開発体制を構築できるかどうかが、金融機関の競争力を左右する時代に突入している。
こうした中、ソニー銀行は富士通、アマゾン ウェブ サービスジャパンと共に、銀行システムの根幹である勘定系システムの開発プロセス変革を進めてきた。2025年9月に生成AIの採用を始め、設計書やソースコード、テスト資産といった開発資産をAIが活用できる仕組みを構築した上で、設計、製造、テストといった主要工程に適用を広げてきた。2026年7月時点で基本設計から結合テストまでの開発期間を従来比30%短縮する効果を確認したという。具体的に、どう進めてきたのか。
「Claude Codeが、設計や製造、テストの開発資産を工程横断で使う」どう実現?
ソニー銀行と富士通は、生成AIを単独の開発支援ツールとして利用するのではなく、工程横断で活用し、開発プロセス全体を変革した。
富士通の勘定系製品「Fujitsu Core Banking xBank」が生成AI活用を支える基盤になった。Core Banking xBankはクラウドネイティブかつマイクロサービスを前提としたアーキテクチャを採用している。
Amazon Web Services(AWS)で稼働することで、生成AIサービスとの連携や検証を迅速に進められる他、マイクロサービス構造によって機能単位で段階的な適用と評価が可能になった。設計、製造、テストの各工程に生成AIを継続的に適用しながら効果を検証し、適用範囲を広げた。
具体的には、「Amazon Bedrock」で、Anthropicが提供する生成AIモデル「Claude」と、AIコーディングツール「Claude Code」を中核とするAIエージェントが、勘定系システムの設計書、ソースコード、テスト資産などの開発資産を、工程をまたいで利用する。設計書からソースコードやテストケースを生成するなど、前工程の成果物を後続工程で再利用することで、工程間の連携を強化した。
設計、製造、テストの各AIエージェントは、必要な開発資産や各種ツールと連携しながら、人による判断、承認、品質保証の下で開発を支援する。各種ツールには、AIエージェントが外部システムやデータと連携して情報取得や業務処理を実行するためのMCP(Model Context Protocol)、「Tools」「Skills」などが含まれる。
PoCではなく本番稼働中のシステムの開発に適用
PoC(概念実証)や限定的な試行ではなく、本番稼働する勘定系システムの実開発に適用している。オンライン取引処理やバッチ処理を含む銀行業務を支える多様なアプリケーション開発に活用しており、処理形態を問わない実践的な適用となっている。
生成AIを開発の標準プロセスに組み込み、金融業務とシステム開発の知見を持つ富士通の人材が適切なタイミングで評価、改善することで、安全性と品質を確保しながら適用範囲を拡大したという。
工数は40%削減、ソースコードの生成率は99%
生成AI活用の結果、勘定系システムの基本設計から結合テストまでの工程では、工数が40%削減され、開発期間が30%短縮された。工程ごとでは次のような成果が上がっている。
- 基本設計工程:影響調査工数を最大90%削減
- 詳細設計工程:設計書作成工数を最大40%削減
- 製造工程:ソースコード生成率99%を達成
- 結合テスト工程:テスト実行工数を最大90%削減
今後は要件定義や運用・保守にも拡大
ソニー銀行と富士通は今後、要件定義を含む開発工程全体への生成AI適用を進めるとともに、セキュリティや運用・保守領域に適用範囲を段階的に広げる。本取り組みで得た知見と開発資産は周辺系システムにも活用する。
ソニー銀行は、変化する顧客ニーズや事業環境に迅応できる「AIネイティブな銀行」を目指すとしている。富士通は、Core Banking xBankを採用する他の金融機関でも活用できる開発モデルとして展開する方針だ。本取り組みで得た知見やフィードバックは、金融機関のAI活用を支援する専有環境のAIプラットフォーム「Uvance for Finance AI Transformation Platform」の開発にも生かすとしている。本事例は、ソニー銀行が2026年9月14日に発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「単にAIを使ったチーム」より成果を出したのは? 弥生が開発工数80%減で気付いた、AI駆動開発の分かれ道
AIが進化する一方で、実業務や組織全体への展開に難しさを感じる企業は少なくない。会計・給与ソフトウェアを提供する弥生は、顧客向け製品へのAI実装と、AIを前提とした開発プロセスの再設計を同時に進めている。中小企業の業務効率化をAIで支援する同社の戦略を、弥生の武藤 健一郎氏、今泉 竜一氏、佐々木 淳志氏に聞いた。
茨城県鹿嶋市は「公式Web×Claude」で市民対応をどう変えた? Claude Codeで内製化も
限られた職員で行政サービスをどう維持するか――。鹿嶋市は本格的に「生成AI」の活用に乗り出した。まずは公式Webサイトと「Claude」で市民対応業務を改善。「Claude Code」による内製化にも着手している。狙いやその仕組みについて同市に取材した。
サイバーエージェント、月3万円の“AI手当”で「Claude Code」「Codex」利用急増 代わりに“使われなくなった”のは?
サイバーエージェントがソフトウェア開発向けAIエージェントの利用支援を始めて1年。開発におけるAIツールの“主役”が変わり、AIの役割までもが変化したという。それはどういうことなのか。実態を追う。
メルカリが明かす「Claude Code全社展開」「シャドーAI対策」を支える仕組み
「AIを使わない選択自体がビジネスリスク」と断言するメルカリ。同社は2026年5月、「Claude Code」「Claude Cowork」の全社展開に踏み切った。だが、ローカルファイルの操作やOSコマンドまで実行できる強力なツールの配布は、ガバナンスの課題も伴う。全社のAI活用を支える同社の「仕組み」に迫る。
塩漬け“17年”のレガシー刷新作業を「2年→2日に短縮」 常石造船の事例で見えた、AIプロジェクトの成否
AIエージェントの活用が本格化する中、レガシーシステム刷新の工程が、AIエージェントを活用することで2年から2日に短縮するという事例も生まれた。一方で多くのAIプロジェクトではPoCで止まり、本番運用への障壁を乗り越えられていないという現状もある。API管理ベンダーKongが事業戦略説明会で語った常石造船の事例などを踏まえて、成否の条件を考える。


