Database Watch 1月版 Page 2/2
新製品バブルの年は過ぎ、2006年は成熟の年へ
加山恵美
2006/1/17
■2005年はOracleとMicrosoftの新版が登場
ではベンダRDBMSに目を向けましょう。オープンソースRDBMSに比べるとベンダRDBMSのバージョンアップはそう頻繁ではありません。しかし2005年は新バージョンのニュースが相次ぎました。新バージョンで共通する着眼点を挙げるなら、可用性、Webサービス、セキュリティなどとなるのではないでしょうか。
あらためてベンダRDBMSご三家について近年のバージョンアップを振り返ります。2004年は4月からOracle Database 10g、9月にはIBM DB2 UDB V8.2が出荷開始となりました。後者のコードネームは「Stinger」でした。覚えていますか? チクッと痛いハチの一刺しという意味がありました。IBM DB2 UDB V8.2の特徴には、64ビットLinux(カーネル2.6)対応、ディザスタ・リカバリ、オートノミックの拡張、開発環境の向上がありました。
2005年になると新バージョンの話題はOracle Database 10g Release 2とMicrosoft SQL Server 2005へと移りました。しばらく「次バージョンはこうなる」といった新機能をアピールしたりベンチマーク結果で互いにけん制していたようですが、秋から新版の姿が見え始めました。
まずはOracle Database 10g Release 2です。9月7日のLinux x86対応版出荷開始を皮切りに、順次出荷を始めています。前回のRelease 1の出荷から約1年半でRelease 2が出荷開始となりました。キーワードはグリッド・コンピューティングです。高い可用性と管理の容易さを前面に押し出し、ほかにもセキュリティ強化、ビジネスインテリジェンス機能強化、XML方面の機能強化と開発生産性の向上が特徴です。
一方Microsoft SQL Server 2005も12月15日で開発を完了し、同日からVisual Studio with MSDN Subscriptionの会員向けにWebダウンロードでの提供が始まりました。今後は2006年2月1日にボリュームライセンス製品、2月3日にパッケージ製品が発売となります。Microsoft SQL Server 2005は前回の2000から5年ぶりのメジャーバージョンアップです。特徴は開発生産性と運用効率性の向上、ビジネスインテリジェンスの提供、信頼性の高いプラットフォームの実現が挙げられます。
■2006年は新版を熟成させる年に
これまで見てきたように、2005年は例年にないほどRDBMS製品の新版リリースが続いた豊作の年でした。主要なデータベース製品はバージョンがほぼ一新し、2005年はRDBMS全体としても節目の年となるのかもしれません。
さて今年はどうなるのでしょうか。オープンソースRDBMSの勢いからすると今年もまた新版が登場するかもしれませんが、主要なバージョンはMySQLなら5.x、PostgreSQLなら8.xがベースになりそうです。
ベンダRDBMSは新版発表ラッシュが落ち着き、確実に新版への移行を推進する年になるように思えます。今年は移行作業を確実に成功させるためのノウハウやベストプラクティスが精錬されていくことを期待します。2005年が収穫の年なら2006年は熟成の年になるかもしれません。
製品のバージョンアップに伴って、教育や資格制度もバージョンアップが必要となります。バージョンが大きく変わった製品は追って資格試験も新バージョンが登場することでしょう。特にベンダ系ならMicrosoftのMCAデータベースやMCDBAでSQL Server 2005に対応したトレーニングや試験が追ってリリースになると予想できます。またオープンソース系ならPostgreSQL CEも8.0対応試験がそのうちに登場することでしょう。動きがあれば逐一報告していきたいと思います。
ただし新版への移行が進むとはいっても、ユーザーが同じ製品をそのまま使い続けるかどうかは分かりません。なにせ各種ベンダは他社製品からの移行を支援したり、優遇措置を取るなどユーザー獲得に熱心です。「新バージョンにするなら、ついでにこちらに移りませんか?」という声が方々から聞こえてきます。バージョンアップを機にユーザーの争奪戦が過熱しそうです。2006年はシェアが動く年になるかもしれません。
とはいえ、どこでどういう動きが起ころうとも、コミュニティにおける親交を深めることはひとえに筆者が希望するところです。コミュニティはオープンソース系だけではなく、ベンダ系も含めてです。最近ではオフィシャルなものからブログやSNSで草の根的な動きまで、交流は多岐にわたり盛んになってきているようです。1月末にはMicrosoft SQL Serverのコミュニティ、PASSJ Conference 2006が開催されます。こうした交流は単に技術情報の交換だけではなく、人脈を通じて世界観を広げるという意味でも積極的に参加していくことをお勧めします。
- PASSJ Conference 2006(1月25日、東京・赤坂プリンスホテル)
まだまだ暗中模索をしながらデータベース界の動向を追い続けていきますので、今年もどうぞお付き合いくださいませ。ではまた来月、お会いしましょう。
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連載 Database Watch 1月版 新製品バブルの年は過ぎ、2006年は成熟の年へ |
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Page 1 ・MySQLは5.0、PostgreSQLは8.0と8.1が登場 ・悩みのタネ、バージョンの違い ・歩み寄るオープンソースRDBMS |
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Page 2 ・2005年はOracleとMicrosoftの新版が登場 ・2006年は新版を熟成させる年に |
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