連載 企業コミュニケーションとツール活用法(2)

各種コミュニケーション・ツールの強みと弱み

リアルコム
長谷川 玲
2005/11/9

企業内コミュニケーションを活性化させるには、コミュニケーションの特性に合わせたツール選定が必要だ。今回はさまざまなツールのメリットとデメリットを整理していく。(→記事要約<Page 2>へ)

- コミュニケーション・ツールの分類

 今回は、各種のコミュニケーション・ツールが持つ利点と陥りやすい問題点について詳しく検討していく。まずコミュニケーションのスタイルから2つの軸を取った4象限のマップにコミュニケーション・ツールを当てはめ、分析していこう。

 コミュニケーションのスタイルを分類するための軸の1つ目は、1対1のコミュニケーションか、複数の人間間で行われるコミュニケーションか、という視点である。コミュニケーション・ツールの多くはその双方を可能にしているが、大抵はそのどちらかに主眼が置かれている。ここでは、発信者が受信者をどの程度特定しているかで分けることにする。例えば、電子メールは相手のアドレスを指定しなければ届かないが、グループウェアでは受信者を(想定はしているが)個別に特定するというよりはグループとして認識する点に特徴があると考える。

 もう1つの軸は、そのコミュニケーションがリアルタイムに行われるか否か、ということである。「リアルタイム」に対蹠する概念として、ここでは「蓄積型」(ないし「非同期な」)コミュニケーションという言葉を用いる。この軸は、コミュニケーションする際に発信側がメッセージを発してから受信側がそれを受け取り、返信するまでの時間が短いか長いかを意味している。例えば、リアルタイムではない、蓄積型ツールでは、発信者からメッセージはいったんサーバに蓄積され、受信者がアクセスするまでそのメッセージは届かないことになる。

 これら2つの視点でさまざまなツールを分類し、マッピングしてみると、おおむね図1のようになるだろう。

図1 コミュニケーション・ツールの分類

カテゴリ[A]:電子メール型

 左上のカテゴリ[A]は、主にマンツーマンで行われ、しかもリアルタイムではないコミュニケーションを行うツールである。ここに入る主要なものは「電子メール」である。電子メールは複数のあて先に同時に送ることもできるが、受け手を特定するという意味では1対1(「個対個」の方が理解しやすいかもしれない)でやりとりするものといえる。また、受信側のメーラーなどの設定いかんでは、送信者が送ってすぐにメッセージが相手に届く(つまり「リアルタイム性」がある)ようにすることも可能だが、基本的には送信と受信の間にある程度の時間差があるツールである。ちなみに「FAX」もここに分類されるだろう。

カテゴリ[B]:グループウェア型

 その下のカテゴリ[B]は、複数の人間で、リアルタイムではないコミュニケーションを行うツールが入る。情報は一定の場所に徐々に蓄積され、受信者側は必要に応じてそこにアクセスし、情報を入手するというタイプのコミュニケーションである。主要なツールとしてはグループウェアがある。また、最近は企業内でもブログを使っているところがあるが、これも蓄積型のコミュニケーション・ツールといえるだろう。ブログは一方向なものと思われがちだが、トラックバックやコメント機能により、双方向のコミュニケーションが可能だ。また、これらのツールは、情報が蓄積されたということを必要な人間に知らせるために、電子メール連携やRSSなどの機能を備えていることもある。また、カテゴリ[A]の電子メールをベースにしたメーリングリストも[B]に分類されるといえよう。

カテゴリ[C]:電話型

 カテゴリ[C]に属する主なツールは、固定/IP電話IM(インスタント・メッセンジャ)である。電子メール同様、相手を明確に特定してコミュニケーションを開始する。電子メールと異なるのは、メッセージのやりとりはリアルタイムであり、発したメッセージがすぐに相手に届くことである。もちろん、相手が「そのツールを使っていない」「使える状態ではない」「オンラインではない」という場合には伝わらない(発信不能の場合もある)ため、相手の状態(プレゼンス)の確認が必要になる。

カテゴリ[D]:テレビ会議型

 カテゴリ[D]にはテレビ会議/Web会議といったツールが割り当てられるだろう。事前に取り決めた時間にシステムにログインし、ツールを介してコミュニケーションを行う。1対1でも良いが、むしろ複数のユーザー同士で行うことが多い。また、ストリーミング的な使い方も可能で、例えば全社員向けの会議をWeb会議で行えば、複数拠点にいる従業員が1カ所に集合する必要はなくなる。なお、「自分自身」をコミュニケーション・ツールと考えれば、フェイスツーフェイスのリアルな会議やセッションも実はここに入るが、前回も述べたとおり、今回の連載では対面でのコミュニケーションに関する深い議論は割愛する。

