情シスの知らないところで「ITコストが30%オーバー」、見落とされる支出の正体:従来のIT予算管理では追跡できない
情報システム部門の管理が及ばないところでIT関連の支出が発生し、予算を大きく上回るケースが目立っているという。なぜ、こうした「隠れIT支出」が生じるのか。
ITシステムの利用形態が多様化する中、従来の予算管理だけでは企業全体のIT支出を把握し切れないケースが生じている。経営コンサルティング会社のA.T. カーニーは2026年10月、企業のIT支出管理に関する分析を公表した。同社が支援した企業の事例では、IT関連支出がIT予算を15〜30%上回っていたという。
なぜ「IT部門が把握できない支出」が生まれるのか
同社は、企業のIT支出の一部が従来の管理体制では十分に把握されていないことを問題視している。従来のIT予算管理を難しくしている要因として、A.T. カーニーは4つの構造変化を挙げている。
1.永続ライセンスからSaaSへの移行
大企業では平均660個のSaaSアプリケーションが利用されており、従業員1人当たりの年間費用は4830ドルに達している。一方で企業全体のライセンス利用率は54%にとどまり、未使用ライセンスによる損失は年間平均1980万ドルに上る。
2.利用量に応じて費用が動く従量課金の拡大
2025年にはITリーダーの66.5%が、従量課金またはAI関連料金の利用増によって予測外の請求を経験した。
3.アプリケーション管理のIT部門外への移行
現在、企業が利用するアプリケーションの56%は中央のIT部門以外によって管理されており、全社的な支出の把握や統制が難しくなっている。
4.生成AIの普及による新たな支出経路の拡大
生成AIは、既存SaaSへの有料追加機能、AI事業者との直接契約、従業員による個人向けツールの利用という3つの経路から企業内に広がっている。その一方で、生成AIの実証実験のうち損益への明確な効果を伴う本番運用に到達するものは5%にとどまる。そのため、90日以内の利用状況を基準に継続の可否を判断するといった仕組みが求められる。
「隠れIT支出」を減らすために企業が取り組むべき6つの施策
では、企業はこうしたIT支出をどのように管理すればよいのか。A.T. カーニーは、IT支出の可視化とコスト最適化に向けて、6つの施策を提案している。
1.テクノロジー支出の一元的な把握
公式IT予算、SaaS、シャドーAI(従業員が会社の承認を得ずにAIを利用すること)、クラウドの従量課金、既存ライセンスに組み込まれたAI、開発費を含む支出を一元的に把握する。
2.従量課金・AI料金に対応した調達の見直し
価格上昇率、トークン利用量、利用量の上限、AIモデルのバージョン固定などを契約条件に盛り込み、調達モデルを見直す。
3.AI施策の段階的な審査とポートフォリオ管理
AI施策を段階別に分類し、明確な審査基準と利用状況に連動したKPI(重要業績評価指標)に基づいてポートフォリオを管理する。
4.シャドーAIの正式な管理体制への組み込み
CIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)、法務責任者が連携し、シャドーAIを正式な管理対象へ移行させる。
5.既存システムの運用予算の圧縮とAI投資原資の確保
既存システムの運用予算を圧縮し、新たなAI投資に向けた原資を確保する。
6.取締役会によるIT支出の継続的なモニタリング
売上高の成長率に対するIT支出の伸びについて、取締役会が四半期ごとに継続して追跡する。
同社は、これらの施策について、1〜2回の予算編成サイクル内に効果を確認できる取り組みとして位置付けている。また、クラウドなどのIT支出を可視化し、最適化する「FinOps」の成熟度を高めることも、コスト予測の精度を向上させる上で重要だとしている。
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