連載 | 企業コミュニケーションとツール活用法(3) |
コミュニケーション・ツールの活用事例(蓄積型編)
リアルコム
長谷川 玲
2005/12/10
前回「各種コミュニケーション・ツールの強みと弱み」では、コミュニケーション・ツールを4つに分類して紹介した。今回はその中で「蓄積型(非同期型)」に分類したツールを取り上げる。この蓄積型は「発信者が受信者をどの程度特定しているか」という視点から、より特定しているものをカテゴリ[A]、あまり特定せず不特定多数の受信者を想定しているものをカテゴリ[B]とした。カテゴリ[A]では電子メールが、カテゴリ[B]ではグループウェアが代表的なツールである。
「蓄積型(非同期型)」コミュニケーションは、発信側がメッセージを発してから受信側がそれを受け取るまで(あるいは返信するまで)の時間が比較的長い。発信者がメッセージを投げても、そのメッセージはサーバに蓄積され、受信者がアクセスするまでそのメッセージは届かないことになる。この逆が、「リアルタイム型(同期型)」のコミュニケーションである。こちらは次回に取り上げていく。
- | 電子メールの基本的性格とメリット/デメリット |
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電子メールは、その活用方法や事例をもはやあらためて取り上げるまでもないほど、現在の社会に広く普及している。そこでほかのツールは電子メールとの比較で考えていくことにしたい。
電子メールのメリット・デメリットをおさらいしよう。まずメールが属するカテゴリ[A]の利点として、相手の時間を拘束せず、発信・受信側ともに都合の良いときに利用できることが挙げられる。また、相手を特定したコミュニケーションであるため、当事者同士に前提となる知識や共通了解があれば、内容が相当込み入っていようが省略表現されていようが、十分にメッセージを伝えることができる。
■電子メールの便利さが呼び込む“依存症”
ところがこういった特徴はデメリットと紙一重である。メールが陥りやすい問題点は前回も紹介したとおり、発信が容易であるが故にメッセージ件数が予想以上に多くなることである。またグループ用のメールアドレスが多用されるようになり、本来は相手を特定してメッセージを送るはずの電子メールが、多数の相手に同時に送るツールとして使われるようになってきた。「全社メール」といって、社員全員にメールを使ってさまざまな通知を行っている企業も少なくない。
弊社がかかわったいくつかのプロジェクトで、メールの受信状況を調査した。その結果をまとめたものが図1である。業界や職種によっても差はあるだろうが、1日に受け取るメールの平均は50〜60通であり、そのうち社内の人間とやりとりしているものが7割を占めていることが分かった。
図1 1日に受け取るメールの内訳 |
さらに分析すると、明確に“自分あて”として送られてくるメールと、“念のため”で送られてくる「Ccメール」がほぼ同じ量である。さらに、全社員または部門単位で「一斉に通知を行うメール」、ワークフロー・システムや業務ソフトなどが発信する「システム自動送付メール」「そのほか業務関連のメール」も届く。もちろん、担当業務によってはシステム自動送付メールの割合が増えるかもしれないし、届くメールのほとんどが「Ccメール」という人もいるかもしれない。
しかし概していうと、届いたメールの重要度はまちまちであり、かつその優先度は分かりにくい。ユーザーは、どれを真っ先に読むべきメールなのか、即座には判別できない状態に置かれているといえる。メールは「受け手を特定して送る」ものであり、受信者にとっては自分が読むべきメッセージを直接受け取れるはずなのだが、“取りあえず”送られたCcメールや一斉配信メールなどの多用、システムからの通知メールの増大により、重要なメッセージが埋もれてしまうのである。
私用メールに関しては「生産性が下がる」「機密情報が漏れるかもしれない」ということで禁止にしている企業もあるが、社内メールで何を伝え、何を伝えないかを決めているところはどれくらいあるだろうか?
しかも発信者はメールを送った以上、相手は「読んでいるはず」と思っている。社内メールが多過ぎるために、取引先からの連絡メールを見逃してしまっては問題だろう。
筆者がコンサルティングをしているお客さま先でよく聞かれた悩みに、「大量のメールを何とかしたい」「自分に本当に必要な情報を適切なタイミングで受け取りたい」というものがあった。こうした悩みは相談を受けた段階では「どうもメールが多過ぎてよく分からない」という感覚的なものであったが、具体的に測定してみると上図のような結果となり、問題解決の必要性を実感できるようだ。また数値化することで、どの部分のメールを減らせばよいのかが明確になってくる。
さらに電子メールの利点を生かしてより効果的に活用するには、弱点を補完するツールをうまくする利用することだ。社内コミュニケーションのための手段としては、内線電話/会議/イントラネット/ポータルなど、さまざまなものがあり、それらの特性に合わせた運用が重要なのである。そして、その使い分けは分析することによって判断可能である。
さて電子メールの利用実態はこのようなものなのだが、ほかのツールはどのような場面で活用すべきだろうか。以下、順次見ていこう。
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