Database Watch 3月版 Page 2/2
PostgreSQLの開発者が来日し“8.1”の次を語る
加山恵美
2006/3/16
■セキュリティも考慮して探します
データベース製品の話題からはやや離れるかもしれませんが、Oracle OpenWorldで発表された「Oracle Secure Enterprise Search 10g」(英語ページ)はとても興味深いものでした。インターネット上のページは検索エンジンで検索できますが、実は自分のパソコンの中、または企業内で共有しているドキュメントも検索したいものです。しかしこうした情報をうまく手軽に検索するのは簡単ではありません。企業内で共有するデータとなると閲覧可能かどうかも判断する必要があるからです。
そこでセキュリティポリシーも考慮したうえで検索ができるとして3月2日に発表されたものが、このOracle Secure Enterprise Search 10gです。見た目はGoogleによく似せて作られています。トップページには「All」「Mail」「Calendar」「Document」……と検索対象が選べるようになっていて、検索結果の色使いもまるでGoogleと同じです。ググる感覚で企業内の情報をセキュリティポリシーに応じて検索できるということのようです。
このOracle Secure Enterprise Search 10gを見ながら、ふとしばらく前に見たものを思い出しました。IBM/LotusでRaven(カラス)というコードネームだった「Lotus Discovery Server」です。ナレッジマネジメントという言葉が流行していた当時、やはりこれもセキュリティポリシーを勘案してメール・カレンダーから共有ドキュメントを検索するためにあったものです。いまどこを飛んでいるのでしょうか、あのカラス。
あらためて技術というものはこうして時には違うところから再登場し、進化を繰り返していくのだなあと思いました。カラスが企業内の情報をむさぼり食おうとしていた時代と比べ、いまは企業内にある情報の量も質も変化しています。また検索は精度が大切です。検索できるかどうかだけでは解決とはいえず、いかに的確にユーザーが手にしたいと思う情報をユーザーからのわずかな手掛かりを基に探し出さなくてはならないのです。企業内の情報検索があらためて見直されたことはいい契機なのかもしれません。
■コンテンツ合戦、マイクロソフトとIBM
オラクル以外はどうでしょう。マイクロソフトとIBMの技術サイトでは面白い連載がそれぞれ始まっています。
まずマイクロソフトです。SQL Serverのサイトでは「集中連載:SQL Server 2005 と Oracle 10g の真実 〜 比較検証から見る、データベースとしての真の実力 〜」が始まりました。3月上旬の時点ではまだ初回分が公開されているだけですが、トータルで9回にわたりSQL Server 2005の実力をOracle 10gと比較していくそうです。またもマイクロソフトはオラクル対抗策を講じています。
次にIBM DB2です。DB2の技術者向けサイトでかつて「DB2いろはがるた」というコラムがあったのをご存じですか。実は筆者もブックマークして勉強していました。なんとこのコラムを執筆していた春野さくらさんが3年ぶりに戻ってきました。前はわびさびな雰囲気でデータベースを語っていましたが、これからは「くノ一」の装いで「DB2秘剣シリーズ」を執筆します。つつましい日本女性から忍者修行して格闘系に転身されたとは女の人生はナゾです。
ベンダご三家の関係を考えると、マイクロソフトはデータベースではしっかりオラクルをにらみつけています。オラクルはデータベースでは余裕ですが、ミドルウェアで主にIBMをにらんでいるようです。そうしてIBMはデータベースでは……、さてどうでしょう。オラクルとマイクロソフトの両方をにらんでいるのではないでしょうか。ということはうまく循環しているようです。
■PostgreSQL 8.1とその先
オープンソースの方に話を移します。2月17日から2日間、「PostgreSQL Conference 2006」が開催されました。PostgreSQLグローバル開発チームコアメンバーのJosh Berkus氏のように来日したメンバーも何人かいて、とてもコアな解説と情報が飛び交っていました。
初日、Berkus氏は「PostgreSQL Directions 8.1 and beyond」と題して、2005年11月にリリースした最新版PostgreSQL 8.1の解説と、将来のバージョンについて概要を語りました。
写真 PostgreSQLグローバル開発チームのBerkus氏 |
PostgreSQL 8.1の代表的な新機能に「2相コミット(two-phase commit)」があります。これは複数のデータベースをまたがるトランザクションを安全に扱うための機能です。例えば銀行の振り込み処理など、送金元と送金先の両方できちんと処理が終了しなくてはいけないようなケースです。主に金融機関から強い要望があり実現したもので、新バージョンで実装したものの中ではかなり大きな機能追加のようです。
次にロールの登場です。これまでユーザーはグループに属していました。しかしグループがグループに属する(入れ子のグループ)ことはできず、オブジェクトを持つこともできず、SQL標準という観点からも問題視されていたそうです。そこでよりSQL標準に適合するように、グループではなくロールを使うようになりました。ロールはオブジェクトを保有することができ、またIBMなど他社ツールとの相性も良くなったそうです。
また前からPostgreSQL 8.1ではパフォーマンスが飛躍的に向上したという声がよく上がっていますが、その理由がいくつか示されました。インデックスへのアクセス方法としてビットマップスキャンを使い使用するメモリを少なくしたり、テーブルのパーティショニングを行うことで不要なパーティションはドロップしたりするそうです。
それからまだ気が早いですが、8.1の次バージョンも話題に上りました。仮に8.2と呼ぶとして、8.2ではさらなるパフォーマンス向上を追求したりデバッガなども検討されているようです。しかしBerkus氏は「みんな次第だよ!」と話していました。コミュニティですものね。
今月はとても勉強になりました。ではまた来月、お会いしましょう。
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連載 Database Watch 3月版 PostgreSQLの開発者が来日し“8.1”の次を語る |
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