 このように分類したうえで、それぞれのカテゴリごとに利点と課題、ツールの限界を考えていくことにする。

- それぞれの利点

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 まずは、それぞれのカテゴリごとに、その利点について考えてみよう。

カテゴリ[A]:電子メール型の利点

 カテゴリ[A]は、1対1で行う非同期のコミュニケーションである。このカテゴリに属するツールの利点は、相手の時間を拘束せず、発信・受信側ともに都合の良いときに利用できることである。

 代表的なツールである電子メール特有のメリットとしては、すでにほとんど当たり前の存在になっていることが挙げられる。そのため、欠点を補う技術や手段の整備も進んでいる。例えば、メーラーの機能によっては検索や自動フィルタリングなどの機能が充実してきているし、ウイルスなどセキュリティ対策がサーバ側・クライアント側の双方でなされている。このうえに社内のコミュニケーションインフラとして、利用ポリシーに関してもある程度は制定している企業が多くなってきている。

カテゴリ[B]:グループウェア型の利点

 カテゴリ[B]は、グループウェアやポータル(EIP)に代表されるツール類だ。そのメリットは企業や組織が持つ情報、ナレッジ、経験を形式化して蓄積でき、多人数における情報の共有・参照・再利用・継承などを容易にする。さらには電子メールやIP電話との連携など、他ツールと組み合わせて使うこと(ユニファイド・メッセージング)で、業務と連携した全社的な効果を得ることができる。

 またグループウェアやポータルは、ユーザーあるいはグループごとにアクセス制御を設定したり、情報をカテゴリで分類して整理したりすることができる。多人数での情報共有と、ある程度特定された人間にだけ情報を伝えるということを両立できる仕組みが備わっているのである。

カテゴリ[C]:電話型の利点

 一方、リアルタイム性があるカテゴリ[C]や[D]の最大の特徴は、先に述べたとおり、「メッセージがすぐに伝わる」ことだ。[C]ではさらに、相手のプレゼンスに応じてコミュニケーションを開始できること、[D]ではツールの利用により、地理的制約がなくなるというメリットがある。

 カテゴリ[C]の代表的なツールであるIMは、同時に複数の相手と別々のテーマでメッセージをやりとりすることもできる(「N対N型」のコミュニケーション)。つまり、Aさんとは明日の会議の時間を調整しながら、Bさんとは資料作成の締め切りについて相談する、といったことが、IMであれば可能である(なお、複雑な話題を複数扱うと頭が混乱するのでは、という問題についてはここではひとまずおく)。これが電話になると、さすがに1つテーマの内容しか扱えないだろう。

カテゴリ[D]:テレビ会議型の利点

 [D]に属するテレビ/Web会議では、映像により知覚的にメッセージを伝えることができ、受信者側のメッセージ理解を助けるというメリットもある。会議を記録しておくことで、複雑な機器の操作方法など、文章では表現しにくい情報を共有することもできる。

〈各種ツールの利点〉
[カテゴリA] 電子メール、FAX
双方が都合の良いときに利用できる
■特に電子メールでは…
すでにほとんどの人が利用している
ツールの機能が充実
利用ポリシーやセキュリティ対策など管理側の意識が高い
[カテゴリC 電話/IP電話、IM
プレゼンスに応じて、即返答のあるコミュニケーションが可能
■特にIMでは…
同時に何人もの人と話を進められる(N対N型)
ほかの人に内容が見られない、聞かれない
通信ログが残る
[カテゴリB] グループウェア、ポータル、ブログ
企業が持つ情報やナレッジが蓄積、継承できる
■特にグループウェアでは…
電子メールや他システムとの連携など、業務と連携し、全社的な効果を得ることができる
情報をカテゴリなどに整理整とんして保存できる
[カテゴリD] テレビ会議/Web会議
地理的、時間的な制約を超えて複数者間のリアルタイム・コミュニケーションを実現
■特に会議システムでは…
音だけでなく画像を含められ、知覚的に伝わる

第1回 1/2

index
連載:企業コミュニケーションとツール活用法(2)
 各種コミュニケーション・ツールの強みと弱み
Page 1
コミュニケーション・ツールの分類
それぞれの利点
  Page 2
陥りやすい問題点
使い分けのポリシー制定が重要


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