Database Watch 11月版 Page 2/2
祝! 正式リリース
MySQL 5.0/PostgreSQL 8.1
加山恵美
2005/11/16
最新版のOEMでは順を追ってパフォーマンス劣化の原因を簡単に探ることができます。例えば「レスポンスの遅いURLは?」→「時間がかかるプログラムは?」→「JDBC処理時間は?」→「遅いSQLは?」→「SQLの内容は?」としきい値を設定したりグラフを見ながら原因に近づいていくことができます。この例なら原因とされるSQLにたどりつくと、その場でSQLアドバイザでチューニングを行います。これで解決、一件落着となります。この操作がおおよそトータルで10分程度です。
興味深いのがOEMのモバイル対応「EM2Go」です。1つはアラート情報を管理者の携帯機器にメールで通知する機能があります(管理者には職場以外でも気が休まらなくてお気の毒な気もしますが)。もう1つはOEMをPDAで操作することです。もともとは工場内などホコリを嫌う環境では、大きなノートパソコンではなく小さなPDAで操作したいという要望があったからだそうです。PDAで運用管理や障害対応ができるとなると、より機敏に作業ができるかもしれません。
障害対応だけではなく、普段の監視に役立つ機能もいろいろと強化されています。グリッドシステム全体を見渡して障害をドリルダウンできるトポロジ・ビューア、サービスの一覧を表示するサービス・ダッシュボードなどがあります。
先のパフォーマンス劣化の例では最後にSQLアドバイザでチューニングをしましたが、ほかにも便利なアドバイザがあります。メモリ・アドバイザではキャッシュ・ヒット率がなるべく100%に近づくようにしたり、バッファ・キャッシュに必要なサイズを確認しながらチューニングを行うことができます。セグメント・アドバイザやUNDOアドバイザなどもあり、多角的に最適化を図ることができます。
また最近では日々の運用管理の課題は安定性だけではなく、セキュリティも重要視されるようになってきています。OEMではセキュリティに関する実装状態を確認したり、設定を変更することができます。つまりコンプライアンス状態を診断し、調整することが可能です。OEMの画面からセキュリティについての問題点(脆弱性)を一覧で確認し、ポリシー一覧で修正作業を定義することができます。
またパッチの管理も楽になります。OEM 10gの管理下のOracle環境のパッチ状態を自己診断することもできます。Windows Updateのように自動的に必要なパッチを適用できます。この自動パッチ管理はグリッド環境内の10gよりも前のバージョンが稼働しているものでも診断可能です。
オラクルはすべてのアプリケーションに対して運用管理でコスト削減、企業コンプライアンス、ビジネス変化への俊敏な対応、この3つを実現することを目標としていると話していました。なお当日のセッション資料はオラクルのサイトからダウンロードできるようになっています。
■MySQL 5.0正式版リリース
200万以上のダウンロードを経て、正式版に到達しました。「MySQL 5.0正式版(MySQL 5.0.15)」が10月25日にリリースされました。米国のMySQLサイトは今回のバージョンアップを最も重要と位置付けており、ホワイトペーパーやWebセミナーなど新しいバージョンを知るための資料も公開され始めています。日本語の資料や書籍なども早く出てくるといいですね。MySQL 5.0の新機能については追って調査していきます。
MySQLといえば、先月はオラクルが「InnoDB」を開発しているフィンランドのInnobase OY社を買収したことがニュースになりました。InnoDBとはMySQLが採用しているエンジンの1つで、MySQLの一部として配布されています。買収についてMySQLは「オラクルがオープンソースのデータベース技術を認めたことを歓迎する」とのコメントを発表しています。現時点では実質的な変化がなさそうに見えますが、来年にはInnoDBとMySQLが契約の更新時期を迎えることが気になるところです。
もう1つ、日本MySQLパートナー会(JMPA)はサイトからMySQLを利用した開発事例を5件ほど簡単に紹介しています。この団体は日本におけるMySQLの普及啓発を支援しています。企業がオープンソースに理解を示し普及啓発のために連携するというのは喜ばしい動きだと思います。
■PostgreSQL 8.1も正式リリース
PostgreSQLが8.0をリリースしたのが今年1月でした。それから約10カ月過ぎ、次のメジャーバージョンアップ注となる8.1 RCが10月31日に公開されました。先月お伝えしたように、ベータ版の段階で「すごく速い」ともっぱらのうわさです。日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)の広報担当blogの10月27日付記事によると、8.1の正式リリースは11月上旬とありました。この予告どおり、11月8日に8.1がリリースされました。こちらも追って詳細を見ていこうと思います。
注:当初は「マイナーバージョンアップ」とお伝えしましたが、「PostgreSQLの場合、0.1の位が変わるとメジャーバージョンアップという扱いとなる」と指摘を受け、11月17日に「メジャーバージョンアップ」に訂正しました。(編集部)
ではまた来月、お会いしましょう。
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Index | |
連載 Database Watch 11月版 祝! 正式リリース MySQL 5.0/PostgreSQL 8.1 |
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Page 1 ・グリッドを実現するOracle Database 10g Release 2の威力 ・管理ツールも進化、Oracle Enterprise Manager |
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Page 2 ・MySQL 5.0正式版リリース ・PostgreSQL 8.1も正式リリース |
Database Watch |
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