Database Watch 1月版 Page 1/2

新製品バブルの年は過ぎ、2006年は成熟の年へ


加山恵美
2006/1/17

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。思えば昨年のデータベース動向では新製品発表が相次ぎました。どの製品も一回り成長した年でした。今年はどのように発展していくのでしょうか。

MySQLは5.0、PostgreSQLは8.0と8.1が登場

 2005年は主要なRDBMSの新バージョンが一気に登場しました。特にオープンソースRDBMSの両雄、MySQLPostgreSQLはともに歴史的なバージョンアップを成し遂げました。

 まず先陣を切ったのはPostgreSQLでした。2005年1月19日からPostgreSQL 8.0が正式リリースとなり、その少し前に本家サイトもリニューアルされてPostgreSQLは新しい時代へと踏み出しました。8.0の目玉にはWindowsネイティブサポートがあり、ほかにもPITR(Point-In-Time Recovery)やセーブポイントなどエンタープライズでの運用を強く意識した機能強化が目立ちました。

 年初のリリースから少ししてPostgreSQL 8.0の解説本も出そろってきました。現在日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)ではPostgreSQL 8.0に対応した本の書評を掲載しています。

 一方MySQLは2004年10月に正式版4.1.7がリリースされて以降、4.0.xと4.1.xが正式版として存在していました。2005年中はしばらく正式版5.0.xを待ち続け、ついに10月25日、5.0.15で正式版となりました。5.0.xではストアド・プロシージャ、トリガー、ビューなどユーザー待望の機能が多く搭載されました。

 先頭の数字が4から5になり、MySQLもまた新しい一歩を踏み出しました。5.0.xリリースから1カ月もしないうちにダウンロード数は100万回を超えるなど出だしは好調です。しかし開発側はもう次のバージョンへと目標を移しています。12月3日には5.1.xの最初のリリースとなる5.1.3-alphaが登場しました。5.1.xは2006年中に正式版になるでしょうか。

悩みのタネ、バージョンの違い

 それにしてもMySQLはバージョンのバリエーションが多いです。このバージョンの多さはコミュニティでも悩みの種になっているようです。現時点でメジャーな正式版バージョンは4.0.x、4.1.x、5.0.xがあります(もしかしたら3.xも)。4.xと5.xでは搭載された機能に大きな差がありますし、移行する場合は4.0.xと4.1.xの間に大きな壁があるようです。これは4.1.xからUTF8や文字コードの自動変換が組み込まれ、文字の扱いが変わったためです。

 日本MySQLユーザ会(MyNA)のFAQによると、3.xや4.0.xで運用しているなら原則として現状維持が推奨されています。もし4.1.xまたはそれ以上にアップグレードしようとすると困難に遭遇する可能性が高いからです。一方4.1.xで運用しているなら5.0.xへの移行はさほど困難ではないようです。

 ここまで見ると1月にPostgreSQL 8.0が出て、10月にMySQL 5.0が出て、「もうおなかいっぱい」といいたいところですがまだ続きます。11月8日にはPostgreSQL 8.1も出ました。なんとPostgreSQLは1年に2度もメジャーバージョンアップを成し遂げてしまいました。早いことなんの。開発サイクルだけではなく、性能もです。8.1はベータの段階から「すごく速い」と飛躍的な性能向上が評判となったように、性能を強化する新機能が目立ちます。

 ところで、オープンソースの世界では常識かもしれませんが、筆者が2005年に知って意外に感じたのはバージョンの数字です。特にPostgreSQLでは、ピリオドで区切った左から2番目の数字が変わるとメジャーバージョンアップという位置付けのようです。つまりPostgreSQLなら8.0から8.1へはメジャーバージョンアップです。そういえばMySQLも4.0と4.1には大きな開きがあります。とはいえ4.1は5.0の前段階に近く、4.1が特殊なのかもしれませんが。

 もう1つ。バージョンの数字で対照的な違いもあります。PostgreSQLは正式版が出るまでは左から3番目の数字がインクリメントしません。一方MySQLでは正式版であろうとなかろうと、左から3番目の数字がインクリメントしていきます。ただし正式版前にはalphaやbetaなどを付加するのが習慣のようです。

歩み寄るオープンソースRDBMS

 あらためて振り返ると、2005年はオープンソースRDBMSにとって節目の年となりそうです。MySQLもPostgreSQLも記念碑的なバージョンアップを成し遂げました。

 加えて2005年のバージョンアップでMySQLとPostgreSQLは近づいたように思えます。これまでオープンソースRDBMSとはオールマイティを目指すベンダのRDBMSとは一線を画し、それぞれ特徴がありました。ただこの特徴には長短があるともいえます。しかし2005年にはこれまで弱点として甘んじていた部分を特に強化して、一気に弱点克服を進めたようです。これが近づいたことの1つです。

 もう1つ近づいたといえることがあります。勉強会や座談会など、ユーザー会同士の交流が盛んに行われたことは印象的でした。オープンソースRDBMSはベンダと違いバリバリと激しく火花を散らすことなく、まったりと交流を深めているようです。ともにデータベースを愛する者同士はどこか気の合うことも多いのでしょう。今後もさらなる親睦を深めることが続くようにと期待しています。(次ページへ続く)

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 Index
連載 Database Watch 1月版
新製品バブルの年は過ぎ、2006年は成熟の年へ
Page 1
・MySQLは5.0、PostgreSQLは8.0と8.1が登場
・悩みのタネ、バージョンの違い
・歩み寄るオープンソースRDBMS
  Page 2
・2005年はOracleとMicrosoftの新版が登場
・2006年は新版を熟成させる年に


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