Database Watch 4月版 Page 2/2
MySQL 5.0、かなり気になる機能強化が進行中
加山恵美
2005/4/14
■もっと機能を! 進化するオープンソースRDBMS
オープンソースのRDBMSというと、MySQLとPostgreSQLの2つが有名です。MySQLのシンボルはイルカで、PostgreSQLはゾウです。ただし日本のPostgreSQLのシンボルはカメとなっています。ほかにもLinuxのペンギンやFirebirdの火の鳥など、オープンソースでは動物をシンボルに掲げるものが多いです。やはりオープンソースはコミュニティにてユーザーの愛によりはぐくまれていくためでしょうか。
さてオープンソースRDBMSですが、それぞれの最新バージョンはMySQLが4.1.xで、PostgreSQLは8.0.xです。PostgreSQLは2005年初めに8.0をリリースし、日本語版ドキュメントも出そろってきました。8.0では障害時の復旧機能(Point-In-Time Recovery)やWin32環境のサポートが特徴です。
- What's New in 8.0
PostgreSQL 8.0の新機能紹介ページ(英語)
一方、MySQLは2004年に4.1.xが正式版として認められたところですが、さらに5.0.xを着々と開発中です。2005年3月には5.0.3がリリースされ、かなりの変更やバグ修正が行われたようです。次期バージョンの新機能はMySQLのDeveloper Zoneにて詳細が解説されていますが、主にストアドプロシージャ採用やクエリの高速化が注目されています。
- MySQL 5.0 New Features: Stored Procedures
- MySQL 5.0 New Features: Views
- MySQL 5.0 New Features: Data Dictionary
- MySQL
5.0 New Features: Triggers
MySQL 5.0の実装予定機能の紹介ページ(すべて英語)
新バージョンではどちらも弱点克服に力を入れています。PostgreSQLは高機能だが対応プラットフォームはLinuxに限られていたところが、Win32ネイティブサポートとなりました。一方、MySQLは高速性が特徴だが機能が限定されていたところが、幅広い機能を搭載することになります。これは両者ともに可能性を大きく広げることになり、これまでの導入を見極める判断基準は見直す必要が出てきそうです。
またオープンソースRDBMSはLinuxプラットフォームを中心に使われており、Linux普及とともに勢力を伸ばしてきました。逆にいえばオープンソースRDBMSはLinuxの普及に依存する面もありましたが、PostgreSQLがWin32ネイティブサポートに踏み切ったように、Linuxにこだわらず普及の可能性を広げようとしています。
もう1つ、両者ともに企業での採用に意欲を見せています。一般的にオープンソースは商用と違い、機能を厳選することで高速さや独自性を出していました。しかしMySQLとPostgreSQLの動向を見ると、弱点を克服し機能面で商用製品との差をなくす方向で進んでいます。オープンソースの世界で完成度が最高峰に到達した両者だからこそ、ともに次の目標にはエンタープライズでの採用を目指すのでしょうか。
■エンジニアはコミュニティで育つ
次にユーザーコミュニティです。エンジニアがRDBMSを扱うにはスキルが要ります。このスキル上達を互いに助け合う場がユーザーコミュニティです。自然発生したものもあれば、ベンダ自らが場所や情報を提供しているところもあります。
商用RDBMSではそれぞれのベンダが関与する日本のユーザーコミュニティがあります。Microsoft SQL ServerのユーザーコミュニティはPASSJです。PASSJでは「アフタースクール」として初心者も対象にした技術習得の講座を積極的に開催しています。会社帰りや週末に、そう高くはない価格で受講できるのが特徴です。例えば4月開講のものでは土曜に開催し、1コース6時間で1500円です。しかも飲料とお菓子付きです。さらに交友関係が広まることも期待できるので、いつもすぐ満員御礼です。
OracleのユーザーコミュニティにはOTNがあります。会員数30万人という大所帯で、掲示板で情報交換をしたり、各種ドキュメントがダウンロードできるようになっています。掲示板は話題ごとに用意されていて、ドキュメントはノウハウ解説やサンプルコードなど、豊富にそろっています。
DB2も負けていません。掲示板による情報交換の場としてUser's Forum for DB2 Japanがあります。またエンジニアであれば、IBMのDB2 Developer Domainも活用することでしょう(5月9日からポータルサイトDB2.JPが統合されます)。こちらには技術情報が豊富に公開されています。また「匠塾」と銘打ったセミナーも行っており、6月には「プレ匠塾・DB管理者ここが重要!実践ノウハウ講座」が開催されます。
オープンソースにも日本のユーザーコミュニティがあります。日本PostgreSQLユーザ会や日本MySQLユーザ会です。ともに、本家である海外コミュニティの動向を逐一報告したり、日本語版ドキュメントを作成するなど日本での普及活動を行っています。また主にメーリングリストにて情報交換を行うことが多く、技術的なノウハウや新バージョンの話題で盛り上がっています。
一口にRDBMSといっても、製品やコミュニティごとにそれぞれの特徴や顔があります。それぞれ互いにライバル視しながら鍛錬しあうこともよい刺激なのかもしれません。
ではまた来月、お会いしましょう。
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